不遇な王の娘は邪神と騎士に愛を注がれる

高倉阿佐

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後日談

曇天の空の下、市庁舎前の広場には人だかりが出来ていた。

広場は市民らの憩いの場で、催しがあれば大道芸人が芸を披露し周囲には露天が立ち並び、賑やかなものだが、その場では町の喧騒は消え、女の抑揚のついた低い声が響いた。



「滅びは近い。すべてを捨て、大いなる神に身をゆだねよ」



群衆の前でそう語る灰色のローブの女はヴェールを目深に被り、表情は窺い知れない。



「冬は長く、春はなかった。夏は冷たく、嵐と雹が襲い、飢餓がこの国を覆っている。そして魔物が出た」



聴衆がざわめいた。女は言葉を続ける。



「傲慢を捨てよ。すべてを神アーヴァドに委ね、すがるのだ」



「あれ……なんですか?」



広場の横切る、路を通りかかった女中が、パン屋に尋ねた。



「あれはねぇ、アーヴァドっていう神の預言者よ。あんた、田舎から出てきたばっかりかい?王宮の中に、立派な神殿が建っているのを知らないのかい?」



「神殿…でも、聞いたことのない神の名ですよ」



「それがねぇ、二十年前、反乱があって今の女王様が即位したのよ。それで女王様が信仰していた神がアーヴァド神だったの。なんでも、ずっと昔に忘れ去られていた神で、女王様は神の導きで即位出来たそうだよ」



パン屋の女将と女中が話し込んでいる間に広場に騎馬警備兵が二騎、広場の聴衆を散らしていた。



「広場での集会は禁止されている!即刻立ち去れ」



警吏の張り上げる声に、蜘蛛の子を散らすように観衆達は去っていった。あの預言者も、聴衆に紛れて消えていた。



「いいのですか?」

「構わん。あの預言者はアーヴァドの……女王陛下の庇護下にある……手出しは出来ん」

「はっ」



騎馬兵達は広場から走り去った。それを、預言者は市庁舎の尖塔に立ち眺めていた。









同じ頃、王宮から北にあるこじんまりとした城館に訪れる者がいた。黒々とした髪を編み上げ、磁器のような白い肌の美女は、ありし日のミリアムの生き写しだった。彼女はイゼベル──ミリアムの娘であり、彼女の夫ギデオンの娘でもあった。



館の応接間に通されるとイゼベルは提げていた籠を女中に渡した。中には焼き菓子が入っている。



「お母様の様子はどうでしょうか」



女中の話を聞くとイゼベルは肩を落としたが、母親の寝室に案内され、向かった。



イゼベルが産まれてから二十年、ミリアムは女王として即位はしたが国政に関わる事はなかった。夫であり王配のギデオンが

政務を代行し、現在はイゼベルが女王の代理として毎日行われる会議を開き、書類に目を通し、職務に励んでいた。



今日は週に一度の母親への見舞いの日だった。王宮の敷地内とはいえ、馬車での移動に時間が掛かり、毎日のスケジュールが細かく決まっている王女の、母親との面会が出来る、貴重な時間だった。







「──お母様、お身体は如何ですか?もう一昨年から異常気象が続いていて、今も雪がすごいでしょう?そのせいで作物は不作、この寒さで薪の値段も上がっているのですって」



寝台の横にあるスツールに座り、イゼベルは母親に市中の惨状を話した。ベッドの上の女王はそれには興味無さそうに刺繍に集中している。



女王ミリアムは政治に興味はなく、一人娘のイゼベルに愛情を向けることはなく、この城館で過ごしていた。それでも母の元に通うイゼベルに周囲は同情し、母の暮らす館で過ごす日は政務はなく、日が暮れるまで滞在する事が出来た。



「そうだ、焼き菓子を焼いたのです。バターと卵とミルクに砂糖をたっぷり使ったお菓子ですよ」



女王は一瞥もなく一心に針を進めている。イゼベルが挨拶をして寝室を出ると廊下に近衛兵──王女付き近衛隊隊長がいた。



「どうでしたか」

「……他愛ない世間話をして、お母様は私の話には興味ないようだった……いつものように」



「そう……いつものように……では私たちも、いつものようにしましょうか」









──女王の城館の客室用寝室、そこでイゼベルと近衛隊隊長はベッドの上で裸で絡み合っていた。ベッドの下の絨毯にはドレスや幾枚ものペチコートが積み重なっている。



「あっ…おっ…あああぁ~……」



男に跨がったイゼベルは黒髪を振り乱し上下していた。男に乳頭を両方とも捏ねられ頤を反らして絶頂した。それでも男の律動は止まらずイゼベルは男の胸板にしなだれかかった。



