銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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352『宮中豊明殿・2』

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銀河太平記 

352『宮中豊明殿・2』 扶桑道次(ツギ君)




「岸波総理は北京に出張中で、道次君にはよろしくとのことでした(^_^;)」


 陛下が、少し残念そうにおっしゃる。

 衆参議長と最高裁長官が来ているのに総理が来ていないのはおかしい。非公式な懇親会だから職務的な義務はないんだろうけど、陛下が主宰されてるんだ……おっと、顔に出ちゃいけないんで、代理で来たっていう副総理の挨拶を受ける。

 それから、その副総理の司会で『日扶友好の集い』が始まった。

「それでは、将軍閣下の弟君で、火星では辺境伯の異名で通っておられる扶桑道興玄武守さまからご挨拶を……」

 父上が前に出てスピーチしたんだけど、少しも頭に入らない。

 だって、その次は、僕が一人で喋らなくちゃいけないからね(;'∀'#)。

「……ということで、この度、わたしの息子道次が扶桑将軍の世子に指名されました。道次、みなさんにご挨拶」

「はい」

 きれいに返事はできたけど、膝はガクガク指先はブルブル、こういうのをガクブルっていうんだろうなあ……と思ったら、ガクブルの顔文字——((((;゜Д゜))))——がちらついて噴き出しそうになって、ちょっと落ち着いた。

「……ということで、この度、この扶桑道次が第五代扶桑将軍の世子に指名されました。なにとぞよろしくお願いいたします」

 父上と同じような締めくくり。

 終わったぁ!

 そう思ったら、盛大に「ハァ(*´Д`)」とため息がマイクに拾われてしまって、みんなに笑われてしまう。

 アハハハハハ!

 ひときわ目立つ笑い声に目が行くと、メチャクチャかわいい女の子が——しまった!——という顔をしていて、瞬間見つめ合ってしまった!

 それから、何十人という人に挨拶。

「火星にいる時にはお目にかかるチャンスがありませんでしたが……」

 ウーロン茶を取りに行っていっしょになったのが、さっき挨拶したばかりの王殿下。

「あ、そうだ、ご挨拶しながら見覚えがあると思っていたんです。赤間が関の戦争遺跡を発見された森之宮王殿下ですね!」

「そうですが、よく覚えておいてくださいました(^_^;)」

「はい、写真や動画で。いちどお会いしたいと思っていたのですがマッパ病で……」

「そうですね、わたしも前後して火星を離れてしまいましたから」

「いろいろ冒険をされたと伺っています」

「ハハ、失敗ばかりですが。よろしければ、世田谷の豪徳寺に屋敷がありますので、またいらして下さい」

「はい、機会がありましたらぜひ!」

「そうだ、人を紹介しておきます」

 王殿下は、ウーロン茶を置いて二人の女の人を招いた。

「こちらが漢明でお世話になっていたころから面倒を見てくれている胡盛媛さんです。こう見えても漢明陸軍の中尉さんなんです」

「胡盛媛です(^▽^)」

「日ごろは、フーちゃんと呼ばれています」

「フーちゃん?」

「はい、わたしの国では苗字の胡はフーと発音しますので」

「慣れたら、そう呼んであげてください。そして、こちらがツナカンさん。シマイルカンパニーの社員だったんですが、胡中尉ともども向こうでお世話になって、いまは、二人とも世田谷の屋敷に居てもらってます」

「道次です。身内や友だちからは、ツギとかツギ君とか呼ばれてます」

「お、なんか可愛いっスね! いや、可愛いですねぇ(^_^;)」

「アハハ、普段の言葉でいいですよ」

「いやあ、ガラッパチなもんで、申しわけないっス」

「自分も、玄武じゃタメ口っぽいです。気楽にお話できそうで嬉しいです」

 二人とも美人と可愛いの両属性なんだけど、少しおねえさん。個性が多重構造な感じでおもしろそう。

「それじゃあ、あちらの方々にも……」

 次に紹介されたのは、車いすのお爺さん。

「二之宮親王殿下、陛下の大叔父にあたられる方です。殿下! さきほどご挨拶されました扶桑世子の道次くんです!」

「おお、これはこれはぁ、茂仁君も、よい跡継ぎを……」

「いえ、うちじゃなくてぇ! 火星の扶桑将軍のぉ!」

「おお、火星から養子をかぁ、めでたいめでたい!」

「いえ、自分はぁ!」

「ちょっぉ……おとう……行きたいのじゃがぁ……」

「おとう? 父のことですか?」

「あ、ご不浄、おトイレのことですよ」

「あ、じゃあ、自分がお連れします!」

 ちょうど茂仁殿下は陛下に声を掛けられたところなので、自分が立候補。吉良儀典長の指導で、宮殿の内部は知っているからね。

「……ええと、こっちですね」

「すまんのぉ、森之宮ぁ」

「いえ、自分はぁ……(^_^;)」

 最短距離で『おとう』に着いた時、茂人殿下が追いついてこられ「ああ、申し訳ない!」と交代した。


 豊明殿に戻ろうと歩いていると、中庭で子犬と追いかけっこをしている女の子……あ! さっきのひときわ目立つ笑い声の子だ!


 アハハハ、ペス、こっちこっちぃ!


 そうか、子犬はペスと云うんだ。丸っこくて可愛くて、女の子の笑い声も陽気で、玄武で遊んでいた友だちたちを思い出す。

「かわいい子犬だね」

 声を掛けると、犬も女の子も走ったままこっちを向く。

「おーーい!」「ワンワン!」

 犬と一緒に笑顔を返してくれる。それでも走ったままなので「犬も君も元気いっぱいだなあ!」と続けて声をかける。

 グッと大地を踏みしめて腕組みの女の子! 子犬も大きく脚を広げ、シッポと耳をピンと上げる!

「おう、んなとこで見てねえで、おめえも走れ!」

 ウ……

 なんか見た目とぜんぜん違う……

 

☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)       第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 
扶桑 徳子             道隆の御台所
扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ)     書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)     銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       元輸送船の船長  大統領秘書官
朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山       西之島の火山
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟


 
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