魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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荒野を行く

第184話 勇者神帝のほこらを訪れる

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 海底洞窟でドラゴンさんの書き置きを見つけた俺は、決意も新たに、魔王討伐を誓う。
 何かを忘れているような気もするが、先を急ごう。
 早く魔王を倒さなければ、何か取り返しのつかない事になりそうな予感がする。


 サカドの街のはるか南に位置する、神帝のほこらを目指す。
 その道中の魔物は、俺の敵ではなかった。
 俺も知らない間に、強くなっていた。
 そう、俺の認識している俺の強さより、なぜかステータスが高いようだ。
 俺は海底洞窟でライトの呪文を唱えたのだが、俺のマジックパワーは、俺の上限値よりも、なぜか上であった。
 これも、俺が思い出せない記憶と、何か関係があるのかもしれない。

 海底洞窟から神帝のほこらまでの道のりは、苦でもなかった。
 俺の装備しているウラワの鎧は、歩くだけでヒットポイントが回復する優れ物。
 だけど、回復させるだけのダメージを、受ける事もなかった。
 それほど、ここら辺の魔物とは実力差があった。
 中には、俺にビビって逃げだす魔物もいた。
 なら、最初から襲ってくるなよ、とも思う。
 そこそこわずらわしいので、破邪呪文でも唱えようとも思ったが、マジックパワー節約のため、やめといた。
 マジックパワーはヒットポイントと違い、回復させる手段がないから。

 そうこうしてるうちに、俺は神帝のほこらにたどり着く。
 ここでは何か、悲しい事があった気がするが、なぜか思い出せない。

「来たか、勇者ユウタ。」
 神帝のほこらで、神帝アリンバが待ち構えていた。
「はい、神帝アリンバさん。」
 俺はチチブの南南東で拾った、勇者の証を取り出す。
 以前、神帝アリンバに見せろと言われたアイテムだ。

「で、勇者の証は持って来たのか?」

 ん?

 俺が今見せてるのが、勇者の証だろ?
「これ、ですよね?」
 俺は一応、神帝アリンバに聞いてみる。

 神帝アリンバは、ため息まじりに首をふる。

「それは、勇者ウラワの勇者の証だろ。勇者ユウタとしての、勇者の証は無いのかよ。」

 神帝アリンバは、なかば呆れている。

「悪いけど、勇者ユウタ。私の次元世界での聖魔大戦も、急を告げている。私も今日か明日には、戻らなければならない。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
 俺は慌てて神帝アリンバを引き留める。

「あなたが居なくなったら、魔王の島に渡れなくなりますよ!」
 そう、神帝アリンバが居なくなったら、この物語が詰む。

「渡る方法くらい、他にいくらでもあるだろ。」
 神帝アリンバはため息をつく。

「いやいやいや、あそこは船の難所。海の魔物だっていますから、無理ですよ!」

「いや、潮の満ち引きとか、魔物の活動時間。これらを加味すれば、船でも渡れるルートは存在するし、別に船を使わなくても行けるだろ。」

 えと、この物語の根底を、覆さないでくれるかな。
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