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285『八丈島沖空中戦・1』
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魔法少女マヂカ
285『八丈島沖空中戦・1』語り手:マヂカ
北斗(特務師団高機動車)は欠員のまま大塚台公園の基地を飛び立った。
さすがに、位相変換もせずに飛びたったわけではないが、機関士(友里)、機関助手(ノンコ)、砲雷手(清美)の三人を欠いていては実力を発揮できない。
ブシューー!
「こら、ベント早すぎ!」
「手順に間違いはない! きちんとテイクオフの5秒後だ!」
安倍隊長の注意に文句で返すブリンダ。
「位相閉鎖が完全じゃない、漏れた蒸気がリアル空蝉橋にかかってる!」
「下はJRだから、誤魔化せるだろが」
「今どき都内でSLなんか走らん! サム、パルス砲試射」
「アイ、マム!」
ズビーーーン!!!
「フルパワーで打ってどうする!」
「ソーリー、仕様が第七艦隊とちがうもんで」
ズゥイーーーーーン
「ブースト、第二戦速、進路八丈島。ブースト閉鎖、赤黒なし」
「早すぎ、失速するぞ!」
ガクン
「ほら、頭が下がった、上昇角20度、ブーストフタジュウ!」
「あ、ベント閉まったまま!」
「速度もどーせ! 進路そのまま、ヨーソロー!」
「ちょ、速すぎ!」
「ヨーソロは力まないで言って! 今のヨーソロは第二戦速の勢いだ!」
「ええ、もう、とっとと八丈島に向かええええ!」
『北斗はバージョンアップしとるんだ、オートのボタン押すだけで普通に飛ぶ。おまえらは、計器見て復唱するだけでいい!』
モニターの司令が呆れている。
なんとか十分遅れで八丈島上空に着いて下降すると、雲の切れ間にキラリと光るものがある。経験から、剣のようなものが光を反射していると分かる。
敵をあぶりだすために主砲の発射を具申しようと思ったが思いとどまる。敵を視認できれば、こちらの居場所を暴露する発砲はしなくて済むからだ。
「孫悟嬢!」
安倍隊長が、ちょっと対抗心のこもった声を上げる。
我々同様にファントムを敵とする魔法少女の対抗心でからではない。
トキワ荘で初めて会った孫悟嬢が自分よりも美しいのが気に入らないのだ。
特務師団の魔法少女は、いずれもお約束通りの美少女ばかりだが、安倍隊長は、それに嫉妬することは無い。
自分自身、かつてはアキバのメイドクィーン、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世の看板を張っていたので、メイドのメイン属性である『萌』には免疫がある。いくら美少女でも、それは所詮女としては未熟未完成の『萌』に過ぎない。普遍的成人女性美という点では圧倒的に自分にアドバンテージがあるという自負があるのだ。
それが、トキワ荘で間近に見た孫悟嬢は中国四千年の歴史を体現したような美しさとだと脳みそとほうれい線の皴に刻み込んでしまったのだ。
正直、そこまでの歳ではないと思うのだが、日中国交回復以来中華礼賛に染まってしまった教育現場に身を置いているせいか、中国の留学生や若者に大学でも就職戦線でも水をあけられた世代のトラウマか、はたまた、憂さ晴らしで、ついポチってしまうネット通販の商品のことごとくが中華製であることに脅威を感じてなおポチらずにはおられない心の弱さの反映か、そのいずれもが自己嫌悪の裏返しであるとも気づかずに、中華美女を恨みかつ恐れている。
「あれは、如意棒だ!」
大連で見慣れているわたしとブリンダには分かる。
筋斗雲を目くらましに使って、敵を翻弄し、如意棒で敵に立ち向かっているのだ。
主砲を発射するまでもなく、敵は、孫悟嬢の視線の先に浮かんでいるはずだ。
「面舵フタジュウ! 上昇角ヒトジュウ! 右舷(みぎげん)砲雷戦ヨーイ!」
「面舵フタジュウ! 上昇角ヒトジュウ!」「右舷(みぎげん)砲雷戦ヨーイ!」
安倍隊長の指令に、ブリンダとサムの復唱が続く。
さすがに、戦闘を前にしての指令と操作にブレは無い。
孫悟嬢の斜め前方に躍り出た我々の目前に現れたのは、北洋艦隊の主力であった定遠と鎮遠であった。
「主砲! パルス砲! 斉射! テーーーー!」
ズビーーーン!!
惜しくも二艦の鼻先を掠めるに終わった初撃だったが、孫悟嬢を回避させるのには十分であった。
……八丈島沖空中戦が始まった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ ロシアの魔法少女
孫悟嬢 中国の魔法少女
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
松本 高坂家の運転手
新畑 インバネスの男
箕作健人 請願巡査
ファントム 時空を超えたお尋ね者
285『八丈島沖空中戦・1』語り手:マヂカ
北斗(特務師団高機動車)は欠員のまま大塚台公園の基地を飛び立った。
さすがに、位相変換もせずに飛びたったわけではないが、機関士(友里)、機関助手(ノンコ)、砲雷手(清美)の三人を欠いていては実力を発揮できない。
ブシューー!