「ノア様ぁ……も、ダメです、激しい……これぇ……」



「イゼベル様がいうのなら、ゆっくりにしましょう……これならいいでしょう?」



近衛隊隊長──ノアがイゼベルを抱き抱えると揺らすような動きに変えた。ちゅう、ちゅうと啄むような口付けを交わすとイゼベルは嬉しそうにノアに身体を擦り寄せる。するとノアは腰の動きを早めた。



「うっ……で、るっ……」



ノアはイゼベルをかき抱くと最奥に注ぎ込んだ。はあはあと荒く息を吐くとサイドテーブルに置かれた水差しからグラスに水を注ぎ、包み紙とグラスをイゼベルに差し出した。



「子種を殺す薬です……なるべく早く服用なさいませ」



イゼベルはノアを一瞥すると包み紙を開き中の粉と水を一気に飲み干した。既にシャツを羽織り始めたノアに、イゼベルは呼び掛けた。



「今日はありがとうございます……次に母を訪れる時は……」



「イゼベル様……あなたももう二十歳ですよ。そろそろ王配を迎えなくてはいけない時期でしょう。私は伯爵位を次ぐ予定ですが、あなたとは釣り合いが取れない。もし私のせいで婚姻に及び腰でしたなら、この関係はこれっきりにしましょう」



「そ、そんな……」



「イゼベル様がご結婚なさって、王太子を出産なされた時、まだ私を想って下さっていたなら、またイゼベル様の恋人になりましょう」



「は、い……」







王城に戻るとイゼベルは寝室に籠り、灯りも着けずベッドの上で悶々としていた。そこに、コンコン、と戸を叩く音がする。

侍女にはしばらく一人にしてくれと言っておいたのに……と苛々していると、その音は扉ではなく壁に嵌め込まれた楕円の鏡の方からだった。イゼベルが鏡を押すと壁が回転し、灰色のローブを纏った女が立っていた。広場で聴衆に演説していた、女預言者だ。



「ノアディア……なに、なにか報告でもあるの」



「……くっさ、イゼベルあんた精液臭いわよ。あんた王女の立場なんだから男漁りは程々にしなさいよ」



「はぁ~~?!男漁りは失礼ねぇ!あたしはノア様一途の純愛なんだけど!!」



「よっく云うわねぇ…あの近衛隊隊長だけじゃなく騎士団の男共を食い散らかしておいて……」



「カマトトぶるんじゃないわよ、あんたも信者に手を出してるの、私が知らないとでも思ってるんじゃないでしょうね、女預言者様~~?」



喧しい女二人は今にも掴みかかり合う一歩手前だが、フッと息を吐くと二人共にベッドに倒れ込んだ。





イゼベルとノアディア……彼女達は邪神アーヴァドから産まれた、ミリアムに生き写しの娘達だった。



長子であるイゼベルは肉の卵から孵化すると表向き夫婦となった──ミリアムとギデオンの子として育てられた。もちろんミリアム自身ではなく、彼女の傀儡だが。



第二子のノアディアは父であるアーヴァドの預言者となるためアーヴァドによって隠されて育てられた。ミリアムは二十年もの間、仔を産み続けたが、完全に人の姿、ミリアムの複製品だったのはこの二匹だけで、残りの十八匹は魔物然とした姿をしており、産まれて暫くすると各々国中に散らばり縄張りや巣を持った。





「……仕方ないわね。淫奔、これがあたしたちのサガなんだもの」



「魔物の姿の妹達はお父様の力の増幅の影響で出現した魔物と交わって仔を産んだ者もいるわ。私達は人間と交わっても子供なんか産まれないけど……」



「子供……ああ、ノア様……あの方は愛し合う度に避妊薬をくださるの……身分違いの恋で私生児が産まれたら私の名誉が傷つくと心配されてるのよ……あの方の子供を私は産めないのに……」



「若干ラリってるわねあんた……ところでお父様とお母様とギデオン様はどうしてるの」



「元気にしてるわ。特におじさまは、政務を私がほぼ全て引き継いだからお母様の元から戻ってくる気配もないし」



「おじさまって……表向きギデオン様はあんたの実父ってことになってるじゃない」



「あの人が父親だった事なんてないわ。あの人は……いつだってお母様しか見ていないもの」

















──王宮の一画、かつてミリアムが暮らした廃聖堂は取り壊され、現在は女王が信仰するアーヴァドの神を奉る神殿があった。大理石の柱が建ち並ぶ回廊は圧巻で、古代の神殿を再現したのだった。神殿の奥には神像が安置されており、大理石で表された巨大な眼球だった。その不気味な姿は世の中全てを見通す神そのものだと言う。



