未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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惑星ファンタジー迷走編

第63話 荒野のライブ会場

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、なんと千年前にタイムスリップしていた!
 ケイは千年後のマイ達にこの星の鉱物資源の封印を託す。
 その封印をグリーンドラゴンが護っていたのだが、この星の人々には、退治する対象でしかなかった。
 マイ達はグリーンドラゴンと話しあい、ケイの真実を知る。
 グリーンドラゴンも少女に化身し、ケイのパートナーであったミイに憑依する。
 こうして森のドラゴン問題は解決する。
 この報告をどうするのか思い悩んでいたが、たまたまそこに来たギルド最強の冒険者、ドルクに丸投げして、マイ達は先を急ぐ。


 マイとユアの戦闘機が、惑星ドルフレアの空を飛ぶ。
 マイ達のサポートAIは、この星のある座標を示す。

 マイ達が前回、ドルクと別れて街へ帰った後、ユアのパートナーであるサポートAIのユウが、ある事を告げた。
 ユアのライブコンサートまで、もう時間がない事を。

 ユアの機体には、ライブ会場への転送システムを搭載させていた。
 これでユアは瞬時にライブ会場に駆けつけられる。
 だがユアは、一曲目のエキシビションライブの相手に、マイを選んだ。
 マイの機体にそんな転送システムは取り付けてないし、今はまだ、ケイ捜索任務の継続中だ。
 ライブの一曲目は、この星で行うしかない。
 エキシビションライブとは、ソウルブレイドのエキシビションマッチをしながら、歌うスタイルのライブ曲だ。
 これがユアのライブコンサートの最大の見どころでもあった。
 行うふたりの立ち回りに、段取りがあるわけではない。
 普通にユアが歌いながら、ソウルブレイドの剣をふるう。
 ユアくらいの達人になれば、曲の時間ぴったりに勝負を決める事も可能だった。
 マイもそれなりの実力者であったが、ユアはさらにその上を行っていた。

 ユアとマイは、座標の示す地点に着いた。
 地平線を見渡せる周囲には、何もなかった。広大な荒野が広がっていた。
 ふたりがその地に降り立つと、ふたりの戦闘機は多次元空間の格納庫へと飛び去った。
「無理言って、ごめんね。」
 ユアは一応マイに謝るが、そんな気はあまりなかった。
 マイはコクコクと無言でうなずいた後、ハッとして今度は無言で首をふる。
 マイは「そんな事ないよ」と言いたかったのだが、言葉が出なくて、反応に困った。
「そんな緊張しなくても、大丈夫よ。」
 ユアはマイの両手を握る。そして目を閉じると、握った手を自分の胸にあてる。
 マイもつられて目を閉じる。
 ちなみにふたりの服装は、この星でのお着替えスタイルではなく、戦闘用のボディスーツだ。

「今私達は、宇宙中の人達から注目されているわ。」
 ユアはマイを落ち着かせるため、小声でささやく。
 ふたりの脳内に、宇宙中のパブリックビューイング会場の様子が浮かぶ。
 会場にはファン達が集まり、ライブの開始を今かと待ち望んでいる。
 そんな会場が、全宇宙で億を超える。
 この会場は、マイ達のブルレア連邦だけではなく、グリムアにもレドリアにもあった。
「マイはただ、ソウルブレイドのエキシビションマッチをするだけ。
 エキシビションライブなんて、普通のエキシビションマッチと変わらないから。」
「僕、エキシビションマッチなんて、やった事ないよ。」
「あら、そうだったの。」
 ユアにとって、マイのその応えは意外だった。
 ユアの任務のほとんどはソウルブレイド戦であり、エキシビションマッチの比率も低くはなかった。
 そりゃあ、自分は特殊かと、この時はじめて気がついた。
「ならば、リムとの試合を思い出して。
 あの時、観客の私達を意識していた?」
 ユアは言葉を変える。
「してなかったわ。」
 マイも、リムとの試合を思い出す。
「今度も、それと同じ。マイは私と試合するだけ。
 今回は、それを数兆人の人が観てるだけだから。」
「えー、規模がでかいよ。」
 マイは、ユアが安心させたいのか、さらに緊張させたいのか、分からなくなる。
「これだけは、忘れてほしくないの。
 観客の目は気にしなくてもいいけど、私達の試合は多くの人に見られているの。
 無様な試合は、出来ないって事よ。」
「そうね、分かったよ。ユア。」

 試合に集中すれば、観客の目など気にならなくなるだろう。
 だけど、その試合は多くの人が観ている。
 クオリティの低い試合など出来ない。
 マイも全力を出しきる気迫が必要だ。

 リムとの試合を思い出したマイは、ひとつ気になる事も思い出す。
「ねえ、今度の試合は、居合抜きってだめだよね。」
 マイがリムとの試合でみせたスタイル。
 刀を鞘に収め、相手が射程範囲に入ってからの抜刀術。
 ショー的に、見栄えがいいとも思えない。
「そうね、あれでも私は盛り上げられるけど、違う方がいいわね。」
 ユアは対居合抜きでの盛り上げ方を考える。
 それは自分が必要以上に動き回る事だが、マイの動きは、シロウトには分かりづらい。
 エキシビションライブにおいて、相手を盛り上げる演出が必要になるが、相手も盛り上げるための演出は必要。
 ユアひとりでの演出には、限界がある。
 だから変えた方がいいのだが。
「でも、あれ以外だと、マイは実力出せるの?」
 ユアはその懸念を口にする。
「大丈夫。
 あれは、ちょっとやってみたかったから、やってみただけ。
 僕も、ソウルブレイド戦は何度か体験したから。」
 マイのその言葉に、ユアも安心する。

「そうそう。」
 ここで、ユアにひとつの懸念材料が出てくる。
「ケイの八極陣だけど、あれは演舞だから、そのまま使っても実戦では意味ないからね。
 実戦では、動きの参考にする程度よ。」
「分かったよ、ユア。」
 マイはユアの忠告を受け入れた。

 そして、ライブコンサートが始まった。
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