377 / 390
365『在日漢明大使館』
しおりを挟む
銀河太平記
365『在日漢明大使館』扶桑徳子(将軍御台所)
マルチパルス車は横須賀から東京湾を北上し、横浜、羽田を横目に殺して竹芝というところからから運河に入るみたい。
それまでは開けた海だったけど、ここからは運河の上を高速道路が西に走って、なんだか蓋をされたみたいで、ちょっと暗いかなぁ。
「いやあ、たくさん船が観られてよかったです」
暗くなった分、会話で明るくしようという尊宅さん。元火星航路の船長だったせいか、今の大統領補佐官というお仕事のせいか、狭い車の中でも人の気を逸らしません。
「やっぱり海を行く船の方がお好きですか?」
「はい、宇宙は星が瞬いている以外は真っ暗ですから。海を行く船はいいですね。飛行機も宇宙船も、原型というかルーツは船です。出入りは左舷(ひだりげん)からですし、翼端灯も船に倣って右舷(みぎげん)が青、左舷が赤です。操縦や航海用語も船と共通のものが多くあって、最後に乗っていました牽牛も、21世紀から受け継いだ名前で、乗っていた牽牛は七代目です」
「牽牛は、お国が中国といった頃、日中友好のために作られた船ですねえ」
「おお、ご存知ですかボースン?」
「牽牛が日本、乙姫が中国で建造されて交換したんですね」
「そうですそうです(^▽^)」
「日漢が穏やかな関係に戻れたら、また、牽牛と乙姫を作って交換したいものです」
「あら、牽牛は今でも現役じゃないんですかぁ?」
「いいえ、わたし同様のロートル船なので、ここ一二年で退役になります」
「そうなんだぁ、それなら早く仲直りして天の川で逢わなくっちゃですね!」
日扶漢、自然な友好ムードになっていると、尊宅さんのハンベが鳴ったわ。
「大使館からだ……はい、大統領補佐官の栗尊宅です、あ、大使、なんでしょう……」
大事なお話のようなので、ボースンに水を向ける。
「高速道路の隙間から見えているのは東京タワー?」
「はい、国宝東京タワーです。あいにくドンパチが始まってしまったので今日は臨時休業です」
「そうなのぉ……」
「再開しましたらお連れ致します」
兵ちゃん(本田兵二)がノッテくれる。
「ぜひ! あそこはねぇ、出来て間が無いころはね、展望デッキでテレビ結婚式をやっていたのよぉ」
「テレビ……ああ、昔の電波メディアですね」
「あと二年で銀婚式だから、上様をお連れして、あそこで銀婚式……あ、他の人にはナイショにね」
「心得ました……尊宅さん、悪い知らせですか?」
「あ、失礼。本国に送還する者が居るので、ただちに同道して出発しろと言ってきました」
「まあ、ただちに?」
「はい、大使館の裏で待機しているとのことです」
「まあ、慌ただしいこと……」
マルチパルス車も慌ただしく陸に上がると、真っ直ぐ大使館に向かう。
「あれは護送車ですなぁ……」
ボースンが眉を曇らせる。護送車というのは準警察車両、他国である日本の公道を走らせるのは微妙な違和感。
「あ、あれは!?」
裏門から出されてきた女性士官を見て、今度は尊宅さんが驚く。
「お知り合い?」
「はい、同僚です。陸軍から出向している胡盛媛中尉です」
「胡……胡盛徳将軍の娘さんですか?」
「よくご存知で」
「優秀な軍人は国を問わず覚えるようにしております」
胡盛徳……検索する間もなく、車は裏門に到着。
手錠こそかけられていないけど、屈強な駐在武官に挟まれ、尊宅さんが到着の挨拶をすると「すぐに出発しろ」的なことを言われた感じ。
尊宅さんと胡盛媛中尉はきれいな敬礼を決め、護送車に乗り込むと、あっという間に北に向かって走り去ってしまった。
「ここは大使館だ、君たちも早く行ってくれたまえ」
仕立てのいい軍服さんが横柄に言う。
「わたしは世田谷に行くから、車を……」
続けて職員に指示をしている、なんだか悪だくみの気配。
長居は無用。
「ごきげんよう」
笑顔の挨拶をカマシ、車が発進したところで軍服さんを検索。
陸軍情報部部長で、反政府勢力の頭目、朱元尚少将と分かったころ、車は六本木通りに入って皇居が道の先に見えてきたわ。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
365『在日漢明大使館』扶桑徳子(将軍御台所)
マルチパルス車は横須賀から東京湾を北上し、横浜、羽田を横目に殺して竹芝というところからから運河に入るみたい。
