魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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伝説の次元空間編

第179話 勇者まだ一緒にいられると喜ぶ

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 過去のサーイターマルドを模した次元世界から、俺は戻ってきた。
 それは、ユミコの残り少ない力を、ほとんど使い果たした成果だった。


「ユミコ、ごめん。ユミコの寿命を削っちまって。」
 俺の涙が、ユミコの透明な棺の上に落ちる。

「悲しまないで、ユウタ。私は満足してるんだから。」
 人形の様なユミコを見ていると、俺にはそうは思えない。

「ユミコ、無理言うなよ。」
 俺はユミコの棺に、トンとこぶしを置く。そのこぶしに力を込めるが、透明な覆いはビクともしない。
 このままピシっとヒビくらい入ってほしいのに。

「無理してないわよ。ユウタ、私言ったよね。あなたの力になりたいって。タカスナの子孫の力になる。それが私の、」
「言うな!」

 俺は思わずユミコの言葉を遮る。
 そうだ、ユミコが俺に力をかすのは、俺のためではなかった。

 そう、ユミコが俺に力をかすのは、タカスナに対する罪滅ぼし。
 かつてタカスナの元を去ってしまった後悔から、タカスナの子孫のためにと、神々の仮死の秘法を用いてまで、生き永らえてきたのだ。

 この期に及んでまで、タカスナなのか。俺ではなく。
 ユミコにとって俺は、タカスナ以上の存在になりえなかったのか。

 それを思うと、俺は悔しさが涙となって滲み出る。

 俺も実際タカスナと会ってきた。
 勇者としてのウツワの大きさなら、俺以上だった。

「ユミコ、今までありがとう。」
 俺は複雑な思いを抱きながら、ユミコに最期の礼を言う。

「ちょ、ちょっと。お礼なら全部終わってからにしなさいよ。」
 俺はなぜか、ユミコにとがめられる。

「え、でも、ユミコはもう、」
 寿命が尽きる。
 その言葉を出せなかった。

「えと、ちょっと言いづらいんだけど、私の寿命ってまだ430時間残ってるのよね。」
「え、こんな姿になってるのに?」

 ユミコの寿命。
 それはあのシリウスシスターズに告げられた時から、時間経過分しか減っていない。
 こんな変わり果てた姿なのに、大きく減ってはいなかった。

「もう、ユウタが泣かせる事言うから。私はこのまま黙って死を待とうと思ってたんだからね。」

「やだよ、そんなの。最期まで一緒に居させてよ。」

「私も、この姿を見られるのは、つらいのよ。この身体がどうなっても、私の魂は定められた時間、この身体に縛られる。ほんと、因果なものよ。」
「ほんと?」

 ユミコの言葉を聞いて、俺は表情を輝かせる。

「な、何よ。この姿は、あまり見られたくないんだからね。」

 ユミコは文句言うが、俺が魔王を早く倒して来れば、ユミコと一緒に居られる時間が増える。
 それは最初の思い通りだ。
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