80 / 215
異次元からの侵略者
第80話 傷ついたプロローグ
しおりを挟む
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
この時代に召喚されたマイは、行方不明になった仲間のケイの捜索任務を終え、惑星ドルフレアから巨大宇宙ステーションに帰還した。
結局ケイは見つからなかった。
それと同時に、ケイのパートナーであるサポートAIのミイも、惑星ドルフレアから帰れなくなった。
ケイが過去の時代に飛ばされた事が判明した時点で、任務は終了のはずだった。
しかし、ケイの残したメッセージにより、任務を続行した。
この続行の判断は、間違いだったと言える。
ケイは結局、帰ってこなかったのだから。
マイとメドーラの報告を受けたジョーは、激怒した。
任務の続行は無意味だったからだ。
それに反論するマイであったが、ジョーは聞く耳持たなかった。
今の戦局が、それを許さなかった。
「はあ、あんなに怒んなくてもいいのにね。」
司令室から出てきたマイとメドーラ。
ふたりの後ろには、サポートAIのアイとアイツウが続く。
「お兄さまがあんなにおっかないなんて、私、知りませんでしたわ。」
初めてみるジョーの怒りっぷりに、メドーラもショックを受ける。
「だけど今、何が起きてるの?」
マイは後ろに続くアイ達に尋ねる。
「そうですわ。お兄さまがあんなに怒るんですもの。きっと大変な事に間違いありませんわ。」
メドーラもマイと同じ気持ちだ。今何が起きてるのか、それを知りたい。
アイとアイツウは、お互い顔を見合わせる。
このふたりを見分けるポイントは、アイツウの右目の目尻にあるほくろだけだ。
アイツウが右を向いて左側を前にしている今、このふたりを見分ける事は出来ない。
「私達も詳しくは分かりません。何やら、大きな戦闘があったようです。」
「今は落ち着いたみたいですが、戦闘は長く続いたようです。」
先にアイが答え、その後をアイツウが補足した。
サポートAIは任務中、専用のカプセルに入って、パートナーの召喚者と交信している。
そのため任務中は、カプセルの外で何が起きてるのか、分からない。
しかし、今回のケイ捜索任務は、そんなに密なサポートは必要なかった。
つまり、かなり暇だった。
惑星ドルフレアの情報も、ケイが上げた報告以上の事は、サポートAIも知らない。
やれる事は現地語との翻訳作業くらいだが、それはチップのフルオート機能でなんとかなる。
そんな状況なので、カプセルの外に出て、居酒屋に飲みに行くのもざらだった。
召喚者とのやりとりは、カプセルの外でも出来る。
ただ、綿密なやりとりが出来ないだけだ。
先のケイ捜索編で、アイ達の台詞が少なかったのはそのためだと、後付けしとく。
カプセルの外に出ても、ジョー達はピリピリしていた。
アイ達も一応任務中であるため、話しかけられなかった。
だが、周りから入ってくる会話から、北部戦線で激しい戦闘が起きてる事は分かった。
「ラウンジに行きましょう。そこにリムとナコが居ます。」
サポートAIは、お互いのネットワークを持っている。
これも専用のカプセル内にいる時は、意識を共有するみたいに同調出来る。
普段でも、お互いの位置探知くらいは出来る。
その気になれば、テレパシーみたいな会話も可能だ。
マイ達は、ラウンジに向かう。
ラウンジに入ってマイ達が見たのは、車椅子に座るリムだった。
ナコは車椅子の後ろに立って、車椅子を押している。
ナコはマイ達を見ると、つかつかと近づいてくる。
そして、いきなりマイとメドーラを殴る。
「あなた達は、何をやってたのですか!」
ナコは怒っている。
マイは、いつもにこやかなナコしか知らない。
そのナコがこうも怒ってるのだ。
凄く申し訳ない気持ちになる。
「あなた達も、あなた達です!」
ナコの怒りは、アイとアイツウにも向けられる。
「今何が起きてるのか、分かってたでしょ。なんでふたりを呼び戻さなかったのよ!」
アイとアイツウは、返す言葉がない。
ふたりはマイとメドーラの意志を尊重したかった。
もし中断命令があっても、しらばっくれてただろう。
「ナコ、やめて。」
リムは車椅子から声をかける。
その声は、以前の元気のいいリムの声ではなかった。
満足に言葉を話せないなか、なんとか言葉にしたような、たどたどしい言葉だった。
「リム、無理しないで!」
ナコはリムに駆け寄る。
リムは今、右半身が軽く麻痺していた。
右脚はまったく動かず、右腕も肘から先は、感覚がなかった。
立派だったツインテールも、今は首の後ろで一本に縛られている。
「マイ、メドー、きにしないで。」
リムは駆け寄るナコを無視して、マイ達に話しかける。
「わたしだって、おなじことを、した、おもうわ。
ケイを、みすてる、できない、よね。」
リムはほほ笑みかける。
だが、右半身は軽く麻痺しているため、その笑顔はいびつだ。
「リム、ごめんなさい。」
マイは車椅子のリムの左側にしゃがみこむと、リムの左手を両手で握る。
「ごめんなさい。」
マイは握りしめたリムの左手を、自分の額にあてる。
「だから、あやまらないで。わたしも、おなじこと、した。」
リムの言葉に、マイは頭を上げられない。
身体が小刻みに震える。
最早、なんて言葉をかけたらいいのか、分からなかった。
「ナコさん、教えて下さい。何があったのですか。」
この状況に耐えられず、メドーラはナコに問いただす。
「ええ、教えてあげるわ。北部戦線での出来事を。」
そう言うナコの表情がゆがむ。
「だめ。言葉に出来ないわ。」
ナコは涙を流す。
「アイとアイツウに伝えるから、あとはふたりからダウンロードしてちょうだい。」
ナコは眼を閉じると、北部戦線での出来事を、アイとアイツウに伝える。
サポートAIであるこの三名は、意思の共有が可能だった。
そして、アイとアイツウから、マイとメドーラは北部戦線での出来事を知る。
この時代に召喚されたマイは、行方不明になった仲間のケイの捜索任務を終え、惑星ドルフレアから巨大宇宙ステーションに帰還した。
結局ケイは見つからなかった。
それと同時に、ケイのパートナーであるサポートAIのミイも、惑星ドルフレアから帰れなくなった。
ケイが過去の時代に飛ばされた事が判明した時点で、任務は終了のはずだった。
しかし、ケイの残したメッセージにより、任務を続行した。
この続行の判断は、間違いだったと言える。
ケイは結局、帰ってこなかったのだから。
マイとメドーラの報告を受けたジョーは、激怒した。
任務の続行は無意味だったからだ。
それに反論するマイであったが、ジョーは聞く耳持たなかった。
今の戦局が、それを許さなかった。
「はあ、あんなに怒んなくてもいいのにね。」
司令室から出てきたマイとメドーラ。
ふたりの後ろには、サポートAIのアイとアイツウが続く。
「お兄さまがあんなにおっかないなんて、私、知りませんでしたわ。」
初めてみるジョーの怒りっぷりに、メドーラもショックを受ける。
「だけど今、何が起きてるの?」
マイは後ろに続くアイ達に尋ねる。
「そうですわ。お兄さまがあんなに怒るんですもの。きっと大変な事に間違いありませんわ。」
メドーラもマイと同じ気持ちだ。今何が起きてるのか、それを知りたい。
アイとアイツウは、お互い顔を見合わせる。
このふたりを見分けるポイントは、アイツウの右目の目尻にあるほくろだけだ。
アイツウが右を向いて左側を前にしている今、このふたりを見分ける事は出来ない。
「私達も詳しくは分かりません。何やら、大きな戦闘があったようです。」
「今は落ち着いたみたいですが、戦闘は長く続いたようです。」
先にアイが答え、その後をアイツウが補足した。
サポートAIは任務中、専用のカプセルに入って、パートナーの召喚者と交信している。
そのため任務中は、カプセルの外で何が起きてるのか、分からない。
しかし、今回のケイ捜索任務は、そんなに密なサポートは必要なかった。
つまり、かなり暇だった。
惑星ドルフレアの情報も、ケイが上げた報告以上の事は、サポートAIも知らない。
やれる事は現地語との翻訳作業くらいだが、それはチップのフルオート機能でなんとかなる。
そんな状況なので、カプセルの外に出て、居酒屋に飲みに行くのもざらだった。
召喚者とのやりとりは、カプセルの外でも出来る。
ただ、綿密なやりとりが出来ないだけだ。
先のケイ捜索編で、アイ達の台詞が少なかったのはそのためだと、後付けしとく。
カプセルの外に出ても、ジョー達はピリピリしていた。
アイ達も一応任務中であるため、話しかけられなかった。
だが、周りから入ってくる会話から、北部戦線で激しい戦闘が起きてる事は分かった。
「ラウンジに行きましょう。そこにリムとナコが居ます。」
サポートAIは、お互いのネットワークを持っている。
これも専用のカプセル内にいる時は、意識を共有するみたいに同調出来る。
普段でも、お互いの位置探知くらいは出来る。
その気になれば、テレパシーみたいな会話も可能だ。
マイ達は、ラウンジに向かう。
ラウンジに入ってマイ達が見たのは、車椅子に座るリムだった。
ナコは車椅子の後ろに立って、車椅子を押している。
ナコはマイ達を見ると、つかつかと近づいてくる。
そして、いきなりマイとメドーラを殴る。
