174 / 301
174『原宿旧駅舎前・2』
しおりを挟む魔法少女マヂカ
174『原宿旧駅舎前・2』語り手:マヂカ
魔法少女は自分の力だけでは異世界にも行けないし、時間を遡ることもできない。
先ごろの異世界の日光に行ったのは神田明神の依頼だったし、T型フォードに乗って異世界に出撃したのは第七艦隊のレーガン司令の魔法があったからだし、山陰の黄泉平坂に出撃したのは特務師団の正規の任務だったからだ。
ただ、時間を遡って昔の様子を探ることはできる。
イメージとしてはヘッドセットを被らないVRのようなもので、行った先では小石一つ動かすことは出来ない。
新原宿駅の駅舎の前で正魔法少女三人(マヂカ、ブリンダ、サム)と見習い魔法少女三人(友里、ノンコ、清美)の六人で飛んだ。
解体の始まった旧駅舎はフエンスで囲まれて見ることができないからだ。
工事が始まっていない三月に戻れば、原宿名物の旧駅舎が見られるはずなのだ。
六人手を繋いで輪になって六周、「えい!」と掛け声賭けて手を掲げると浮遊感があって、周囲の景色が歪み始める。時間を遡り始めた証拠だ。
途中、バランスが取れなくなり六人の輪がグニャグニャになる。正規の三人はともかく、去年までは普通の女子高生であった三人は慣れていない。
いわばベテランと初心者が混じってスカイダイビングをやったのと同じで、気を緩めると六人がバラバラになってしまう。
あっと思ったら両手が虚しくなり、両隣に居た友里と清美が飛ばされてしまった。
まあ、たかが半年のワープ。少々離れても目の届くところに着地するだろうと思いなおす。
ビュン!
時の流れを断ち切って着地する。
おっとっと……。
タタラを踏んで崩れそうな体勢を立て直す。
顔を上げると、ついさっきまで工事用フェンスで囲まれていた旧駅舎が聳えている。
少々ズレて、旧駅舎の真ん前に出てしまったのだ。
そうだ、他の五人は?
振り返るとノンコがひっくり返っている。
「大丈夫か、ノンコ?」
手を差し伸べると、目を回しながらも「あ、ごめん……」と手を伸ばしてくる。
「うっわー、なんか、ピカピカだね!」
駅舎に気が付いて目を輝かせるノンコ。
ん、ちょっとピカピカすぎないか? 名物駅舎とはいえ、大正時代建物だぞ、こんなにペンキ塗りたての臭いがするか?
口を半開きにして駅舎に見惚れるノンコは放っておいて、ゆっくりと首を回して周囲に目を配る。
え……どう見ても、令和二年の原宿ではない。
ワープすると、まず近くの景色が明らかになり、続いて周囲の景色、遠くの景色、それから道行く人々の姿が見えてくる。
竹下通りの賑わいなど、まるっきりなくて、神宮の森以外は、どこかの田舎の風情だ。
通行人の服装も、半分以上が和装で時代がかっている。
それに、踏みしめる地面の感触が、ジャリジャリとリアルで、未舗装の道路の感触。
これは、映像なんかじゃなくて……リアルだ!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる