未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第113話 通信不能領域へ

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の中心部にある、衛星基地ソゴム。
 そのソゴムの中心近くに、次元の歪みがあった。
 この歪みの向こうには、侵略者達の存在する、多次元空間がある。
 次元剣を使って、その多次元空間への扉を開いた、マイ達三人。
 この場に残っても、16時間後には再開される総攻撃によって、逃げ場も無く死ぬだけだ。
 扉の先の多次元空間は、侵略者達の領域だ。
 彼らに白兵戦を挑む事になるだろう。
 マイとユアとメドーラの三人は、ここに残って死ぬより、先に進んで死ぬ事を選ぶ。
 いや、三人は死ぬ気など無かった!


 マイ達が異次元空間へと移動すると同時に、サポートAI達とのコネクトが切れる。

 どうやらこの異次元空間とは、通信不能らしい。
 それでもアイツウは、パートナーであるメドーラに呼びかけ続ける。
「どうやら向こうとは、通信不能のようだな。」
 ユアとの通信が切れて、ユウがつぶやく。
「そのようね。マイがどうなったか、心配です。」
 ユウのつぶやきに、アイが答える。

「侵略者達の総攻撃も、あと16時間ってところか。」
「そのようね。」
 ユアのつぶやきに、アイが答える。
 そしてしばらく、ふたりとも無言。
 この間も、アイツウはメドーラへの呼びかけを続ける。

「なあ、これってジョーに報告した方がよくないか?」
 ふたりの沈黙を破るように、ユウが喋りだす。
 ジョーはマイ達のチームのメカニックマンである。
 メカニックマンであると同時に、このチームの司令官でもある。
「確かに。ジョーに報告すべきよね。」

 アイが答えると、ふたりともしばらく無言になる。

「なあ、早く報告してこいよ。」
「私がですか?言い出しっぺは、あなたですよね?」

 ふたりとも、今やらなければならない事は、分かっている。
 だが、出来ればやりたくない。
 そう、この場を離れたくなかったのだ。

 アイは、これ以上マイとのつながりを、切りたくはない。
 マイがマインの部屋へお泊まりした時、マイははちまきを外し、そのままマイは死にかけてしまった。
 そして、衛星基地ソゴムへ向かう際、アイは気づかなかったが、マイは7500億光年かなたに飛ばされ、つながりが切れていた。
 この様な事が何度も続けば、マイに会えなくなる日は、必ずくる。
 アイは、確信持って、そう言えた。

「私は嫌だからな。」
 この場を離れたくないのは、ユウも同じだった。
「マイとメドーラ、ケイの事でなんか隠してるだろ。」
 ユウの離れたくない理由は、それだった。
「私のいない所で、ユアを巻き込むのは、我慢出来ないからな。」
 ユウは、パートナーのユアが心配だった。

 今回の侵略行為、千年前に飛ばされたケイが、何らかの形で関わっている事は、最早明確だ。
 それなのに、ケイの事情を知り、その詳しい経緯を話さないマイとメドーラは、信用出来ない。
 ユウが不信感を抱くこのふたりと、ユアが一緒に居ることが耐えられない。
 そして、そんなふたりの記憶を探る事も出来るのに、それをしようとしない、アイとアイツウにも、不信感がつのる。

 信用出来ない奴らの中に、ユアをひとりにしたくない。
 ユウは、その想いで一杯だった。
 ユアは、この場を離れる事など、考えていない。
 たとえアイとアイツウが故障なりで動けなくなったとしても、今いる専用カプセルから、ユウが出る事はないだろう。

「分かりました。私が行きます。」
 アイは観念した。
 ユウの決心は、ゆるがない。
 マイとのつながりを切りたくないアイだが、今は切れてる最中。
 回復手段が分からない以上、アイの理由は、ユウの決心に劣る。

