魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
7 / 301

007『四人でテーブルを囲むぞ!』

しおりを挟む
魔法少女マヂカ

007『四人でテーブルを囲むぞ!』 

 

 女子高生は仲良くなると、つまらないことにこだわる。

 
 靴下の折り方をそろえたり、携帯のストラップを揃えたり、語尾に『じゃね?』を付けたり、『かわいい!』を封印して、うっかり言ったらみんなで爆笑したり……とかね。

 ま、他愛のないものがほとんどなんだけどね、時には、こういうのがあったりする。

 一人が特定の人物を嫌うと、その仲間全員が嫌う。
 
 あるよね。

 逆に言うと、女子一人に嫌われると、その仲間全員に嫌われる。場合によってはクラスの女子全員に嫌われる羽目になる。

 英語の授業中、橋本先生がbe動詞を書き忘れた清美を指導した。ちょっとしつこい指導だったので、手を挙げて助け舟を出してやったんだ。

 おかげで、清美と仲良くなれたのだが、わたしが先生をやり込めた感じになってしまって、女子の橋本嫌いに拍車をかけてしまった。ちょっと橋本先生が気の毒だ。

 お仲間の中心はユリ(要海友里)だ。そこにノンコ(野々村典子)と清美(藤本清美)が連なっていて、今回わたしが加わった。

 中心はユリのはずなのに、弁当とbe動詞の件以来、三人がわたしを立てようという雰囲気になってきている。

 教室移動などで廊下を歩いていると、他の三人も並んで歩く。

 狭い廊下を四人が横一列は物理的に無理なので、のこぎり型の変則的横一列になる。

 正直通行の邪魔になっている。「ちょっとお手洗い」とか言って列から離れようとすると「「「あたしもー」」」ということになって余計に面倒だ。

 もう一つは昼食だ。

 わたしとユリは弁当だが、ノンコと清美は食堂なのだ。ユリも食堂だったのだが家庭事情で弁当になっている。

 人間関係の基本は食事だ、飯だ。

 同じ釜の飯を食うという言葉にもある通り、けしてないがしろにしていい問題ではない。

「よし、四人で食堂いこう!」

「わたし、お弁当だし」

「同じテーブルで、ノンコと清美は学食。わたしとユリがお弁当ならいいじゃない?」

「あー、でも、四人揃ってテーブルってむつかしいよ」

「任せて」

 

 三人を引き連れて食堂へ。ノンコが言った通り席はほとんど一杯だ。

 まあ、少しくらいの魔法はいいだろう。

「ほら、そこ!」

 指さすと同時に、四人掛けのテーブルを出現させる。

「あ、こんなところに!?」

 すかさず四人で掛けてしまう。ノンコと清美は座席の背もたれにリザーブを示すハンカチを掛けて券売機へ。

 無事に仲良くランチタイムになる。

 わたしも女の子だ。いささかのズルはやっているが、こういうのは、ちょっと楽しかったりする。

「マチカは横綱だ!」

「えー、わたしってお相撲さんみたいなのお!?」

「セキトリのチャンピオンだよ!」

 お仲間には、テーブルの増設ではなく発見と思えるようにしてある。

 

 ところが、三日目には担任の三橋先生に呼び出された。



「食堂からクレームがきててなあ、弁当持参の利用は控えて欲しいって言ってきてるんだ」

「あー、ちゃんとデザートとかジュース買ってますけど」

「でも、メインの食事がなあ……食堂が言ってくるということは、他の生徒からも苦情が出てるってことだと思うよ」

 言いにくいことでも伝えるのが担任なんだろう、三橋先生も辛いんだ。

「分かりました、善処します」

 人のいい三橋先生を困らせるのは本意ではない。とりあえずの返事をして、三人で中庭に向かった。

「ユリは食堂ランチじゃダメなの?」

「あ、うん……」

 ユリの弁当には事情がある。清美は気づいているようだが、ノンコは事情を知らない感じだ。もっと大仕掛けな魔法を使えば解決できるんだが、それはしたくない。

「わたしも当分はお弁当だしね」

 そう答えるしかない。

「わたしたちがお弁当にするってのはどうかな?」

 清美らしい解決案を出す。

「えー、わたしお弁当なんて作ってらんないよ」

 ノンコが拒否反応、声の調子から、面倒くさいのが1/4、料理に自信が無いのが3/4と知れる。

「よし、そんならさ、料理教室しよう! 不肖渡辺真智香が教えてあげようじゃないの!」

「ムリムリ! わたし、お料理なんてぜったいムリ!」

 顔の前で手をハタハタさせるノンコ。

「大丈夫だって、それに、作れるようになるまで、わたしが二人のお弁当作ってきてあげるから!」

「「ほ、ほんと!?」」

 地味で孤高の女子高生をやるつもりだったのが、ちょっと方向性が変わって……ま、なんとかなるさ!

 

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...