未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
126 / 215
異次元からの侵略者

第126話 再会のマザーコンピュータ

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦地である衛星基地ソゴム。
 そのソゴムにある次元の歪みから、侵略者のいる次元空間へと突入した、マイとユアとメドーラの三人。
 三人は情報収集のため、こちらの次元空間にある第五作戦本部のマザーコンピュータの元にたどり着く。
 そこで待っていたのは、ケイそっくりの謎の人物、ケイネシアだった。


 マイ達三人がたどり着いた大広間。
 そこには円筒形をした大きなコンピュータがあった。
 円筒の直径は、およそ五メートル。
 円筒の高さは、直径のおよそ三倍。十五メートルといったところか。
 そして円筒形の外周には、人の腰の高さの作業台があった。
 タッチパネルやらレバーやらスイッチやら、モニターやら。
 それが数セット、円筒形の外周を囲っている。

 この部屋の側面の壁にも、その作業台と同じ様なギミックがあった。

 このマザーコンピュータのそばでマイ達三人を待っていたのは、ケイそっくりの謎の人物だった。
 以前その人物は、マイに対してケイネシアと名乗った。
 だが、そのケイネシアと名乗った人物と、この場にいる人物が、同一かどうかは分からない。

「さて、何から話すべきかな。」
 マイ達三人を前に、ケイネシアはそうきりだした。
 マイのきりかえしを待つのだが、マイは何言っていいのか、分からない。

 ここ最近、横道にそれた事ばかりのお話しだった。
 それがやっと本筋に戻れたのだが、横道生活が長かったため、本筋が出てこない。

「私達は、北部戦線の調査のために、この衛星基地ソゴムに来たのですわ。」
 メドーラは、その事をマイに告げる。
 ケイネシアは今のところ、マイしか相手にしていない。
 メドーラとユアが何か言っても、今のケイネシアは聞く耳持たないだろう。

「そう、だったわ。」
 メドーラの言葉で、マイは自分達の任務を思い出す。
「僕達が北部戦線で戦ってる相手って、あなたなの?
 それに、あなたは何者なの?
 その前に、なんでここの人達は、みんなケイの姿なの?」
 そう話すマイの瞳から、涙がこぼれる。
 目の前の人物を前にして、ケイの名を口にした事により、ケイの事を思い出してしまったのだ。

 ケイと最後に会ったのは、いつの事だろう?
 同じチームの仲間とはいえ、合同任務は珍しい。
 ほとんどは単独任務。
 そう、顔を会わせた事は少ない。
 だが、ケイは大切な仲間だったのは、間違いない。
 もっとみんなと、話しがしたかった。

「あなた、ケイと何か関係あるんでしょ。
 教えてよ、ケイの事を!」
 マイはケイに対する感情がたかぶる。
 だが、マイ達は北部戦線の調査に来たのであって、ケイを探しに来たのではない。
 マイの発言に、ユアはゆがめた表情をそむける。
 メドーラも、呆然とマイの事をみつめる。

「そうだな、まずは私の事を、はっきりさせなくちゃな。」
 何から話そうか迷ってたケイネシアだが、今のマイを見て、最初に話す事柄が決まった。

「最初に言っておくが、私はケイではない。」
 ちっ。
 この発言に、ユアの表情はさらにゆがむ。
 これは最初から分かってる事だ。
 ケイは、千年前に飛ばされた。
 そのケイが、今目の前にいる訳がない。

「そう、だよね。ケイなら良かったと、思ったのにな。」
 否定されて、マイの声が震える。
 マイも、ケイが今の時代にはいない事は、分かっている。
 だけど、目の前の人物が、ケイならとの思いも、わいていた。

「ついでに言うと、マイと最初に会ったケイネシア。
 あれは私じゃない。別個体だから。」
「え?」
 ケイネシアの発言に、うつむいていたマイは顔を上げる。
 視線をそらしていたユアとメドーラも、思わずケイネシアの方を見る。

 目の前の人物は、公園で出会った人物とは、明らかに違う。
 だけど、衛星基地ソゴムに来て、最初に出会った人物との違いが分からない。
 どう見ても、同一人物にしか思えない。

「信じてもらえないようだが、これはほんとの事だからな。」
 ケイネシアは、マイ達三人を見て、そう続ける。
「ケイネシア・ヤーシツ・メドローア。
 ヤツが一番、ケイの意志を継ぐ者かもしれない。」

 ケイの意志を継ぐ。
 いきなりこう言われても、マイ達の理解は追いつかない。

「そして私は、ミイの意志を継ぐ者。」
 そう言ってケイネシアは、右手の人差し指を立てて、その指を後ろへと傾ける。
 その指先には、円筒形のマザーコンピュータがあった。

「え?」
 マイの意識が追いつかない。
 いきなり円筒形のコンピュータを指差して、ミイの意識を継ぐ者?
 なんでここでミイの名前が出てくるの?