それまでは開けた海だったけど、ここからは運河の上を高速道路が西に走って、なんだか蓋をされたみたいで、ちょっと暗いかなぁ。
「いやあ、たくさん船が観られてよかったです」
暗くなった分、会話で明るくしようという尊宅さん。元火星航路の船長だったせいか、今の大統領補佐官というお仕事のせいか、狭い車の中でも人の気を逸らしません。
「やっぱり海を行く船の方がお好きですか?」
「はい、宇宙は星が瞬いている以外は真っ暗ですから。海を行く船はいいですね。飛行機も宇宙船も、原型というかルーツは船です。出入りは左舷(ひだりげん)からですし、翼端灯も船に倣って右舷(みぎげん)が青、左舷が赤です。操縦や航海用語も船と共通のものが多くあって、最後に乗っていました牽牛も、21世紀から受け継いだ名前で、乗っていた牽牛は七代目です」
「牽牛は、お国が中国といった頃、日中友好のために作られた船ですねえ」
「おお、ご存知ですかボースン?」
「牽牛が日本、乙姫が中国で建造されて交換したんですね」
「そうですそうです(^▽^)」
「日漢が穏やかな関係に戻れたら、また、牽牛と乙姫を作って交換したいものです」
「あら、牽牛は今でも現役じゃないんですかぁ?」
「いいえ、わたし同様のロートル船なので、ここ一二年で退役になります」
「そうなんだぁ、それなら早く仲直りして天の川で逢わなくっちゃですね!」
日扶漢、自然な友好ムードになっていると、尊宅さんのハンベが鳴ったわ。
「大使館からだ……はい、大統領補佐官の栗尊宅です、あ、大使、なんでしょう……」
大事なお話のようなので、ボースンに水を向ける。
「高速道路の隙間から見えているのは東京タワー?」
「はい、国宝東京タワーです。あいにくドンパチが始まってしまったので今日は臨時休業です」
「そうなのぉ……」
「再開しましたらお連れ致します」
兵ちゃん(本田兵二)がノッテくれる。
「ぜひ! あそこはねぇ、出来て間が無いころはね、展望デッキでテレビ結婚式をやっていたのよぉ」
「テレビ……ああ、昔の電波メディアですね」
「あと二年で銀婚式だから、上様をお連れして、あそこで銀婚式……あ、他の人にはナイショにね」
「心得ました……尊宅さん、悪い知らせですか?」
「あ、失礼。本国に送還する者が居るので、ただちに同道して出発しろと言ってきました」
「まあ、ただちに?」
「はい、大使館の裏で待機しているとのことです」
「まあ、慌ただしいこと……」
マルチパルス車も慌ただしく陸に上がると、真っ直ぐ大使館に向かう。
「あれは護送車ですなぁ……」
ボースンが眉を曇らせる。護送車というのは準警察車両、他国である日本の公道を走らせるのは微妙な違和感。
「あ、あれは!?」
裏門から出されてきた女性士官を見て、今度は尊宅さんが驚く。
「お知り合い?」
「はい、同僚です。陸軍から出向している胡盛媛中尉です」
「胡……胡盛徳将軍の娘さんですか?」
「よくご存知で」
「優秀な軍人は国を問わず覚えるようにしております」
胡盛徳……検索する間もなく、車は裏門に到着。
手錠こそかけられていないけど、屈強な駐在武官に挟まれ、尊宅さんが到着の挨拶をすると「すぐに出発しろ」的なことを言われた感じ。
尊宅さんと胡盛媛中尉はきれいな敬礼を決め、護送車に乗り込むと、あっという間に北に向かって走り去ってしまった。
「ここは大使館だ、君たちも早く行ってくれたまえ」
仕立てのいい軍服さんが横柄に言う。
「わたしは世田谷に行くから、車を……」
続けて職員に指示をしている、なんだか悪だくみの気配。
長居は無用。
「ごきげんよう」
笑顔の挨拶をカマシ、車が発進したところで軍服さんを検索。
陸軍情報部部長で、反政府勢力の頭目、朱元尚少将と分かったころ、車は六本木通りに入って皇居が道の先に見えてきたわ。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
扶桑 徳子 道隆の御台所
扶桑 道興 玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ) 書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶 元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 元輸送船の船長 大統領秘書官
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる