102 / 301
102『レパートリーが増えていく』
しおりを挟む
魔法少女マヂカ
102『レパートリーが増えていく』語り手:マヂカ
秋の深まりとともに調理研のレパートリーが増えていく。
色気よりも食い気の女子高生だ、イワシ雲を見ただけでしらす丼を連想する。連想したのはスパイのくせに三日で馴染んだサムだけど、作って食べることに目の色が変わったのは友里たち三人だ。
あげ出汁豆腐(友里の提案) トン汁(清美の提案) もんじゃ焼き(ノンコの提案)
思いつくままに三日が過ぎた。
「今日はジャーマンポテトにしよう」
調理室から連日いい香りがするので、徳川先生が見に来てくださって、北海道バターの差し入れをくださった。
それで、サムが提案したのだ。
ジャーマンポテトの材料は、ジャガイモ ベーコン 玉ねぎ にんにく そしてバター。
「バターが決め手なのよ、そのバターの良いのが手に入ったんだから、ジャーマンポテトしかないわね」
玉ねぎはストックがあるので、ジャガイモ ベーコン ニンニクの三つで間に合う。
「よーし、今日は、あたしが買って来る!」
ノンコが立候補。
他のメンバーは、面談があったり委員会があったりで、揃うのを待って買いに行っては調理の時間が無くなる。
「と……これは男爵だよ」
意気揚々とノンコが買ってきたものを開けると、ベーコンとにんにくは問題なかったが、肝心のジャガイモが男爵なのだ。
「え、ジャガイモだよ?」
「ジャガイモにはね、メークインと男爵があって、男爵は過熱すると、直ぐに崩れるのよ」
「「「??」」」
三人娘は分かっていない。
「うん、チンしてから炒めるんだけど、炒めるときにマッシュポテトになってしまう」
「脂ぎったポテトサラダになっちゃうね」
「し、知らなかったああああ!」
「大丈夫よ、あたしたちも知らなかったんだから(^_^;)」
友里と清美が慰める。
「じゃ、じゃがバターにしよう!」
「じゃがバターは男爵だもんね!」
「そうなんだ!」
ノンコの笑顔が戻った。
「でも、真智香もサムも詳しいねえ」
「「うんうん」」
アハハハ、何百年も生きてる魔法少女だとは言いにくい……。
ジャーマンポテトも簡単だけどじゃがバターは、いっそう簡単!
洗って、包丁で十字に切込みを入れ、ラップに包んだやつを五分間のチン!
あとは、切りこんだところにバターを乗っけて出来上がり!
調理研では食べきれない量なので、家庭科準備室の徳川先生や顧問の安倍先生におすそ分け。
ああ、有意義な部活だったあ!
四人揃って校門を出ると、ここのところ趣を増している夕陽が心地い。
シャワシャワ シャワシャワ
足元で落ち葉たちが陽気な音を立てる。
「今度は、なに作ろっかな~(o^―^o)」
子どもっぽく落ち葉を踏みしだいていたノンコが振り返る。
「そうねえ、簡単に作れるってことが肝だと思う」
「うんうん、花嫁修業には、ちょっと早いしね」
「夜食にでも作れるようなのがいい」
サムが誘導する。
わたし的には松茸なのだが、戦前、湧くように松茸が採れた時代ではないんだ。
「真智香、松茸食べたいと思ったでしょ?」
う、読まれてる。
「いや、さすがにそれは……」
「よし、簡単に食べられる松茸的なものを考えてみよう」
「「「うう~楽しみいい!」」」
女子高生らしく、キャピキャピとしてみる。
なんとも楽しい。
「「ん?」」
サムと同時に気が付いた。
日暮里の駅の方から馬の蹄の音が聞こえてくる。
パカラパカラ パカラパカラ パカラパカラ パカラパカラ
しだいに近づいてくるが、気が付いているのはわたしとサムだけだ。
友里たちは気づいていない、いや、いっしょに下校している生徒や通行人の誰も意識していない。
角を曲がって、そいつは現れた。
それは、駅前で銅像になっている太田道灌であった!
