魔王が現れたから、勇者の子孫らしい俺がちょっくら倒してくる

あさぼらけex

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荒野を行く

第217話 勇者待ち伏せされる

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 魔王の城から脱出した俺は、衝撃の事実を知る。
 美少女ターニャはなんと、すでに死んでいた。



「そうか、そんな悲劇があったのか。」
 俺は崩れた魔王の城を見渡す。
 いや、ルギア神殿と言うべきか。

「そんなひと言で、片づけてほしくは無いわね。」
 と言う妖精さんの身体が、さらに透けていく。

「おい、あんたルギア様なんだろ。あんたが消えたら、このサーイターマルドはどうなる!」
 俺はこいつがルギア様だとは、まだ認めていない。
 だけど本当にルギア様だったら、それはこの世界を司る存在の消滅を意味する。

「それなら、私の分身体がルギアとして成長してくれたから、多分大丈夫。だから私を、チチブのルギア神殿に、連れてって。」
 この言葉を最後に、妖精さんの身体がルギアのお守りに吸い込まれる。

「おい!」
 俺は妖精さんの吸い込まれたルギアのお守りに、声をかける。
 ルギアのお守りは、ほのかに輝きを放つだけで、何も答えてくれない。

「はあ、チチブのルギア神殿か。」
 この後俺には、行く所がある。
 ローザの待つオオミヤ城と、俺の記憶が不確かになったあのほこらだ。
 チチブは、その反対方向になる。

「いつでもかまわないわ。」

 え?
 今誰かの声が、聞こえた気がする。
 多分、気のせいだろう。

 俺は輝きを失った幻の金水晶と、ほのかに輝くルギアのお守りを、道具袋にしまう。
 そして道具袋のローザの盗聴器を握る。

 なんて声をかけようか。

 終わったよ。今帰るよ。
 いや、ここで悩むより、早く帰るべきだな。
 魔王を倒してから、ほんと、何話経ってるんだか。

「リターン!」
 俺は帰還呪文を唱えた。

 俺はオオミヤ城に戻ってきた。
 って、ここはどこだ?

 オオミヤ城は、かなり先に見える。

「お待ちしてましたよ、勇者様。」
 声をかけられて、俺は振り返る。
 そこには、オオミヤ城の城門にいた兵士が立っていた。

「帰還呪文は、城門に飾られた、この碑石に引き寄せられますからね。」
 兵士はスイカほどの大きさの石を持っている。

「そうか。で、俺とふたりきりになりたい理由は、やっぱ仇打ちかたきうちかな。魔王の。」
 この門番の兵士、ローザを連れ帰った時、凄く驚いていた。
 おそらく、魔王軍と内通していたのだろう。
 でなければ、オオミヤ城に魔王軍が突入し、幻の金水晶を奪う事も、ローザを連れ去る事も、不可能だろう。

「いえ、私はあなたに、お礼を言いたかったのですよ。」
 兵士は首をふる。

「お礼?」
 なるほど、魔王を倒された事への、お礼参り。
 つまり、魔王の仇打ちかたきうちって事だな!
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