「マイの事も、頼みますよ。」
 アイは、メドーラに呼びかけ続けるアイツウに、声をかけて、ジョーの待つ司令室に向かう。
 アイツウはメドーラに呼びかけ続け、アイの話しかけに、応えようとはしなかった。

 司令室のジョーの周りには、膝くらいの高さの円柱状のロボットが四台いた。
 ジョーはこのロボット達に、何やら情報処理をさせている。

 司令室の扉が開き、アイが入ってくる。
「遅かったな、アイ。」
「く。」

 司令室にいるジョーにも、マイ達の大まかな情報は、分かっている。
 だけど、詳細な情報は分からない。
 アイが直接報告に来る事が可能になったのは、マイ達が多次元空間に突入して、マイ達とのつながりが切れた時。
 その時点で報告に来るべきなのに、こなかった。
 ジョーは暗に、その事を責める。

「ジョー、侵略者の次の総攻撃が、あと16時間後に迫ってます。
 予定より、六時間早い…」
 アイの報告を、ジョーが制する。
「いや、詳しくは記憶を見せてくれ。」
 ジョーがそう言うと、ジョーの近くにいた円柱状のロボットの一台が、アイに近づく。
 ジョーも、近場にいた円柱状のロボットに腰掛ける。

 アイは近づく円柱状のロボットを見て、少し戸惑う。
 これにアイが腰掛ければ、ジョーはアイの記憶を見る事が出来る。
 それは、アイが体験した事のみではなく、その時感じた感情まで、ジョーに伝わってしまう。

 アイは最近のジョーに対して、不信感を持っている。
 この感情を、ジョー本人には知られたくなかった。

「分かりました。では、私が自動操縦を終え、マイと再接続した辺りから、伝えます。」
 アイは円柱状のロボットに腰掛ける。
 アイがマイの記憶を探って得た情報が、そのままジョーに伝わる。
 ケイに似た人物が言った、18時間後の総攻撃。
 マイが7500億光年かなたに飛ばされた事。
 青い龍との出会い。

 ナツキとの再会は、あえて隠した。
 そのため、マイが戻ってこれた経緯が、ちょっと訳分からん話しになってしまった。
 アイは、この神武七龍神のナツキの関与は、隠しておきたかった。
 この関与を知れば、マイとメドーラが隠している、ケイとミイについての記憶を、探る事になるだろう。
 アイは、それが嫌だった。

「まじか。なんですぐ逃げないんだよ。」
 アイの記憶を見たジョーは、頭をかかえる。
「どうしたのですか、ジョー?」
 アイは、ナツキ関連を隠した辺りの事を突っ込まれると思っていた。
 だが、ジョーはそれに気づかないほど、頭を悩ませていた。

「コアブレイカーを使う。」
 ジョーは顔をあげ、アイに向かってそう告げた。
「コアブレイカーって、あのコアブレイカーですか?」
 アイの声も、少し震える。

 コアブレイカー。
 文字通り惑星を中心核から破壊する超兵器。
 球状の宇宙ステーションの中心核も、惑星の中心核と原理は同じ。
 なので、球状の衛星基地ソゴムも破壊出来る。
 西暦6980年頃に完成したこの兵器は、歴史上、三度使用された。
 一度目は、鉱物資源の豊富な惑星が、採掘目的で破壊された。
 二度目と三度目は、戦乱時に衛星基地が破壊され、その報復に、中央司令部のある惑星が破壊された。
 他にも実用実験として、破壊された星や人工衛星は、数えきれない。
 当然、この実験に巻き込まれた悲劇も、数多く存在する。
 人類と人類が作り上げた人工物以外をも破壊する、この超兵器。
 あまりの破壊力に、放棄条約が締結される。
 それが、西暦7235年の事である。

 衛星基地ソゴムの内部のどこかに、侵略者が通る次元の扉がある事は、明確だった。
 その出入り口を、ソゴムごと破壊するのが、コアブレイカーを復活させた目的である。

 その次元の扉に、向かう者がいる事を、誰も予期していなかった。
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