魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
154 / 301

154『欄干の陰』

しおりを挟む

魔法少女マヂカ

154『欄干の陰』語り手:マヂカ     

 

 
 お世話になりました( ;∀;)!

 
 峠のお地蔵さんの横で、千切れそうなくらい尻尾を振ってシロが見送ってくれる。

 友里と二人で手を振って応える。

 それが嬉しくて、一層激しく尻尾を振る。

 
 プツン

 あ!?

 
 ほんとうに尻尾が千切れて、春日部の空に舞い上がった。

 ワン!

 一声吠えると、ツンが駆けだし、ピョンと飛び上がったかと思うと尻尾を咥えて、シロに返してやる。

 パチパチパチ

「さすが、西郷隆盛の猟犬ね(^▽^)/」

 友里が微笑ましそうに拍手する。もう一度手を振ると、お地蔵さんが「エヘヘヘ」と頭を掻いた。

「お地蔵さんかと思ったら、どうやら飼い主だな」

 飼い主の正体を見極めたい気もしたが、ちょうど雲間から現れた太陽が逆光になってシルエットにしてしまったので、神の意思でもあろうかと歩みを北にとった。

 赤白龍と銀龍を退治したせいか、それからの道中は穏やかだ。

 
 道は川に沿っていて、架かった橋の向こうに西洋のお城のような建物が見えてきた。

 
 もしもし……もしもし……

 
 かそけき声に振り返ると、欄干の橋柱の下に居た。

「あ、また犬だ」

 欄干の色に溶け込みそうになって大人しい犬がお辞儀をしている。

『御足を止めて申し訳ございません、わたくしは、春日部でお世話になりましたシロの母親でボ○シチと申します』

「いや、世話になったのはわたし達の方かもしれないんだ。シロの働きが無かったら赤白龍は倒せなかったよ」

『ご謙遜を、魔法少女さまのお力が無ければ、あの子の力ではどうにもなりませんでした』

「そのお母さんが、なにか御用なのだろうか?」

『いずれお気づきになるかもしれませんが、怨敵の首魁は赤白の鉄塔でございます』

「あ、それなら、アマチュア無線のアンテナだったわよ。シロが気づいてくれて、なんとかやっつけたわ」

 まるで自分がやっつけたように言う友里だが、まあ、誇らしく思っているのだから、これでもいい。

『あれは、ゲームで言えば中ボス程度の霊魔。首魁、ラスボスは東京タワーでございます』

「やはりな」

「え、マヂカは分かってたの?」

「確信は無かったがな、東京タワーはスカイツリーが出来てからは予備電波塔に甘んじていたからな」

『そうなのです、マヂカさんが復活されて間もないころに霊魔の幼体を退治されたのもスカイツリーでございました。霊魔どもは、より力のあるものを依り代といたします』

「そうだったな……これは、難儀なことになるかもしれないね」

『東京タワーは、現役のころは、寄って来る霊魔どもを制する力を持っておりましたが。が、今は、逆に憑りつかれているようなありさまでございます』

「なにが憑りついている?」

『それは……』

 ボ○シチはもどかしそうに口をパクパクさせるだけで、言葉にすることができない。

「そうか、鬼籍に入っても口にできるのはそこまでなのだな」

『申し訳ございません、お察しくださいませ』

「いや、おかげで確信が持てた。本体が明らかになっただけでも大助かりだ」

『あと、もう一つ』

「なんだ?」

『西郷さんがツンをおつかわしになったのには、もう一つの訳がございます』

 ワン?

『西郷さんのお名前、実は隆盛ではないのです。西郷さんは申されませんが、西郷さんのお名前を明らかにすることも……』

「役割の一つなのだね……」

『はい、全てを解き明かした時に、神田明神さまの問題も、おのずと……』

「そこまででいいよ、ここで力を使い切っては、シロに会いに行く力が残らなくなってしまうだろ」

『恐れ入ります、それでは、これにて……』

 ボ○ルシチは、いそいそと春日部への道を駆けだした、何度も振り返っては頭を下げながら。

 

 わたしたちは、橋を渡ってシロを目指した。

 橋を渡ったところに道標があり、『これより壬生(みぶ)』と書いてあった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...