そして──神殿の、極少数の限られた者しか入ることの許されない地下への入口。極厚の鉄の扉を進むと、内蔵を裏返したような、巨大な肉の部屋が広がっている。そこはアーヴァドの領域で、なにも知らずに訪れた者に直ちに死を賜るのだった。



アーヴァドに進むのを許された者は彼の箱庭を訪れる事が出来た。しかしこの箱庭に入るのを許されたのは彼の妻と彼女の求餌係だけだった。



おぞましい臓物部屋から抜けると、そこは常春の楽園なのだった。

その箱庭は穏やかな風が吹き、色とりどりの花が咲く花畑と草原が訪れる者を迎えた。川の水は澄んでおり、そのまま汲んで飲む事も出来た。しかしそこは偽りの楽園なのだ。

太陽と月が同じ役割を果たし、春夏秋冬の花が常に狂い咲きしていた。



草原に男女が一糸纏わぬ姿で折り重なっていた。二人は昼寝をしていたのか眠たげだ。先に女──王宮の傀儡ではない本物の──ミリアムが起き上がった。彼女の肥大化した乳房は二十年に渡って繰り返されたアーヴァドの雛の出産で常に母乳を溢し、全裸であっても口の細長いガラス瓶が手放せなかった。

ギデオンが飲み損ねた乳を回収し保管するためにあったが、アーヴァドはこの乳に酒を混ぜたものを好んだ。ミリアムの乳汁は甘く、そのまま直に飲んでも酒や果実を混ぜても美味なのだった。





ミリアムが起きたのに気がついたギデオンが起き上がる。彼女の顔を窺うと焦点の定まらない目でギデオンの陰茎を握り扱いていた。欲に満ちたミリアムの願いを叶えようとギデオンはミリアムを組み敷こうとするがミリアムはそれを制した。



「ギデオンさまを……きもちよくしてあげる……」



蕩け顔のミリアムは陰茎を扱く手を止めないままギデオンの乳首に舌を這わせた。チロチロと舐めてやると情けない喘ぎ声を上げた。両の乳首を行き往きする度にギデオンは暴発しそうになるがミリアムはそれを許さず根元を掴んでいた。



「ギデオンさま……かわいい……」



苦悶の表情のギデオンの胸から首筋、顎を舐め上げるミリアムの姿は淫魔そのものだった。事実彼女は邪神の妻で彼女の産んだ子供はすべてイゼベル、ノアディア含め魔物であり、人の身でありながら邪神の苗床であり肉の奴隷だった。



「愉しんでいるな」



アーヴァドの声だった。邪神は天井から垂れ下がる肉塊をぶちぶちぶちと引きちぎるとミリアムの元へ向かった。



天井から垂れ下がる肉は邪神の分身で、空間はこのおぞましい肉で構築、維持されていた。そしてこの肉はミリアムと、アーヴァドの眷属となったギデオンの食料だった。



「あ……アーヴぅ……」



先ほどまでギデオンを責め立てていたのを忘れたかのようにミリアムは邪神に絡みつき青黒い陰茎を扱き始めていた。



その光景に傷ついた表情のギデオンを、邪神はまずミリアムに扱くのを止めさせ己を分身の肉を振る舞った。二人が満腹になると邪神は提案した。我ら二人でミリアムを悦ばせよう。ただし、挿入はなしだ。



その提案にミリアムは不満だったが、二人がかりで愛されるのは大好きなので邪神に従った。





「んあっ…お゛ッ……お゛お゛お゛ォォ~~……」





邪神の肉厚な舌で舌を絡ませられ、両の乳頭を捏ねられ押し潰される。ギデオンは膝をつきミリアムの尻たぶを掴み後孔に舌を伸ばしチロチロと舐めている。



この責めに立っていることもまならないミリアムはがくがくと身体を震わせ、涙と涎と膣から淫水を垂れ流して喜悦した。



──もっと、もっとめちゃくちゃにして、いっぺんに、穴二つを、ずこずこぱんぱんしてぇ……



ミリアムの願いが届いたのか邪神はミリアムを跨がらせ、肉棒を挿入した。



「あっあっあ~~……」



挿入され達したミリアムの後孔をギデオンは挿入した。

邪神のミリアムへの肉体改造は後孔にも及んでいた。かつての排泄孔は膣同様に襞と皺が増えて蠢き、ミリアムにも男達にも快楽を与えていた。



「ミリアム様、両穴突っ込まれて悦ぶなんて娼婦でもしませんよ……本当に淫乱で、変態ですね…」



「だってぇ……気持ちいいのぉ……おまんこもお尻もずぼずぼされてぇ…あっ、ああ……」



「もっとよがれミリアム。我の雛を産み続け、この享楽の宴を永遠としようぞ」































──邪神とその妻と眷属のまぐわいは、飽きることなく続いたのだった。
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