真夏ダイアリー

武者走走九郎or大橋むつお

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42『グラサン越しの頬笑み』

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真夏ダイアリー

42『グラサン越しの頬笑み』    




 わが都立乃木坂高校、その前身は東京府立乃木坂高等女学校で、それなりに伝統はあるんだ。

 だけど、なんせ地下鉄の駅を挟んで、私立乃木坂学院高校がある。世間で「乃木坂」と言えば、乃木坂学院のことであり。うちの学校は、乃木坂さえ取れて「坂下」と世間では言われている。

 まあ、生徒のわたし達からみてもパッとしない学校で、中坊相手の学校説明もおざなりで、見学会も二百人ちょっとしかやって来ない。

 方や、乃木坂学院は見学者の数……いや桁違いで、見学会は二日に分けて行われ、その数は二千は下らないといわれている。

 それに、なんたって制服がカッコイイ! かつての東京女子校制服図鑑には常連だった。それに学食が美味しいことは、去年文芸部の見学に行ったとき、あらためて実感。

 で、中学校長会が発表した入学志願者の中間結果で、わが乃木坂は定員を割っていた(-_-;)。

 そこで、慌てた先生たちが、受験生獲得のため、学校のホームページとパンフを一新することになり、わたしに白羽の矢が当たったわけ。

 別に、特段成績がいいわけでも、美人だというわけでもない。

 わたしが、まだなって一カ月とは言え、アイドルのハシクレだから……。

 改めて解説すると、わたしの異母姉妹が、AKR47の小野寺潤というアイドルで、去年の秋に選抜メンバーに入った。
 潤はフェミニンボブのショ-トヘア。わたしは、ごく普通のセミロング……だったのを、ハナミズキって美容院の大谷さんが、いたずら心で、わたしを潤と同じフェミニンボブのショ-トヘアにしてしまった。

 で、たまたま渋谷のジュンプ堂に行ったとき、潤がサイン会やっていて、マネージャーの吉岡さんに間違われた。で、いろいろあって、わたしもAKRのメンバーになってしまった。それから、わたしには不思議なことが次々と起こった。どんなことかって? それは、わたしの『真夏ダイアリー』のバックナンバー読んでください。

「事務所と相談してみます」

 山本先生には、そう答えておいた。

 無理っぽい感じがした。都立高校のパンフレットに、その学校の生徒だとは言え、アイドルのハシクレであるわたしが出ることは。

「うーん……むつかしいだろうなあ」

 担当の吉岡さんが、まず言った。

「学校の集合写真とかだったら、真夏も生徒だから、なんの問題もないんだけどねえ」

 振り付けの春まゆみさんも腕を組んだ。

「真夏が、乃木坂の生徒じゃなきゃ、企画も組めるけどなあ……」

 チーフの黒羽さんも頭を掻いて、向こうに行った。

「やっぱ、ダメですね」

 わたしは、スマホを出した。

 で、びっくりした。

 山本先生にメールを打とうとしたら、いきなりマナーモードの振動がした!

「はい、真夏です!」

 着信の表示は、光会長だった。

「……はい、すぐに伺います」


 会長の呼び出し。すぐに、わたしは会長室に向かった。


「真夏、その話受けるぞ」

「え……いいんですか!?」

「そのかわり、交換条件がある……」

 グラサン越しにも、会長の目が笑っているのが分かった。

 ゴクン

 唾を飲み込んだ。

 会長がグラサン越しに笑うときは、とんでもないことを言い出す前兆であることを吉岡さんから聞いていたから……。

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