兄が度を超えたシスコンだと私だけが知っている。

ゆき

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継子が虐められるなんて別に珍しい話でもないよね。

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前妻の娘が、後妻やその連れ子に虐められることなんて、これといって珍しい話でもない。

六歳の時、大好きだった母が亡くなってすぐに、父は義母とその息子、娘を屋敷に招き入れた。

全く血の繋がっていないグレン兄様と、半分だけ血の繋がった義妹のエクル。

複雑だったが兄妹ができたことに少しだけ喜びを感じたのも束の間、私は一気に現実を突きつけられた。


「お姉様ごめんなさ~い」

わざとらしく零された夕食のかぼちゃスープがテーブルをつたって私の左足にかかる。

用意されて間もないそれは、思わず眉をひそめてしまう程には熱かった。


「…」

謝罪を述べてからスープを零すこの義妹はやっぱり頭が空っぽみたいだ。


「まあっ!エクルがわざわざ謝ってあげているのに無視なんて、やっぱり母親の教育が悪かったのね…ああ、姉に虐められて可哀想なエクル!」

馬鹿げた言い分で騒ぎ立てる母から視線を外し食事を進める。


母は生前、馬鹿の相手をするのは時間の無駄だとしっかり教育してくださいましたよ。

聡明な方だったから。


「すましちゃって、もうあなたの顔を見るのもうんざりです!」

「では、明日から食事は自室で済ませるようにしますね」


良い言葉を引き出せたのでちゃっかりそんなことを言う私に、義母は一層顔をゆがめた。


「そんなことは許しません!私達は家族なのですよ?食事は皆でとるものよっ!」

「そ、そうよっ、お姉様は冷たい方ね!」

家族だなんて、今更そんなことを言われて喜ぶような子どもではない。


この二人とはできるだけ顔を合わせないようにしているため、食事の時間だけ私をいびれることが楽しくて仕方ないのだ。

部屋の隅に控える使用人達もハラハラとことの成行を窺っている。


私がこの二人からうまく逃れたら、次に二人の相手をするのは彼らなのだから当然だ。



「グレンも何か言ってちょうだい!食事は家族皆で顔を合わせて食べるものでしょう!?」

家族の一員であるはずの父が不在の状況でよくもぬけぬけとそんなことが言える。

あの男はきっと今日も愛人の家だろうに。



「自室に籠ることは許さない」


義兄であるグレン兄様が相変わらず表情の無い顔でそう一言告げる。

…父が不在の今、彼の言うことは絶対である。

彼がお義母かあ様の言うことに背くことは、今のところ見たことがなかった。

自分の母を慕っているのか、それとも考えが一致しているだけなのか…正直お兄様のことはよくわからない。

感情が見えにくい人だ。


「承知しました、お兄様」


「さすがお兄様~!お姉様もこれくらいしっかりしてくれればよろしいのに…まあ、お兄様とは血の繋がりも何もないですし仕方ないですわね」


そうね。

グレン兄様と血の繋がりがないことは、私の一番の困り事だわ。


小さくため息をついて、食事を終わらせた。
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