銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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354『兵二に膝カックンされちまった!』

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銀河太平記 

354『兵二に膝カックンされちまった!』 ハナ




 勤労奉仕から何度目かの皇居だけどよ、やっぱり慣れねえ(^_^;)。

 慣れねえけど、嫌いってわけじゃねえ。

 陛下はいい人だしよ、ペスはかわいいしよ、職員のやつらもカチカチに取り澄まして作業機械みたいだと思ってたけど、いいやつらだ。勤労奉仕でも親切だったし、ペスを助けて堀に落ちかけた時もみんな心配して駆けまわってくれてよ。あの心意気は島のやつらに似てると思ったぜ。ガサツとカチカチの違いはあるけど、根っこはいっしょだと思ったぜ。

 でよ、ちっとは皇居の風習にも慣れなきゃって思った。ハナのガサツを認めてくれてんだから、出来る範囲でカチカチにも合わせようってな。

 で、お辞儀の仕方を特訓したぜ!

 お辞儀は二種類。

 スカートをつまんで片足ひくカーテシーとかいうやつ。もう一つはヘソのとこに両手を持ってきてお辞儀するやつ。島の銀行でニッパチとかがやってたのと同じお辞儀。神社で巫女やってからよ、思ったほど苦労しなくて憶えられたぜ。
 
 ペスと遊んでたら、ツギの野郎が来やがってよ二人と一匹で遊んでたら時間忘れちまって、茂仁殿下に呼びもどされて、叱られるのかと思ったら、みんなの拍手。二割くれえは——ウロチョロすんな!——の意味がこもってやがる。

 で、ごめんなさいを籠めてヘソお辞儀かましたわけさ。ツギの野郎はハナのギャップにビックリしてやがったけど、めんどくせえんで説明なんかしねえ。腹減ってたし、バイキングのアレコレを取りにいったさ。ツギの野郎もゲストのやつらに挨拶にいきやがったしよ。

 ……どうも、お岩食堂のよりも薄味そうだなあと思いながらトングを構えて、ローストビーフに狙いを定める。

 アヘ(゚∀。)

 突然に膝カックンをかまされて、変な声が出ちまう。コノヤローと振り返ってビックリした!

「え……兵二じゃねえか!」

「久しぶりだな、ハナ」

「おめえ、仁義も切らずに居なくなりやがって!」

「声大きい」

「ウグ」

 口にパンを突っ込まれっちまう。

「すまん、元々は扶桑の人間でな、島でいろいろ勉強させてもらってたんだ」

 島は、ひとの過去を詮索しねえ。落盤事故で身元不明の犠牲者が出た時には見直そうって雰囲気もあったんだけど、やっぱ、元に戻っちまって、兵二のこともたまに居るフェードアウト人間の一人と思ってたぜ。

「で、なんで、おめえが、ここに居るんだ?」

「道次さまの護衛だよ」

「扶桑のSPだったのかよ!?」

「書院番て言ってな、将軍様の秘書みたいなことやりながら、小姓って役の若い奴らの面倒見てる」

「そうだったのかぁ……」

「しみじみすんなよ、ハナらしくないぞ」

「お、おう……でもよ、盛大な歓迎会で、ちょっとビックリ。カチカチかと思ってお辞儀の練習とかしてよ」

「アハハ、あれにはビックリした。それで……」

「膝カックンかよ」

「普通に声かけたらもったいないと思ってな」

「フン、島にいる時は、もうちょっとマジメ男かと思ったぞ」

「ああ、真面目で優しいオニイサンだぞ」

「自分で言うな」

「社長は何か言ってるか?」

「あ、ああ、日本でよ、あれこれややこしくなってっから様子を見てきてくれって。コートーハとかキクスイなんとかにテングなんとかがあばれそうだって」

「ハナも、ある程度は知ってるようだな」

「うん、マイさんと明治神宮行ったら見かけてよ(331『神宮の森』)、そのコートーハとかキクスイとか。ここに来てんのは……よく分かんねえけど、いいやつばっかみてえだな。そうだ、マイさんに聞いて見ろよ、ハナよりはよっぽど詳しいぜ」

「ああ、そうするよ。ハナもいつか火星に来てくれよ、マッパ病も目途がたってきたし、あちこち案内するぞ!」

「おお、ツギのやつとも仲良しになれたしな、きっと行くぜ!」

「おお、じゃあ、また後でな」

 ちょうど陛下との話に区切りがついたのか、自分の席に戻っていくマイさんのとこへいく兵二。

 トングを持ってテーブルを見ると、いつの間にかローストビーフが消えてやがる!

「ええ!?」

 残念な声が出ちまうと、ツギのやつが来て、自分のトレーから二枚分けてくれる。

「おいしいものは、人と食べると、よりおいしいからね」

「おお、分かってるじゃねえか(^_^;)」

 こいつは、いい将軍になると思ったぜ!

 

☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)       第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 
扶桑 徳子             道隆の御台所
扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ)     書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)     銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       元輸送船の船長  大統領秘書官
朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山       西之島の火山
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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