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aimed at precision
封筒 / Xファイル
どうやら、中身は「思っていた内容」と違っていて、
そっくり上から重ねて隠蔽するようなものになっていたらしい。
波風を立てないように全力で擁護を装った隠蔽に乗り出した。
――経歴の嘘なんかこっちにもバレてるのに。どうして、そこまでして…………
「隠蔽?」
聞こえてきた言葉を拾おうと俺は尋ねる。
「そこまでして、って、何か書類を偽造でもされてるのか? 誰かが、無理矢理偽造書類を押し通してきた?」
「言わない」
落ちてきた雫が、手の甲に当たる。
「だって、お前、泣いて……」
「泣いてない」
「嘘泣きには見えない。誰の経歴なんだ?」
また勝手に、と色は俺を睨んだ。
やばい。
立ち上がった色が近づいてくる。
攻撃に出られるのも面倒だと、俺は思わず腰を引き寄せる。
唇を奪うと、んんっ、とか細い声がした後、静かになった。
(色……)
こっそりと目を閉じて集中し、そいつの感情を読み取ってみた。
温かい。
きらきらした。寂しい、苦しい、嬉しい、柔らかい、眠い。
断片的な、一瞬の感覚。
――『 』なのね! 貴方が来るより先に たの。残念でした
――そう。そういうの、俺には、難しくて
分からないし……
なのに られていて、怖くて、ずっと不快だったんだ。
先に……の意識がそっちに向いたのを見て、良かった、もう狙われないって思って
(なんの……記憶?)
色は抵抗せず、恥ずかしそうに抱き締められている。
しばらくそのまま味わわせてもらっていたが、疲れてきたのか、やがて顎をぐいっと押し返された。
「ちょっと。や、めろ」
目に涙をためながら、必死に息をして言われた。
「嫌だった?」
「……っ」
その表情で、少しだけ独占欲が満たされる。
「でも、寂しいんだ。不安なんだよ、田久保さんとか、松本さんとか俺知らねぇし」
言葉とは裏腹に、背筋に走った震えを感じ取られた気がして目を逸らす。
「何を言ってるんだ」
色が視線をさ迷わせる。
それから、はぁ、と深いため息。
わかったよ、と言う事らしい。
◆◆
まぁ話してもいいけど。
「そうだな、その前に」と、色は俺を覗き込んだ。
「俺の事をどの位、知っている?」
やけに真剣なまなざし。興味津々という風にも見える。
「どのくらいって……」
長い睫毛が、頬に触れそうな距離。なんだか緊張で声が上ずる。
「えっと」
猫みたいに気まぐれで、冷たくて、でも不思議と憎めなくて。
何かしら分解していて……優しくて。言葉にするとめちゃくちゃで、訳が分からないけど、でもそんな色の事が俺は大好きで。
俺が黙っていると、色は視線を逸らし、寂しそうに笑った。
「経歴。此処に来るまで、何をしていたのか」
色は、真っ直ぐに言葉を落とす。
「え……」
あのとき、手を繋いで見えたものと関係があるのだろうか。
「そう。無いんだ」
「無い、って?」
「Xファイルが存在を否定された事で、俺は一切の経歴を失っている」
Xファイルと言うのは、簡単に言うなら俺達の個人情報。
主に能力絡みのデータのファイルだ。
現代の日本で表向き存在しない事にされ、Xと言う名前で保管されてしまった。本来のアイデンティティ。
実は途中で余所から来た俺の情報はそこには殆ど無い
のだが、色は違う。何せ5歳のときから、『世間に出さない前提で』記録されているのが藍鶴色くらいなのだから。
「あの中は、予知能力の研究の為に、幼い頃からの書類、録画のアーカイブ、全てが保管されている」
「それが全部、存在しない事にされるって……」
5歳の頃から、今までの存在証明がされないって事か?
それも本来、慎重に扱わなくてはならない能力者の個人情報が、
保管だけされて、研究だけされて永遠に日の目を見ないって言うのか。
「そう。そうなっている。これにあるように」
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