一六銀行の鵜飼くん

芝桜 のの

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暑い日7

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もうそろそろ11時も過ぎる。
本屋から出てコーヒーショップの前に立った。
なんで、私が…相手は笠原なのに、待ち合わせ場所で早めに来て待たねばならんのだ!
仁王立ちで腕組みをし何かあったら文句の一つも言ってやろうと待ち構えていた。
もう!ホントに!自宅が怪獣達に占領されてなければ、ココで笠原に逢うこともなかったのにましてや一緒にご飯を食べるなんて!
「いやー待たせた?ワルいワルい」
と大して悪びれる事なく笠原が現れた。
汗を流してきたのか、さっぱりした顔をして爽やかさを醸し出そうとしている。
実際当人は爽やかよりも胡散臭さが醸し出されているのは気がついていない。
あえて言う事もないだろう。いつか本人が自分で気が付くはずだ。
それより、遅ーい!エセ爽やかさの為にシャワーなんぞ浴びて私を待たせるなんて!
憤慨している私に「後でケーキ奢るから」と取りなす。
なら、許そう!さあ、何処へ行く?

よくよく考えたら昼ご飯の後のケーキは案外お腹に入らない。
しかも、お茶の約束までさせられてるなんて!流れるように誘いを断らせないテクニック!
流石、営業!
ビジネス書を読まなくても染み付いているコミュニケーション能力、まさに天職!!
笠原唯一の褒められポイントだな。

「何にする?イタリアン?中華?和食?」
そう、ココは大型スーパー。何でも揃ってます。
と、言いつつ安定の味がするチェーン店ばかりなんですけど。
もう、何でもいいよ。何処に行っても何時もな味しかしないんだから。
「じゃあ。和食で」
んで、味噌カツ食べるでしょ~。唐揚げにもエビフライにも赤味噌かけたりして~
定番の味噌カツ、キャベツ、ご飯、味噌汁(赤だし)、漬物と揃いも揃った地元メニュー。見た目黒いな。インスタ映えもあったもんじゃない。
タピオカでも入れてみるか?
やっぱり映えない、なんか暗いな。全部、茶色。
いただきます。と手を合わせると
「森さんに、会長愛人説があったの知ってた?」
唐突に爆弾を投下してきた。
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