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356『首都高大爆発事件!』
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銀河太平記
356『首都高大爆発事件!』
渋谷寄りの首都高を走っていたトラック同士が衝突、大爆発を起こした!
その衝撃は10キロ離れた皇居にも伝わって、日扶懇親会に出席していた人たちを瞬間で沈黙させ、大方は庭に出たり長和殿の前まで行って南西の空を窺ったりした。
「まるで原子爆弾だ……」
岩田前総理が古典的比喩で呟いた時、坂田国家公安委員長のハンベに連絡が入った。
—— 宛・国家公安委員長 発・国家緊急事態対応AI 首都高でトラック同士の衝突事故。積荷に相当量の爆発物が積んであった模様。付近初め、周辺地区に相当の被害。警視庁・消防庁が周辺10区の警察署・消防署が緊急出動要請、残り13区、近衛師団・第一師団に待機要請 了承されたし ——
ハンベに生体認証をさせ『応』の信号を遅らせると、陛下の元に走り、急いで耳打ちした。
「分かりました。みなさん、広範囲に被害と混乱が起こっているようです、残念ですが懇親会はここまでといたします。みなさん、衛士の指示に従って、お引き取りください」
陛下がおっしゃると、出席者たちは自分のハンベで事態を確認し、簡単に陛下とうちの道次に挨拶して豊明殿を後にした。
「大使館にも被害が出ています、咸臨丸に戻ります」
兵二はすぐに連絡や手配を済ませてくれていて、来た時と同じマイクロバスで横須賀を目指した。
来た時とはルートを変えて、湾岸線に出る。
『大使館から情報が入りました、そちらのモニターで確認してください』
バイクで先導している兵二が知らせてくれる。湾岸線を走っていても、西の空は煙が立ち込めて混乱の様子なので、嫌な予感ばかりがしていた。
火星もグノーシス侵略から始まり、二度の大戦、近いところではマッパ病を絡めたマス漢との戦争もあった。混乱や戦いの前兆には敏感になっている。
横須賀までの道中には、西の空を仰いで写真や動画を撮る者、車を停めてただ見入っている者がいたが、たいがいの人や車は日常の中にいる。車はほとんど自動運転と言っていいパルス車、日本全国の車を制御する交通システムで浮揚走行しているので、乗っている者が意図しない限りプログラム通りに走行する。
「でも、みんな緊張しているわ……」
御台様が呟く。
「西の空を見たり、ハンベに目を落としたり……でも、渋谷・六本木方面に規制がかかっているだけだから、いつも通りにやるしかないのよね……」
扶桑は官民ともに戦争慣れ、いや緊急事態慣れしていて、政府の指示も迅速だし、緊急時の避難行動も高いレベルで身に付いている。
日本の即応AIは、世界でも最優秀の部類に入るが、基本は提案するだけなので、相応の権限をもった人間が了解しなければ実行に移されない。
爆発の規模と場所からいって、対応する権限、あるいは責任を負うのは、国家公安委員長、東京都知事、内閣総理大臣だ。
『規模と場所から言って、大規模なテロの可能性があります。隠密局に伝えて独自に調査してはと思うのですが』
「そうだな、兵二の方から伝えてくれるか?」
『了解、伝達しました』
「え、もうか?」
『走りながら起案していましたので、送信するだけでした』
「さすがですねえ(゚д゚)」
御台様が少女のように驚かれる、世子の道次は……疲れが出たのか最後部のシートで寝ている。
子どもは、こういう時にむやみにハイになって、興奮するか怯えるものだ。この状況、子どもの出られる局面は無い。こうやって寝られるのは世子として好ましい。
『玄武守さま、前方の合流点に海軍陸戦隊』
「え!?」
『フル装備、機動戦闘車多数を伴っています』
バカな!?
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
356『首都高大爆発事件!』
渋谷寄りの首都高を走っていたトラック同士が衝突、大爆発を起こした!
その衝撃は10キロ離れた皇居にも伝わって、日扶懇親会に出席していた人たちを瞬間で沈黙させ、大方は庭に出たり長和殿の前まで行って南西の空を窺ったりした。
「まるで原子爆弾だ……」
岩田前総理が古典的比喩で呟いた時、坂田国家公安委員長のハンベに連絡が入った。
—— 宛・国家公安委員長 発・国家緊急事態対応AI 首都高でトラック同士の衝突事故。積荷に相当量の爆発物が積んであった模様。付近初め、周辺地区に相当の被害。警視庁・消防庁が周辺10区の警察署・消防署が緊急出動要請、残り13区、近衛師団・第一師団に待機要請 了承されたし ——
ハンベに生体認証をさせ『応』の信号を遅らせると、陛下の元に走り、急いで耳打ちした。
「分かりました。みなさん、広範囲に被害と混乱が起こっているようです、残念ですが懇親会はここまでといたします。みなさん、衛士の指示に従って、お引き取りください」
陛下がおっしゃると、出席者たちは自分のハンベで事態を確認し、簡単に陛下とうちの道次に挨拶して豊明殿を後にした。
「大使館にも被害が出ています、咸臨丸に戻ります」
兵二はすぐに連絡や手配を済ませてくれていて、来た時と同じマイクロバスで横須賀を目指した。
来た時とはルートを変えて、湾岸線に出る。
『大使館から情報が入りました、そちらのモニターで確認してください』
バイクで先導している兵二が知らせてくれる。湾岸線を走っていても、西の空は煙が立ち込めて混乱の様子なので、嫌な予感ばかりがしていた。
火星もグノーシス侵略から始まり、二度の大戦、近いところではマッパ病を絡めたマス漢との戦争もあった。混乱や戦いの前兆には敏感になっている。
横須賀までの道中には、西の空を仰いで写真や動画を撮る者、車を停めてただ見入っている者がいたが、たいがいの人や車は日常の中にいる。車はほとんど自動運転と言っていいパルス車、日本全国の車を制御する交通システムで浮揚走行しているので、乗っている者が意図しない限りプログラム通りに走行する。
「でも、みんな緊張しているわ……」
御台様が呟く。
「西の空を見たり、ハンベに目を落としたり……でも、渋谷・六本木方面に規制がかかっているだけだから、いつも通りにやるしかないのよね……」
扶桑は官民ともに戦争慣れ、いや緊急事態慣れしていて、政府の指示も迅速だし、緊急時の避難行動も高いレベルで身に付いている。
日本の即応AIは、世界でも最優秀の部類に入るが、基本は提案するだけなので、相応の権限をもった人間が了解しなければ実行に移されない。
爆発の規模と場所からいって、対応する権限、あるいは責任を負うのは、国家公安委員長、東京都知事、内閣総理大臣だ。
『規模と場所から言って、大規模なテロの可能性があります。隠密局に伝えて独自に調査してはと思うのですが』
「そうだな、兵二の方から伝えてくれるか?」
『了解、伝達しました』
「え、もうか?」
『走りながら起案していましたので、送信するだけでした』
「さすがですねえ(゚д゚)」
御台様が少女のように驚かれる、世子の道次は……疲れが出たのか最後部のシートで寝ている。
子どもは、こういう時にむやみにハイになって、興奮するか怯えるものだ。この状況、子どもの出られる局面は無い。こうやって寝られるのは世子として好ましい。
『玄武守さま、前方の合流点に海軍陸戦隊』
「え!?」
『フル装備、機動戦闘車多数を伴っています』
バカな!?
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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