「あなた達は、何をやってたのですか!」
ナコは怒っている。
マイは、いつもにこやかなナコしか知らない。
そのナコがこうも怒ってるのだ。
凄く申し訳ない気持ちになる。
「あなた達も、あなた達です!」
ナコの怒りは、アイとアイツウにも向けられる。
「今何が起きてるのか、分かってたでしょ。なんでふたりを呼び戻さなかったのよ!」
アイとアイツウは、返す言葉がない。
ふたりはマイとメドーラの意志を尊重したかった。
もし中断命令があっても、しらばっくれてただろう。
「ナコ、やめて。」
リムは車椅子から声をかける。
その声は、以前の元気のいいリムの声ではなかった。
満足に言葉を話せないなか、なんとか言葉にしたような、たどたどしい言葉だった。
「リム、無理しないで!」
ナコはリムに駆け寄る。
リムは今、右半身が軽く麻痺していた。
右脚はまったく動かず、右腕も肘から先は、感覚がなかった。
立派だったツインテールも、今は首の後ろで一本に縛られている。
「マイ、メドー、きにしないで。」
リムは駆け寄るナコを無視して、マイ達に話しかける。
「わたしだって、おなじことを、した、おもうわ。
ケイを、みすてる、できない、よね。」
リムはほほ笑みかける。
だが、右半身は軽く麻痺しているため、その笑顔はいびつだ。
「リム、ごめんなさい。」
マイは車椅子のリムの左側にしゃがみこむと、リムの左手を両手で握る。
「ごめんなさい。」
マイは握りしめたリムの左手を、自分の額にあてる。
「だから、あやまらないで。わたしも、おなじこと、した。」
リムの言葉に、マイは頭を上げられない。
身体が小刻みに震える。
最早、なんて言葉をかけたらいいのか、分からなかった。
「ナコさん、教えて下さい。何があったのですか。」
この状況に耐えられず、メドーラはナコに問いただす。
「ええ、教えてあげるわ。北部戦線での出来事を。」
そう言うナコの表情がゆがむ。
「だめ。言葉に出来ないわ。」
ナコは涙を流す。
「アイとアイツウに伝えるから、あとはふたりからダウンロードしてちょうだい。」
ナコは眼を閉じると、北部戦線での出来事を、アイとアイツウに伝える。
サポートAIであるこの三名は、意思の共有が可能だった。
そして、アイとアイツウから、マイとメドーラは北部戦線での出来事を知る。
0
あなたにおすすめの小説
Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~
たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。
だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。
世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。
「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます
内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」
――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。
カクヨムにて先行連載中です!
(https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)
異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。
残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。
一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。
そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。
そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。
異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。
やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。
さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。
そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる