未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第132話 思わせぶりに瞳を閉じて

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦区の中心、衛星基地ソゴム。
 ソゴムから次元を越えて、マイとユアとメドーラの三人は、ミイと再会する。
 だがマザーコンピュータとなった、元サポートAIのミイは、フォログラフだった。
 その傍らにいた、ミイの別動体であるケイネシア。
 マイとだけは争いたくないと言うケイネシアの前に、ユアとメドーラは倒されてしまった。



 ユアとメドーラを倒して、マイの目の前に立つケイネシア。
 マイは三歩分、後ろに飛んだ。
 そしてソウルブレイドのクダをケイネシアに向ける。
 しかしクダ状のまま、武器への展開が出来なかった。

「マイ、あなたも私と戦うのね。」
 マイのソウルブレイドを見ながら、ケイネシアは悲しげな表情を浮かべる。
「何度も言わせないでちょうだい。
 そう仕向けたのは、あなたでしょ!」
 マイのソウルブレイドを持つ手が震える。
 ソウルブレイドはクダ状のまま、武器への展開が出来ない。
 今まで好き勝手に色々な武器を作り出してたのが、嘘の様だ。
 それほど、今のマイは精神的ダメージが大きかった。
 突き付けられた死への恐怖。
 それは、短時間でぬぐい取れるものではない。

「なり行きとはいえ、悪かったよ。」
 ケイネシアは、クダ状に戻したソウルブレイドを、両脚の太ももの脇に装備する。
 そこが、ソウルブレイドの収まる所である。

「マイとは戦いたくない。これが、ミイの遺志なんだ。」
 虫の息で横たわるユアとメドーラを見つめながら、ケイネシアは言う。
「なによそれ。僕以外とは、戦いたいって事?」
 マイはケイネシアの言葉に、どこか違和感を覚えた。
 それが何かは分からないが、自分以外とは戦いたいと、言ってる様に感じた。

「ミイは、おまえ達三人と行動をともにしたからな。
 おまえ達の魂の分析は、済んでいる。」
 そう、マイとユアとメドーラの三人は、惑星ドルフレアでのケイ捜索任務で、ミイと行動をともにした。
 だけどその事と今の状況が、どうつながるのか、マイには分からない。
「どういう事?」
「この先、頼れるのはマイだけだと、ミイは判断したのさ。」
「ミイが?」
 マイは、ケイネシアの言葉にやはり、違和感を感じる。
「ああ、好戦的なふたりと違って、マイとは話し合って理解する事が出来る。」

「マイお姉さま、気をつけて、ください。」
「まるめ、こまれるなよ、マイ。」
 倒れたままのメドーラとユアが、マイに話しかける。
「ふ、やはり邪魔をするのか。」
 ケイネシアはそんなふたりに対して、目を閉じてニヤける。
「ふたりとも、今はじっとしててよ。」
 ユアもメドーラも、起き上がれないほどダメージをうけている。
 そんなふたりをマイは心配するのだが、ユアもメドーラも、マイの事を心配する。

「いや、黙ってられっかよ。」
 ユアは倒れた状態で、マイの事を見つめる。
 そして、何かを悟ったように、目を閉じてニヤける。
「あいつが、マイとは戦いたくないと言った気持ちが、よく分かるよ。」
「え?」
 突然そんな事を言われて、マイも戸惑う。

「あなたを傷つけたくない、という事ですわ。マイお姉さま。」
 ユアの言いたかった事を、メドーラが引き継ぐ。

「やめてよ。」
 マイは思わず膝から崩れて、しゃがみこむ。
「やめてよ。僕、ふたりの足手まといにしか、なってないじゃん。」
 マイは、衛星基地ソゴムの次元の歪みを越えたあたりから、ふたりとの違いを痛感していた。
 自分が居なければ、ふたりはもっとすんなりと、任務を遂行出来たであろう。

「それは違うよ、マイ。」
 目を閉じたまま、ユアは話しかける。
「くやしいが、今ならよく分かるよ。なあ、メドーラ。」
「ええ。マイお姉さまは、私達とは違う。」
 メドーラはマイを見つめ、にこやかにほほえむ。
「やめてよ、メドーラ。僕も、ふたりと同じくらい、強くなりたいよ。」
「ふ、それは無理だな。育った環境が違いすぎる。」
 横からユアが口を挟んだ。
「やだよ、そんなの。僕のせいで、ふたりともこうなっちゃったじゃん。」

「いいえ、マイお姉さま。マイお姉さままで私達と同じだったら、私達三人、ここで死んでますわ。
 そうでしょ、ケイネシア。」
 メドーラは視線をケイネシアに向ける。

 目を閉じて、三人の会話を聞いていたケイネシア。
「まあな。」
 ケイネシアは目を開けて、視線をメドーラに向ける。
 ケイネシアは今まで、マイ以外を相手にしていないそぶりだった。
 初めてマイ以外に意識を向けた、とも言える。
「おまえ達三人なら、いつでも殺せる。
 魂の分析は済んでるからな。」
「ほんと、くやしいぜ。マインとリムなら、負けなかったって事だからな。」
 横からユアが口をはさむ。
「そのふたりなら、私も対処のしようがない。
 ここまで招き入れなかっただろうな。」

「どういう意味よ。」
 ケイネシアとメドーラとユアの三人の話しぶりを見て、マイの口調も変わる。
 本意ではないが敵対している者に対して、だったのが、旧知の知人に対してのそれに変わってる。
 マイ本人も、はっきりと意識はしてないが。

「ミイの記憶データにないからな。
 マイと一緒なら、ユアとメドーラにも託せるかもしれない。
 でも、他のふたりは分からない。」
「ふ、野蛮人な私達も、マイに感化されるかもしれない。
 でも、他のふたりは分からないって事か。」
 ケイネシアの言葉に、ユアがあいづちをうつ。

「そこは、おまえらがマイに対して、どう思ってるか。
 賭けでしかないがな。」
「その賭けに、私とメドーラは勝ったのかな?」
「さあな。それは私には分からない。分かるのはミイだけさ。」

 ケイネシアとユアとの会話。
 それを聞いていて、マイは自分が感じた違和感の正体に気がつく。

「ねえケイネシア。あなた、ミイではないみたいね。」
 マザーコンピュータミイの、外部端末みたいな事を言っていた
 ケイネシア。
 それは、マザーコンピュータミイの一部である事を意味する。
 しかし、外部端末であるケイネシアから、ミイの存在を感じる事は出来なかった。

 そう、目の前のケイネシアは、明らかにミイではなかった。
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