魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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伝説の次元空間編

第181話 勇者ユミコを忘れる

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 照光子の杖をゲットした俺は、ユミコのほこらを後にする。
 だけどユミコって何なのか、俺の記憶はあやふやだった。


「行ったわ。後は頼めるかしら。」
 俺の立ち去ったほこらで、透明な棺に入ったままのユミコが誰かに声をかける。
 ほこらの奥には、四人の女性の影があった。

「ああ、分かった。」
 銀髪のロングヘアの女性が、ユミコに答える。

「でも、ほんとにいいの?」
 青髪ショートの女性が、ユミコに尋ねる。
「ユウタ君、悲しむよ?」

「私の役目は終わったわ。それに今のこんな姿、見られたくないわよ。」
 透明な棺に入ったユミコの身体は、生命の息吹きを感じさせない、人形のような身体だった。
 そしてユミコの声は、この身体からは発せられていない。

「あいつは、壁の向こうで声だけ聞きたいって言ってるのにか?」
 と赤髪ポニーテールの女性が反論する。

「あら、それが出来ないって事くらい、あなた達も分かってるんじゃない?」
 ユミコは意味深に反論する。

「ち、それでも、あいつの思いに答えてやろうとは思わないのかよ。」
 赤髪の女性は舌打ちする。

「無理言うなよ、ユア。ユミコさんの意識はこのほこらに固定されている。だから、」
「分かってるよ、それくらい!」
 銀髪の女性の説明を、赤髪の女性が遮る。

「でも、たいしたものね。」
 青髪の女性がほこら内を見渡す。
「その気になれば、千年、いや、それこそ半永久的に活動出来るじゃん。」

「ま、経年劣化もあるから、後になればなるほど、活動限界時間は短くなるんだけどな。」
 と銀髪の女性が補足する。

「準備出来たわよ。」
 ほこらの奥から、金髪ツインテールの女性が出てくる。
 彼女の右手には、何かのリモコンスイッチがあった。
 他の三人の女性も、このほこらの終わりを悟る。

「もう一度聞くけど、ほんとにいいの?」
 青髪の女性が、ユミコに尋ねる。
「よせ。」
 銀髪の女性は、青髪の女性を止める。

「私だって、ユウタと一緒にいたいわよ!」
 ユミコは叫ぶ。
「ユウタとローザ。ふたりの行く末を見守りたい。でも、私が居たら、このほこらからサーイターマルドの崩壊が始まってしまう。だから、あなた達にお願いしてるんでしょ!」
 ユミコの叫びに、涙が混じる。
「ご、ごめんなさい。」
 青髪の女性は、あわててユミコに謝る。

「だけど、あんたの本心が聞けて、よかったぜ。」
 赤髪の女性がニヤける。
「このままだと約束破られたあいつが、浮かばれねーからな。」

「私の本心なんて、ユウタに伝わるはずないじゃない。」
「それはどうだろな。」
 ユミコの言葉に、銀髪の女性が天を見上げる。
「そうね。」
「だな。」
 青髪の女性も赤髪の女性も、天を見上げる。

「私たちも名残惜しいけれど、そろそろお別れよ。」
 金髪の女性の右手が、透明な棺を透過する。
「最後のスイッチは、あなたが押しなさい。」
 金髪の女性は、ユミコの右手にスイッチを握らせる。

「ええ、分かったわ。あなた達も私のわがままを聞いてくれて、ありがとう。」
 ユミコは最期の力で、スイッチを押した。

 別次元から持ち込まれた物質が、徐々にその姿を消していく。
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