銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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392『陛下と一緒に墓参りだぜ』

銀河太平記 

392『陛下と一緒に墓参りだぜ』 ハナ 




 今日の陛下は、みんなといっしょに共同墓地に来てくれてやがる。


 共同墓地はカンパニーの北側で、カンパニーじゃ『北の丘』とか『北丘』って呼ばれてて独立した丘みてえだけど、お山の下んとこが高くなった、まあ山裾の一部。でも、狭い島なんで、ちょっとでも特徴があったら独立した名前で呼びたがる。

「富士山の中腹にも宝永山というのがありますよ……ほら」

 ハンベで富士山を見せてくれる陛下。

「え、このでっぱりが、山なのかぁ?」

「そうですよぉ、江戸時代の噴火でできたんだけど、別に名前を付けて大切にしています」

「そ、そうなのかぁ(^^;)」

「名前があると大切にしますよね。扶桑でも、土地や街の名前は東京にちなんで大切にしています、あ、こらペス!」

 ワンワン

 ペスに振り回されながら、それでも陛下の話は聞いてやがるツギ。

「そうですね、むかし世子だったころの道隆さん(扶桑将軍)に教えてもらって床しく思ったものです」

「お花は、これをお使いください」

「はい、ありがとうございます」

 メグミが差し出した花を「まあ、サルビアですね」と機嫌よく受け取って、みんなといっしょに百近い墓石、それと二つの受難碑に捧げやがる。

 受難碑は、落盤事故と西之島戦争で逝っちまった奴らのだ。

 昨日は、空港の西にある慰霊碑に行ってくれやがったぜ。

 ほら、フーちゃんの親父の胡盛徳大佐。西之島戦争で、ハナがやっつけた敵の隊長。誰かが『月に一度はお参りに行ってるんですよ』って告げ口しやがって『あら、じゃあいっしょに行こうか(^▽^)』って、どこまで行き届いてやがんだ、陛下は。

 ちなみに、陛下はマイさんと同じ服装してやがる。

 もともと似てやがるし、服装と髪型をいっしょにしたら区別がつかねえ。

 本物のマイさんも二日に一度は戻ってきてよ。一般の島民も、陛下は本土にお帰りになって、あちこちの神社にお参りに行ってると思ってる、ほら、二宮の爺さんの病気平癒のためにな。昨日はピーカンの日本晴れだったけどよ、今日はあいにくの曇り空だ。「でも、陽に焼ける心配が無いから絶好のお墓参り日和です」って、ほんと、どこまでも明るい陛下だぜ。

「こういう曇った日には妖精が見えるのよぉ」

「「「「「「妖精?」」」」」」

 みんなの声が揃ったぜ。

「こうやって……」

 陛下は両手を緩いグーにして、それを連結して景色を見やがる。ま、望遠鏡覗いてる格好だ。

「妖精というのは漫然と見ていても見つかりません。こうやって視界を狭くして見ているとね、妖精さんが『あ、自分のことだけ見てくれてるんだ!』、そう思って姿を見せてくれるんです」

「あ、それ、うちの兄がやっておりました!」

 玄武のオッサンが嬉しそうに声を上げやがる。

「え、そうなの父上!?」

「ああ、お城で退屈した時、こういう風にして遊んでた。陛下にもお教えしていたんでしょうか?」

「あ、わたしの発明にしておこうと思ったのに」

「あ、すみません(;'∀')」

「ウフフ、いえいえいいんです。これで、赤坂の御所でいろいろ発見しましたよ。兄も見たことのないトンボとか、いたちとかハクビシンとか。明子は『ひょっとしたらトトロが見えるかも!』って頑張ってました。うん、トトロは見えませんでしたけど、タヌキが女官に化けるとこを見たこともあります!」

 ええ!?

「明子が『あ、タヌキ!』って最初に発見して、わたしも狙いを定めて、すぐに発見して、そしてタヌキと目が合って、クシュンってくしゃみをしたら、御所で一番古株の女官に化けていたの!」

 陛下が大真面目に言うもんだから、みんな笑ってしまったぜ。

 アハハハハハ

「フフフフ( ´艸`)」

 みんなも笑って陛下も笑って、ハナは聞いたぜ。

「そのくしゃみって、タヌキがしたのかあ?」

「ううん、わたしよ。え?」

 たぶん、くしゃみで的がずれて、たまたま女官の婆さんにズームインしちまったんだ……思ったけど言わねえ。

「神社の拝殿も、これに似ていますねえ……」

 玄武のオッサンがグーの望遠鏡を神社に向けやがる。

「ああ……」

 言われてみると拝殿は、でっけえグー望遠鏡みてえだ。屋根と柱に区切られて、そこから海とか空を拝んでると、なんだか特別な感じがして、ちょうどお天道様とか月なんかが収まっちまうと、特別な感じがしやがるぜ。

「フフ、でもあれは……」

 メグミが言いかけやがるけど、さすがに——シゲジイの企み——とは言わねえ。

「シゲさんのお名前はなんというんですか?」

「「「「「え?」」」」」

 シゲジイのことをシゲさんとはめったに呼ばねえけど、本名となると考えたこともねえ。島はそういうとこ詮索しねえからな。

「重田茂三と聞いたことがあります」

 メグミが答えて、みんな「へーーー!」って感動したぜ。

「シゲタシゲゾウ……いい響きですねえ」

 ウウ……うさんくせえと思うんだけど、陛下の感性はどこまでも優しいぜ。

「わたしの身内にも一人シゲさんが居ます。タイプは違いますが……フフフフ、面白いですね世の中は( ´艸`)」

 しゅんかん——え?——だったけど思い出した。ツギの歓迎会で見かけた皇族のオッサンだ。ツナカンてどこか親近感のやつといっしょだったぜ。

 そういや、ツナカン、マイさんや陛下といっしょに島に来やがったけど、すぐにオッサンたちと幼稚園バスで飛んでいきやがった。ということは北海道あたりでドンパチ(;'∀')。

 どうしてやがんだろ……と思ったら、お岩さんから——お昼ご飯できたぞ——と連絡が入って、みんなで丘を下りて食堂に向かったぜ。


☆彡主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    第一師団曹長、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府書院番士 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)       第一師団軍医、一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中だった
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士 
加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆              扶桑幕府将軍 
扶桑 徳子             道隆の御台所
扶桑 道興             玄武守、道隆の弟、二人の息子(道次・道忠)と娘がいる
本多 兵二(ほんだ へいじ)     書院番士小姓頭、彦と中学同窓
胡蝶                元小姓頭 将軍直属の隠密
児玉元帥(児玉隆三)         地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)          児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
森ノ宮茂仁王            心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)     銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく)       元輸送船の船長  大統領秘書官
朱 元尚 少将           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
三枝(さえぐさ)仲夫        元上海領事館二等書記官 朱のブレーンの一人

※ 重要事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山       西之島の火山
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
        
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