102『レパートリーが増えていく』語り手:マヂカ
秋の深まりとともに調理研のレパートリーが増えていく。
色気よりも食い気の女子高生だ、イワシ雲を見ただけでしらす丼を連想する。連想したのはスパイのくせに三日で馴染んだサムだけど、作って食べることに目の色が変わったのは友里たち三人だ。
あげ出汁豆腐(友里の提案) トン汁(清美の提案) もんじゃ焼き(ノンコの提案)
思いつくままに三日が過ぎた。
「今日はジャーマンポテトにしよう」
調理室から連日いい香りがするので、徳川先生が見に来てくださって、北海道バターの差し入れをくださった。
それで、サムが提案したのだ。
ジャーマンポテトの材料は、ジャガイモ ベーコン 玉ねぎ にんにく そしてバター。
「バターが決め手なのよ、そのバターの良いのが手に入ったんだから、ジャーマンポテトしかないわね」
玉ねぎはストックがあるので、ジャガイモ ベーコン ニンニクの三つで間に合う。
「よーし、今日は、あたしが買って来る!」
ノンコが立候補。
他のメンバーは、面談があったり委員会があったりで、揃うのを待って買いに行っては調理の時間が無くなる。
「と……これは男爵だよ」
意気揚々とノンコが買ってきたものを開けると、ベーコンとにんにくは問題なかったが、肝心のジャガイモが男爵なのだ。
「え、ジャガイモだよ?」
「ジャガイモにはね、メークインと男爵があって、男爵は過熱すると、直ぐに崩れるのよ」
「「「??」」」
三人娘は分かっていない。
「うん、チンしてから炒めるんだけど、炒めるときにマッシュポテトになってしまう」
「脂ぎったポテトサラダになっちゃうね」
「し、知らなかったああああ!」
「大丈夫よ、あたしたちも知らなかったんだから(^_^;)」
友里と清美が慰める。
「じゃ、じゃがバターにしよう!」
「じゃがバターは男爵だもんね!」
「そうなんだ!」
ノンコの笑顔が戻った。
「でも、真智香もサムも詳しいねえ」
「「うんうん」」
アハハハ、何百年も生きてる魔法少女だとは言いにくい……。
ジャーマンポテトも簡単だけどじゃがバターは、いっそう簡単!
洗って、包丁で十字に切込みを入れ、ラップに包んだやつを五分間のチン!
あとは、切りこんだところにバターを乗っけて出来上がり!
調理研では食べきれない量なので、家庭科準備室の徳川先生や顧問の安倍先生におすそ分け。
ああ、有意義な部活だったあ!
四人揃って校門を出ると、ここのところ趣を増している夕陽が心地い。
シャワシャワ シャワシャワ
足元で落ち葉たちが陽気な音を立てる。
「今度は、なに作ろっかな~(o^―^o)」
子どもっぽく落ち葉を踏みしだいていたノンコが振り返る。
「そうねえ、簡単に作れるってことが肝だと思う」
「うんうん、花嫁修業には、ちょっと早いしね」
「夜食にでも作れるようなのがいい」
サムが誘導する。
わたし的には松茸なのだが、戦前、湧くように松茸が採れた時代ではないんだ。
「真智香、松茸食べたいと思ったでしょ?」
う、読まれてる。
「いや、さすがにそれは……」
「よし、簡単に食べられる松茸的なものを考えてみよう」
「「「うう~楽しみいい!」」」
女子高生らしく、キャピキャピとしてみる。
なんとも楽しい。
「「ん?」」
サムと同時に気が付いた。
日暮里の駅の方から馬の蹄の音が聞こえてくる。
パカラパカラ パカラパカラ パカラパカラ パカラパカラ
しだいに近づいてくるが、気が付いているのはわたしとサムだけだ。
友里たちは気づいていない、いや、いっしょに下校している生徒や通行人の誰も意識していない。
角を曲がって、そいつは現れた。
それは、駅前で銅像になっている太田道灌であった!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる