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33『最初の指令・1』
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真夏ダイアリー
33『最初の指令・1』
今日は、年が改まって最初の日曜日。
午後から、新曲のレッスンがあるので、午前中に宿題をやっつける。
あらかじめ、みんなでシェアしておいた宿題の答がパソコンに送られている。それを見ながら、適当にミスをしてコピー。あっと言う間にできてしまった。
「いいかげんに、着替えて朝ご飯たべなさい」
「わっ!」
お母さんの声が、耳元でしたのでびっくりした。
わたしは、パジャマの上に半纏羽織って、顔も洗わずに宿題をやっていたのだ。
パソコンを落とそうとしてデスクトップを出すと、画面一杯にアラームが点滅した。
気持ちが悪いので、シャットダウンしようとしたら、
――指令 第一号――
来た……そう思った。
指が無意識にマウスをクリックした。
そこで、意識が跳んだ。
気づくと、無機質な廊下に立っている。
無機質というのは直感で、見た目には優雅なホテルの廊下のよう。天井は高く、床は、フカフカの絨毯、左側は大きなガラスのサッシになっていて、綺麗な庭が見えた。でも、それはCGで作ったように、美しすぎる。
この廊下の先に目的の場所があるような気がして、わたしはフカフカの絨毯を踏みながら、そこに進んだ。
突き当たりを右に曲がると、大きな吹き抜けのロビーのようになっていた。
真ん中に、気持ちよさそうなソファーのセットとテーブル、そして、ソファーには『魔女の宅急便』のグーチョキパン店のオソノさんのような女の人が座っていた。
「どうぞ、こちらへ」
オソノさんが、前のソファーを促した。
「はじめまして、わたし……」
「真夏さんのことは、みんな知ってる。ここの中よ」
オソノさんは、自分の頭を指した。
「わたしは……オソノでいいわ。あなたが、そう感じたんだから、まあ、お茶でも飲みながらゆっくりと……」
ホワン
目の前のテーブルに、ティーセットが現れた。
「ごめんなさいね、急ごしらえのバーチャルだから、細かいとこまで手が回らなくて」
「……でも、お茶は本物ですね、おいしい」
「嬉しいわ、そう言ってもらえて。視覚や触覚はともかく、味覚を作るのって難しいの」
「じゃ……これも?」
「あ、自分でばらしちゃった……こういうとこ、抜けてんのよね、わたし」
「ハハハ……」
オソノさんの情け無さそうな顔に、思わず笑ってしまった。
「よかった、リラックスしてくれているようで。こういう雰囲気の中で、仕事の内容を伝えるのが、わたしの仕事だから……ああ、ボキャ貧ね。こんな短いフレーズの中に『仕事』って、言葉を二回も使ってしまった」
「今ので、三回」
「あら、ほんと。もっと気の利いた言葉で伝えられなくっちゃね」
オソノさんの困った顔に、無機質な感じがいっぺんになくなり、あとの話は、お気楽に聞くことができた。
もっとも、その中味は、ちっともお気楽ではなかったけど……。
33『最初の指令・1』
今日は、年が改まって最初の日曜日。
午後から、新曲のレッスンがあるので、午前中に宿題をやっつける。
あらかじめ、みんなでシェアしておいた宿題の答がパソコンに送られている。それを見ながら、適当にミスをしてコピー。あっと言う間にできてしまった。
「いいかげんに、着替えて朝ご飯たべなさい」
「わっ!」
お母さんの声が、耳元でしたのでびっくりした。
わたしは、パジャマの上に半纏羽織って、顔も洗わずに宿題をやっていたのだ。
パソコンを落とそうとしてデスクトップを出すと、画面一杯にアラームが点滅した。
気持ちが悪いので、シャットダウンしようとしたら、
――指令 第一号――
来た……そう思った。
指が無意識にマウスをクリックした。
そこで、意識が跳んだ。
気づくと、無機質な廊下に立っている。
無機質というのは直感で、見た目には優雅なホテルの廊下のよう。天井は高く、床は、フカフカの絨毯、左側は大きなガラスのサッシになっていて、綺麗な庭が見えた。でも、それはCGで作ったように、美しすぎる。
この廊下の先に目的の場所があるような気がして、わたしはフカフカの絨毯を踏みながら、そこに進んだ。
突き当たりを右に曲がると、大きな吹き抜けのロビーのようになっていた。
真ん中に、気持ちよさそうなソファーのセットとテーブル、そして、ソファーには『魔女の宅急便』のグーチョキパン店のオソノさんのような女の人が座っていた。
「どうぞ、こちらへ」
オソノさんが、前のソファーを促した。
「はじめまして、わたし……」
「真夏さんのことは、みんな知ってる。ここの中よ」
オソノさんは、自分の頭を指した。
「わたしは……オソノでいいわ。あなたが、そう感じたんだから、まあ、お茶でも飲みながらゆっくりと……」
ホワン
目の前のテーブルに、ティーセットが現れた。
「ごめんなさいね、急ごしらえのバーチャルだから、細かいとこまで手が回らなくて」
「……でも、お茶は本物ですね、おいしい」
「嬉しいわ、そう言ってもらえて。視覚や触覚はともかく、味覚を作るのって難しいの」
「じゃ……これも?」
「あ、自分でばらしちゃった……こういうとこ、抜けてんのよね、わたし」
「ハハハ……」
オソノさんの情け無さそうな顔に、思わず笑ってしまった。
「よかった、リラックスしてくれているようで。こういう雰囲気の中で、仕事の内容を伝えるのが、わたしの仕事だから……ああ、ボキャ貧ね。こんな短いフレーズの中に『仕事』って、言葉を二回も使ってしまった」
「今ので、三回」
「あら、ほんと。もっと気の利いた言葉で伝えられなくっちゃね」
オソノさんの困った顔に、無機質な感じがいっぺんになくなり、あとの話は、お気楽に聞くことができた。
もっとも、その中味は、ちっともお気楽ではなかったけど……。
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