26 / 30
026『始まりの村風の広場にて』
しおりを挟む
勇者乙の天路歴程
026『始まりの村風の広場にて』
※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者
画像生成AIに―― 始まりの村 国籍不明 ――と打ち込んだら出てきそうな村だ。
村の入り口には焼き肉屋の前にありそうな道祖神風の石像があって、ビギナーの冒険者に「覚悟はいいか」と脅している。
家々の屋根は切妻か入母屋の和風だが、棟や軒端が微妙に反っていて、軒端にランタンが吊ってあるところなど中国風。いくつかの家は白壁にオレンジ色の瓦が載って南フランスを思わせるが、あちこちに立っている幟やランタンの文字は漢字風やらチベット文字風でFFⅩの門前町と見紛う。
村の中央あたりには教会の尖塔と五重塔が並んでいるが、よく見ると、尖塔の先には九輪と水煙、五重塔には十字架とチグハグ。
道祖神風の脇を通ると、なぜか穴が掘ってある。
「落とし穴かなあ?」
ヒコナが首をかしげると、少佐のビクニが向こうの広場の方に目を向ける。
「なにか揉めているようだ」
「え、なんかお祭り!?」
初めての村でうかつに動くのは憚られ、広場の入り口で様子を見る。
『やっぱり、鳥居が無いと締まりがねえ』
『だから、村の入り口に』
『あそこには、もう道祖神があるべ』
『入口なら、広場の方がよかんべ』
『村の入り口なら、もう穴掘ってあるべ』
『穴なんか埋めちまえばいいべ』
『したども、五人がかりで丸二日かけて掘った穴だぞ』
『先走って掘っちゃダメだべや』
『したども……』
どうやら、鳥居をどこに立てようかと相談している様子だ。十人余りの男たちが数本の角材やら丸材、おそらくは組み立て前の鳥居を前にして深刻そうに話をしている。真ん中で村長風が腕組みして困っている。
「あまり見ない方がいい、我々はよそ者だ。それより情報を収集しよう」
ビクニが指差して、向こうのギルド風の二階建てを目指す。
「あ、だんご屋!」
「あとだ」
「テイクアウトすればいいだろぉ!」
ナース服の腕をブンブン振って抗議するヒコナ。赤十字の腕章がグルグル回って可愛い。
「食い意地ばっかりの奴は置いていくぞ」
「じゃ、あっちのクレープ屋! タコ焼き屋でもいい!」
「引っ張るな」
ペシ
手を払いのけるビクニ。少佐になると容赦がない。
「ム~、可愛くないよ、お宮に連れてきてたJKの方が可愛かった」
「アハハ、同一人物なんですよ」
「え、ほんとか( ゚Д゚)!?」
「フフ、ガキナースに見透かされるほど安くは無い。いくぞ」
ビクニが言い切ると、男たちの中から村長風が駆け寄ってきた。
「あの、もし、あなた方は薩摩守(さつまのかみ)さまの御先駆けの方々でしょうか!?」
え?
我々を見る村長風の目は困惑と畏れに満ちていた……。
☆彡 主な登場人物
中村 一郎 71歳の老教師 天路歴程の勇者
高御産巣日神 タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
八百比丘尼 タカムスビノカミに身を寄せている半妖
原田 光子 中村の教え子で、定年前の校長
末吉 大輔 二代目学食のオヤジ
静岡 あやね なんとか仮進級した女生徒
ヤガミヒメ 大国主の最初の妻 白兎のボス
ヒコナ ヤガミヒメの新米侍女
因幡の白兎課長代理 あやしいウサギ
026『始まりの村風の広場にて』
※:勇者レベル4・一歩踏み出した勇者
画像生成AIに―― 始まりの村 国籍不明 ――と打ち込んだら出てきそうな村だ。
村の入り口には焼き肉屋の前にありそうな道祖神風の石像があって、ビギナーの冒険者に「覚悟はいいか」と脅している。
家々の屋根は切妻か入母屋の和風だが、棟や軒端が微妙に反っていて、軒端にランタンが吊ってあるところなど中国風。いくつかの家は白壁にオレンジ色の瓦が載って南フランスを思わせるが、あちこちに立っている幟やランタンの文字は漢字風やらチベット文字風でFFⅩの門前町と見紛う。
村の中央あたりには教会の尖塔と五重塔が並んでいるが、よく見ると、尖塔の先には九輪と水煙、五重塔には十字架とチグハグ。
道祖神風の脇を通ると、なぜか穴が掘ってある。
「落とし穴かなあ?」
ヒコナが首をかしげると、少佐のビクニが向こうの広場の方に目を向ける。
「なにか揉めているようだ」
「え、なんかお祭り!?」
初めての村でうかつに動くのは憚られ、広場の入り口で様子を見る。
『やっぱり、鳥居が無いと締まりがねえ』
『だから、村の入り口に』
『あそこには、もう道祖神があるべ』
『入口なら、広場の方がよかんべ』
『村の入り口なら、もう穴掘ってあるべ』
『穴なんか埋めちまえばいいべ』
『したども、五人がかりで丸二日かけて掘った穴だぞ』
『先走って掘っちゃダメだべや』
『したども……』
どうやら、鳥居をどこに立てようかと相談している様子だ。十人余りの男たちが数本の角材やら丸材、おそらくは組み立て前の鳥居を前にして深刻そうに話をしている。真ん中で村長風が腕組みして困っている。
「あまり見ない方がいい、我々はよそ者だ。それより情報を収集しよう」
ビクニが指差して、向こうのギルド風の二階建てを目指す。
「あ、だんご屋!」
「あとだ」
「テイクアウトすればいいだろぉ!」
ナース服の腕をブンブン振って抗議するヒコナ。赤十字の腕章がグルグル回って可愛い。
「食い意地ばっかりの奴は置いていくぞ」
「じゃ、あっちのクレープ屋! タコ焼き屋でもいい!」
「引っ張るな」
ペシ
手を払いのけるビクニ。少佐になると容赦がない。
「ム~、可愛くないよ、お宮に連れてきてたJKの方が可愛かった」
「アハハ、同一人物なんですよ」
「え、ほんとか( ゚Д゚)!?」
「フフ、ガキナースに見透かされるほど安くは無い。いくぞ」
ビクニが言い切ると、男たちの中から村長風が駆け寄ってきた。
「あの、もし、あなた方は薩摩守(さつまのかみ)さまの御先駆けの方々でしょうか!?」
え?
我々を見る村長風の目は困惑と畏れに満ちていた……。
☆彡 主な登場人物
中村 一郎 71歳の老教師 天路歴程の勇者
高御産巣日神 タカムスビノカミ いろいろやり残しのある神さま
八百比丘尼 タカムスビノカミに身を寄せている半妖
原田 光子 中村の教え子で、定年前の校長
末吉 大輔 二代目学食のオヤジ
静岡 あやね なんとか仮進級した女生徒
ヤガミヒメ 大国主の最初の妻 白兎のボス
ヒコナ ヤガミヒメの新米侍女
因幡の白兎課長代理 あやしいウサギ
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる