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一章
始まる
しおりを挟む物語を描きたかった。
小説を書きたかった。
歌を歌いたかったし、詩を書きたかった。
全てを求めて辿り着いたのは……
誰にでも人に気持ちを伝えたいと願う瞬間はある。
僕は幾度となくその機会に触れた。
人生28年。
数えきれないくらいに伝えた。
伝われと願った、祈った。
でもダメだったんだ……
そして今日、伝える事に疲れ、諦め、人生を終わる決意をした。
薄暗いワンルームの部屋の隅。
玄関を入ってすぐ左にキッチンがあり、7帖のワンルーム。
小さなちゃぶ台が部屋の真ん中にぽつんと置かれ、他に家具という家具は無く、一番奥の窓のヨコ、部屋の角に今では時代遅れの小さなブラウン管があるだけの本当に何も無い部屋。
何も無い僕にはピッタリの部屋だ。
夕日が窓から差し込んでも目の前のマンションが邪魔をして部屋は薄暗い。
電気は付けない、この機に及んで光など必要も無いだろう。
そんなちっぽけな、まるで自分が感じた社会ってやつがこの部屋その物みたいなこんな場所で今日僕は死ぬ、もしくは殺される……社会に、人に。
16歳
中学の時は友達もそこそこ多かったし、部活だってバスケ部に入っていてそこそこ上手かったし、
学校生活は充実はしていた。
まぁ何を持ってして充実と呼ぶかは分からないけれど、まぁ充実していた。
高校に入学する時にも中学の様にある程度の充実で3年間終えられればいいかなと思っていたけれど現実は残酷だった。
入学式の日
あいにくの雨。僕は父親に学校まで車で送ってもらい少しの距離を傘をさしながら小走りで下駄箱へ向かった。
入学生が沢山いて、地元が同じなのか仲良く話をしている人もいれば
僕と同じ様に1人でうろうろしている奴もいるし、
学校生活には付き物の所謂不良って奴も居た。
クラス分けの貼り紙を見ながら自分のクラスに向かう。
「2組か…えーっと、2階ね」
上履きに履き替え下駄箱を入って真正面の階段を登って行く。
ドンッ
誰かが後ろからぶつかってきた、明らかにわざとだ。
階段の幅は広く、決して真ん中を歩いて居た訳では無かったのに。
「邪魔だなぁ~おせーよ。」
入学式には場違いの金髪、
制服のネクタイは締めているのかわからない程に緩まり、今にもパンツが見えるのでは無いかと云うくらいにズボンを下ろした3人組が後ろからぶつかってきた。
「あ、ごめん」
小さい声だっただろうか、一応、僕は悪くは無いのだけれど一応謝ってはみたが、そんな声を聞く間も無くそそくさと不良達は先に行ってしまっていた。
あまり良いスタートでは無いな、なんて考えてる内に教室に着く。
階段を登って正面が2組だ。
教室に入りクラスを見回すと例の3人組が居た。
「一緒かぁ…」
息を吐くような微かな声で呟いた、つもりだったが
3人の内の1人に、それを見られて居たらしく
この些細な、たった一言が僕の学校生活にこんなに影響するなんて考えても居なかった。
応援ありがとうございます!
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