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異次元からの侵略者
第162話 初対面でも共通の知人の話しで盛り上がる
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
マイとユアとメドーラの三人が、超高次元空間で神武七龍神のブルードラゴンと戦ってた時、北部戦線の衛星基地ソゴム周辺でも、激しい戦闘が繰り広げられていた。
我らが金色の麗鳥リムも、そのアバター体の機能はほぼ停止している。
対するマザーコンピュータミイも、自らの意思と言うものは、ほとんど残っていなかった。
そして、そんなふたりは知らない。
今、自分は誰と戦っているのかを。
「んー。」
リムは自分の左手首を右手で掴み、そのまま左手を上方へと伸ばして伸びをする。
しかし右手に握力が入らず、左手首を掴めなくなった右手が、リムの頭の上に落ちる。
「何をやってるのですか、リム。」
リムの意味不明な行動に、パートナーであるサポートAIのナコが、リムの額のチップを通じて話しかける。
「右手の感覚が無くなったわ。」
リムは今の行動で、自分のアバター体の調子を探っていた。
右手をにぎにぎしてみても、すでに右手は動かない。
少し前までは、その実感は無くても、にぎにぎは出来てたのに。
「そろそろ、限界、かな?」
リムのアバター体は、主に右半身が、動かなくなってきていた。
それは、先の戦闘でリムが負傷した箇所だった。
そんなリムは、アバター体の応急処置で、馳せ参じた次第である。
「だから、私は無茶しないでって、言ったのですよ。」
そんな身体で出撃すればどうなるのか、ナコには想像出来ていた。
「でも、私はマイを助ける事が出来たわ。
それで充分よ。」
リムにしても、自分が落ち入ってしまった現状に、後悔は無かった。
「いいえ。マイが無事でも、あなたが無事じゃなければ、意味がありません。」
ナコは、リムとは考えが違った。
「もしリムが死んでしまったら、私はマイを殺します。」
「それじゃあ、私の命をかけた行動が、無駄になるじゃない。」
「ええ。ですから、あなたは死んではいけません。」
「私も、死にたいって訳じゃ、ないんだけどね。」
リムはおもむろに、まだ動く左手で、左目を隠してみる。
かすんできた右目で、どう見えるのか、ふと気になった。
「あれ、青一色。」
リムの右目には、艦内の色彩が、全て青一色に見えた。
左手を左目からどけると、普通の色彩に、青みがかって見えた。
どうやら左目では、普通に見えるらしい。
左目と右目の視界が合わさって、青みがかった世界が見えるらしい。
「戦闘も、やんでますね。」
リムが自らの体調を探るなか、ナコも、北部戦線の異変に気づく。
激しく繰り広げられていた戦闘も、いつの間にか、やんでいた。
リムは立ち上がると、ブリッジへの扉を開く。
「何があったの。」
「あ、リム艦長代理。」
リムはそばにいたこの艦の艦長に尋ねる。
「戦闘システムの全てが、遮断されています。」
「味方の全ての戦艦でも、同様の障害が起きています。」
「敵戦艦も、同様のようです。」
とオペレーター達が報告を上げた所だった。
「リム艦長代理、これはどう言う事でしょう。」
艦長は、リムに質問をぶつける。
この戦艦一隻の戦闘システムトラブルなら、有り得るかもしれない。
だが、この戦域に於ける全ての戦艦がそうだとすると、何者かの関与があるとしか、思えない。
と、リムは思うと同時に、恐ろしいモノを感じる。
こんな事が出来る何者かがいるなら、なぜ最初から、そうしなかったのだろうか。
「まずは、現状確認よ。
全方位モニターを、メインモニターに展開して。」
「了解。
全方位モニターを、メインモニターに展開。」
リムの指示を受け、オペレーターがメインモニターを操作する。
この艦の外部の様子が、ブリッジの壁を透ける様にして、映し出される。
「これは?」
その様子に、誰もが驚いた。
衛星基地ソゴムを中心に、青いモヤが広がっていた。
驚いたのは、その青いモヤの広がる範囲である。
この衛星基地ソゴムから0.5光年離れた所に、姉妹衛星基地のゴソラがあるのだが、青いモヤは、ゴソラ周辺まで届いていた。
「竜?」
リムにはこの青いモヤの濃淡が、竜の様な模様に見えた。
「ほう、我を感じる者がいたか。」
リムのつぶやきに呼応して、ソゴムの後方上空に、巨大な竜の顔が浮かび上がる。
とは言え、この竜を見ることが出来たのは、リムだけだった。
他の者達には、濃淡入り混じった青いモヤにしか見えない。
そして、竜の声も聞こえない。
「あなた、何者なの?