「まさか。」
 そんなマイを尻目に、メドーラはつぶやく。
「これが、ミイなのですか。このコンピュータが。」
「御名答。」
 メドーラの言葉に、ケイネシアが答える。
「自律式超高速人工思考回路マザーコンピュータミイ。
 サポートAIだったミイの、成れの果てさ。」

「え?
 これが、ミイなの?」
 マイには理解出来なかった。
 円筒形の表面に貼られた無数のタイルが、様々な色に発光して点滅している。
 その点滅が、マイに何かを話しかけている様な気もする。

「ちょっと待ってよ。」
 マイ以上に理解出来ないのは、ユアだった。
「ミイって、惑星ドルフレアにいるんでしょ?
 なんでここでマザーコンピュータになってるのよ!」
 そう、ユアはミイがケイの後を追った事を知らない。

「ユアお姉さま。
 ミイはケイお姉さまの後を追って、千年前に行ったのです。」
 ここでメドーラが、ミイの事をばらす。
「ちょっと。」
 ミイの告白に、ユアは戸惑う。
 それは、上層部に知られたくないミイの意志をくんで、ユアが知りたくなかった事である。

「ミイの意志を継ぐ者を名乗る人物が、ミイの成れの果てと言ったのです。
 最早、隠しておく事もないでしょう。」
 メドーラも、隠し事をばらした理由を述べる。

「そっか。今まで黙っててくれたのか。
 ありがとう、メドーラ。」
 そんなメドーラに対して、ケイネシアは礼を言う。
 これにはメドーラも、違和感を感じる。
 なぜこのケイネシアが、礼を言うのか。
 ミイの意志を継ぐ者と言っても、そんな些細な事も継ぐものなのかと、メドーラは戸惑う。

「私はマザーコンピュータミイの、外部リンク型自律式思考ドール。
 つまり、ミイの分身みたいなもんさ。」
 ケイネシアは、メドーラが疑問に思ってた事柄について答える。
「あ、ミイの分身と言っても、私としての自我は、ちゃんとあるからな。」
 とケイネシアは付け加える。

「なるほど、そう言う事か。」
 ユアも理解した。
 メドーラとケイネシアとのやり取りを見て。

 ユアとメドーラは理解した。
 となると、マイは理解出来たのかが、気になるところ。

「良かった。また会えるとは、思わなかったよ。」
 マイは涙ぐむ。
 ミイとは、もう会えないと思って別れたのだから。
 厳密に言えば、ミイは円筒形のコンピュータになってるので、これを再会と言えるのかは、微妙である。

「それで、ミイ。今のあなたは、なんて呼べばいいの?」
 マイはミイとの再会に感動したところで、目の前の人物がケイの姿をしてることに、少し戸惑う。
 この人は、ミイなのか。それともケイなのか。
「ケイネシア・ヤーシツ・メドローア。
 このアバター体のヤツはみんな、この名前さ。」
 マイの質問に、ケイネシアは答える。
 最初に出会った人物も、ケイネシアと名乗った。
 つまり、ケイネシアを名乗る人物は、ふたりいる。
 いや、途中で出会った人物もみな、ケイネシアと言える。

「そうなんだ。でも、なんでみんな同じ名前なの?」
「それは、このアバター体はそっちの次元に行く時しか使わないから。
 だから、このアバター体の時はケイネシアを名乗る。」
 と、ケイネシアは説明する。

「つまり、本名は別にあると言う事ですね。」
 マイとケイネシアとの会話に、メドーラが割り込む。
 メドーラはケイネシアをにらむ。
「今行われている侵略行為。
 それを全部、ケイネシアのアバター体、つまり、ケイお姉さまに責任をなすりつけるのですね。」

 メドーラの発言に、ケイネシアは呆れ顔。
「侵略行為?
 そうか、君達はあれを、侵略行為ととらえていたのか。
 道理で抵抗が激しいわけだ。」
「どう言う事なの、それは。」
 自分の発言を否定された形のメドーラ。
 侵略行為とは別の意味を持つらしい事に、改めて問う。

「なんか、行き違いがあるみたいだな。
 なら、今回のいきさつを説明するか。」
 ケイネシアは、侵略の経緯を、北部戦線の真実を語り出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Re:コード・ブレイカー ~落ちこぼれと嘲られた少年、世界最強の異能で全てをねじ伏せる~

たまごころ
ファンタジー
高校生・篠宮レンは、異能が当然の時代に“無能”として蔑まれていた。 だがある日、封印された最古の力【再構築(Rewrite)】が覚醒。 世界の理(コード)を上書きする力を手に入れた彼は、かつて自分を見下した者たちに逆襲し、隠された古代組織と激突していく。 「最弱」から「神域」へ――現代異能バトル成り上がり譚が幕を開ける。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...