「こら、ベント早すぎ!」
「手順に間違いはない! きちんとテイクオフの5秒後だ!」
安倍隊長の注意に文句で返すブリンダ。
「位相閉鎖が完全じゃない、漏れた蒸気がリアル空蝉橋にかかってる!」
「下はJRだから、誤魔化せるだろが」
「今どき都内でSLなんか走らん! サム、パルス砲試射」
「アイ、マム!」
ズビーーーン!!!
「フルパワーで打ってどうする!」
「ソーリー、仕様が第七艦隊とちがうもんで」
ズゥイーーーーーン
「ブースト、第二戦速、進路八丈島。ブースト閉鎖、赤黒なし」
「早すぎ、失速するぞ!」
ガクン
「ほら、頭が下がった、上昇角20度、ブーストフタジュウ!」
「あ、ベント閉まったまま!」
「速度もどーせ! 進路そのまま、ヨーソロー!」
「ちょ、速すぎ!」
「ヨーソロは力まないで言って! 今のヨーソロは第二戦速の勢いだ!」
「ええ、もう、とっとと八丈島に向かええええ!」
『北斗はバージョンアップしとるんだ、オートのボタン押すだけで普通に飛ぶ。おまえらは、計器見て復唱するだけでいい!』
モニターの司令が呆れている。
なんとか十分遅れで八丈島上空に着いて下降すると、雲の切れ間にキラリと光るものがある。経験から、剣のようなものが光を反射していると分かる。
敵をあぶりだすために主砲の発射を具申しようと思ったが思いとどまる。敵を視認できれば、こちらの居場所を暴露する発砲はしなくて済むからだ。
「孫悟嬢!」
安倍隊長が、ちょっと対抗心のこもった声を上げる。
我々同様にファントムを敵とする魔法少女の対抗心でからではない。
トキワ荘で初めて会った孫悟嬢が自分よりも美しいのが気に入らないのだ。
特務師団の魔法少女は、いずれもお約束通りの美少女ばかりだが、安倍隊長は、それに嫉妬することは無い。
自分自身、かつてはアキバのメイドクィーン、バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世の看板を張っていたので、メイドのメイン属性である『萌』には免疫がある。いくら美少女でも、それは所詮女としては未熟未完成の『萌』に過ぎない。普遍的成人女性美という点では圧倒的に自分にアドバンテージがあるという自負があるのだ。
それが、トキワ荘で間近に見た孫悟嬢は中国四千年の歴史を体現したような美しさとだと脳みそとほうれい線の皴に刻み込んでしまったのだ。
正直、そこまでの歳ではないと思うのだが、日中国交回復以来中華礼賛に染まってしまった教育現場に身を置いているせいか、中国の留学生や若者に大学でも就職戦線でも水をあけられた世代のトラウマか、はたまた、憂さ晴らしで、ついポチってしまうネット通販の商品のことごとくが中華製であることに脅威を感じてなおポチらずにはおられない心の弱さの反映か、そのいずれもが自己嫌悪の裏返しであるとも気づかずに、中華美女を恨みかつ恐れている。
「あれは、如意棒だ!」
大連で見慣れているわたしとブリンダには分かる。
筋斗雲を目くらましに使って、敵を翻弄し、如意棒で敵に立ち向かっているのだ。
主砲を発射するまでもなく、敵は、孫悟嬢の視線の先に浮かんでいるはずだ。
「面舵フタジュウ! 上昇角ヒトジュウ! 右舷(みぎげん)砲雷戦ヨーイ!」
「面舵フタジュウ! 上昇角ヒトジュウ!」「右舷(みぎげん)砲雷戦ヨーイ!」
安倍隊長の指令に、ブリンダとサムの復唱が続く。
さすがに、戦闘を前にしての指令と操作にブレは無い。
孫悟嬢の斜め前方に躍り出た我々の目前に現れたのは、北洋艦隊の主力であった定遠と鎮遠であった。
「主砲! パルス砲! 斉射! テーーーー!」
ズビーーーン!!
惜しくも二艦の鼻先を掠めるに終わった初撃だったが、孫悟嬢を回避させるのには十分であった。
……八丈島沖空中戦が始まった。
※ 主な登場人物
渡辺真智香(マヂカ) 魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
野々村典子(ノンコ) 魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美 日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
来栖種次 陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス) 魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン 魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル ブリンダの使い魔
サム(サマンサ) 霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ ロシアの魔法少女
孫悟嬢 中国の魔法少女
※ この章の登場人物
高坂霧子 原宿にある高坂侯爵家の娘
春日 高坂家のメイド長
田中 高坂家の執事長
虎沢クマ 霧子お付きのメイド
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ファントム 時空を超えたお尋ね者
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