私達の、敵?」
リムは慎重に言葉を選ぶ。
正体の知れなかった、今回の北部戦線での敵。
それはおそらく、この竜だろう。
青いモヤが広がる範囲ぐらいなら、好き勝手出来るのだろうと、リムは思った。
そう、今の戦闘用システム障害は、そうでないと説明がつかない。
ならばなぜ、こちらと艦隊戦なんかに応じたのかと、疑問がわく。
今の様に、こちらの戦力を強制的に抑え込む事も可能なのに、なぜしなかったのか、と。
「ほう、なかなか察しがいいの。
誰かと違って。」
再びリムだけに聞こえる竜の声に、リムはゾッとする。
頭の中で瞬間的に、爆発的に思考した内容が、全て読まれてしまった。
そして、今言った誰かとは、誰か。
リムの頭には、瞬時にマイの事が浮かぶ。
「おお、そいつじゃ。
なかなか無礼なヤツじゃったわい。」
三たびリムにだけ聞こえる声で、竜が話しかける。
「ふふふ、あなたもそう思うのね。」
リムは、考えるのをやめる。
いくら思考を巡らせても、それが全て筒抜けなのだ。
出し抜こうだとか、こいつを負かそうだとか、そんな思いが少しでもわいたら、瞬時に全滅する。
それに相手は友好的な気配がある。
怒らせないように立ち回れば、なんとか切り抜けられるはず。
「ああ。だが、悪いヤツではなかったな。」
「ええ、私の自慢の仲間よ。」
そう答えるリムに、先ほどまでの怯えの色はなかった。
マイとユアとメドーラの三人が、超高次元空間で神武七龍神のブルードラゴンと戦ってた時、北部戦線の衛星基地ソゴム周辺でも、激しい戦闘が繰り広げられていた。
我らが金色の麗鳥リムも、そのアバター体の機能はほぼ停止している。
対するマザーコンピュータミイも、自らの意思と言うものは、ほとんど残っていなかった。
そして、そんなふたりは知らない。
今、自分は誰と戦っているのかを。
「んー。」
リムは自分の左手首を右手で掴み、そのまま左手を上方へと伸ばして伸びをする。
しかし右手に握力が入らず、左手首を掴めなくなった右手が、リムの頭の上に落ちる。
「何をやってるのですか、リム。」
リムの意味不明な行動に、パートナーであるサポートAIのナコが、リムの額のチップを通じて話しかける。
「右手の感覚が無くなったわ。」
リムは今の行動で、自分のアバター体の調子を探っていた。
右手をにぎにぎしてみても、すでに右手は動かない。
少し前までは、その実感は無くても、にぎにぎは出来てたのに。
「そろそろ、限界、かな?」
リムのアバター体は、主に右半身が、動かなくなってきていた。
それは、先の戦闘でリムが負傷した箇所だった。
そんなリムは、アバター体の応急処置で、馳せ参じた次第である。
「だから、私は無茶しないでって、言ったのですよ。」
そんな身体で出撃すればどうなるのか、ナコには想像出来ていた。
「でも、私はマイを助ける事が出来たわ。
それで充分よ。」
リムにしても、自分が落ち入ってしまった現状に、後悔は無かった。
「いいえ。マイが無事でも、あなたが無事じゃなければ、意味がありません。」
ナコは、リムとは考えが違った。
「もしリムが死んでしまったら、私はマイを殺します。」
「それじゃあ、私の命をかけた行動が、無駄になるじゃない。」
「ええ。ですから、あなたは死んではいけません。」
「私も、死にたいって訳じゃ、ないんだけどね。」
リムはおもむろに、まだ動く左手で、左目を隠してみる。
かすんできた右目で、どう見えるのか、ふと気になった。
「あれ、青一色。」
リムの右目には、艦内の色彩が、全て青一色に見えた。
左手を左目からどけると、普通の色彩に、青みがかって見えた。
どうやら左目では、普通に見えるらしい。
左目と右目の視界が合わさって、青みがかった世界が見えるらしい。
「戦闘も、やんでますね。」
リムが自らの体調を探るなか、ナコも、北部戦線の異変に気づく。
激しく繰り広げられていた戦闘も、いつの間にか、やんでいた。
リムは立ち上がると、ブリッジへの扉を開く。
「何があったの。」
「あ、リム艦長代理。」
リムはそばにいたこの艦の艦長に尋ねる。
「戦闘システムの全てが、遮断されています。」
「味方の全ての戦艦でも、同様の障害が起きています。」
「敵戦艦も、同様のようです。」
とオペレーター達が報告を上げた所だった。
「リム艦長代理、これはどう言う事でしょう。」
艦長は、リムに質問をぶつける。
この戦艦一隻の戦闘システムトラブルなら、有り得るかもしれない。
だが、この戦域に於ける全ての戦艦がそうだとすると、何者かの関与があるとしか、思えない。
と、リムは思うと同時に、恐ろしいモノを感じる。
こんな事が出来る何者かがいるなら、なぜ最初から、そうしなかったのだろうか。
「まずは、現状確認よ。
全方位モニターを、メインモニターに展開して。」
「了解。
全方位モニターを、メインモニターに展開。」
リムの指示を受け、オペレーターがメインモニターを操作する。
この艦の外部の様子が、ブリッジの壁を透ける様にして、映し出される。
「これは?」
その様子に、誰もが驚いた。
衛星基地ソゴムを中心に、青いモヤが広がっていた。
驚いたのは、その青いモヤの広がる範囲である。
この衛星基地ソゴムから0.5光年離れた所に、姉妹衛星基地のゴソラがあるのだが、青いモヤは、ゴソラ周辺まで届いていた。
「竜?」
リムにはこの青いモヤの濃淡が、竜の様な模様に見えた。
「ほう、我を感じる者がいたか。」
リムのつぶやきに呼応して、ソゴムの後方上空に、巨大な竜の顔が浮かび上がる。
とは言え、この竜を見ることが出来たのは、リムだけだった。
他の者達には、濃淡入り混じった青いモヤにしか見えない。
そして、竜の声も聞こえない。
「あなた、何者なの?
私達の、敵?」
リムは慎重に言葉を選ぶ。
正体の知れなかった、今回の北部戦線での敵。
それはおそらく、この竜だろう。
青いモヤが広がる範囲ぐらいなら、好き勝手出来るのだろうと、リムは思った。
そう、今の戦闘用システム障害は、そうでないと説明がつかない。
ならばなぜ、こちらと艦隊戦なんかに応じたのかと、疑問がわく。
今の様に、こちらの戦力を強制的に抑え込む事も可能なのに、なぜしなかったのか、と。
「ほう、なかなか察しがいいの。
誰かと違って。」
再びリムだけに聞こえる竜の声に、リムはゾッとする。
頭の中で瞬間的に、爆発的に思考した内容が、全て読まれてしまった。
そして、今言った誰かとは、誰か。
リムの頭には、瞬時にマイの事が浮かぶ。
「おお、そいつじゃ。
なかなか無礼なヤツじゃったわい。」
三たびリムにだけ聞こえる声で、竜が話しかける。
「ふふふ、あなたもそう思うのね。」
リムは、考えるのをやめる。
いくら思考を巡らせても、それが全て筒抜けなのだ。
出し抜こうだとか、こいつを負かそうだとか、そんな思いが少しでもわいたら、瞬時に全滅する。
それに相手は友好的な気配がある。
怒らせないように立ち回れば、なんとか切り抜けられるはず。
「ああ。だが、悪いヤツではなかったな。」
「ええ、私の自慢の仲間よ。」
そう答えるリムに、先ほどまでの怯えの色はなかった。
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