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Commentary
オウムとペルソナ
しおりを挟む駐車場に1台、見慣れない外車が停めてあった。
晶を後部座席に。その前の席に菊、花子、撫子、そして少女が座ると、 運転手の執事風のおじいさんがお待ちしておりましたとばかりに発車させる。
流れる景色を横目に、各々が重苦しい雰囲気に包まれていた。
別に何と言う訳じゃないが、過去について様々な記憶がよぎったからだろう。
「あの……何故ペルソナに、オウムちゃんがついていったんですか?」
真っ先に口を開いたのは撫子だった。
ペルソナとは、晶を引きずっていた少女のことで、少女は先ほど自分も挑戦者の駒であり、そしてペルソナだ、と名乗っていた。
「それまでは橋引さんのもつカメラに懐いていたのに……」
少女は静かに彼女を見た。
何も言わなかった。
撫子と蛇さんは当初、タッキーについていこうとしていたのだが、オウムがペルソナについていったので追いかけることとなっていた。
このオウムは事務所にある橋引のカメラがお気に入りで、さっきまで時折近くに留まったり陽気に歌っていたのだが……
ペルソナが上書きするようにオウムを連れて行ったわけだ。
まるでカメラの記憶がなかったみたいに、最初からオウムのものですよ、と言わんばかりに懐いている。
それが彼女には不思議でならなかった。
そこから暫くの間、再び静寂が続いた。
それが破られたのは、車が駅付近に近づいてくるようになった頃だ。
少女はやっと彼ら、彼女らを見て言った。
「もし――――その時代をうまく行っていたと評する人が居るなら、それは加害者の側です」
何を示してのことなのか、何を意味するのか、彼女以外には分からない。
撫子が「どういう意味」と聞こうとする間に、彼女は階段を降りていく。
此処の駅は階段を降りた先にあり、一段下がった場所に存在する。
自ずと他の人たちも後に続いた。
――――だが、途中から異変があった。
「あれ、こっちじゃないのか?」
少女が通常の乗換口に向かわない。
菊が疑問思って尋ねると、彼女は当然のように「あれは人間用ですよ」と言う。
「人間用、って君は人間じゃないの」
「質問の意味がわかりません」
通常と反対側の通路に向かって歩いて行く。
そっちには休憩室や店、切符売り場はあるが、電車が通るようなホームは存在していなかった気がする。
「だから、君は、ヒトの姿をしていて、言葉も交わしているし」
すたすたと先に歩いて行く彼女の背中を追いながら、菊は問いかける。
「例えば、菜食主義者が突然、肉を食べて来なかったから理不尽だ、と言い出すと思いますか。彼らは、自分が草食の生き物であると、そう思う筈です」
「ペルソナちゃん」
撫子は、列の一番後ろから辛うじてついて行きながら、その言葉を反芻する。
なんだかわかる気がする。
憤らないのか、不満は無いのか、間違った事を嬉々として続けるのは異常ではないか。
そんな事を思うのは、いつも外側の人間だけで、他人の生き方に上から目線で口を出したに過ぎない。
「人が優しく聞いてやってんのに」
菊がぼやいているのを横目に、撫子は何とも言えない気持ちになった。
どんどん階段をくだっているうちに、周りから人気が無くなっていく。
掃除用具や備品しか無さそうな雰囲気だ。
しかし途中、少女は壁にある細い溝の一つに、何処からか出したカードをスライドさせる。
すると目の前にあったシャッターが開き、通路が現れた。
「此処って、点検用とかそういうんじゃないの?」
しばらく黙っていた花子が言うが、彼女は答えない。
シャッターの先に進んだ花子は他の人同様に言葉を失った。
ちょうどそのとき、黙って付いて来ていた執事?が、抱えている晶を持って彼女の前に歩いてくる。
彼らの前には新たに、トンネルに繋がったホームがあった。
「ここは、人外用のホームです。魔法使いみたいですね。ですが実在しています」
少女が淡々と呟く。
知らなかった、と菊や花子が唖然とする。
人外として扱われる人々。
「私は、周囲から人外とされ、見世物の人外として育ちました。そのときには表に居ない存在として此処を与えられています」
踏み台でしかなく、エンタメにしか実在
しないとして国規模で扱われ、晒され続ける人々。これだけ立派な設備が出来るという事がその規模、社会的な需要を物語っている。
執事?が手を振ると、トンネルの奥が光り出す。程なくして列車が停まった。
「行きましょう」
2025/11/0113:36
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