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072『ナバホ村・1』
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銀河太平記
072『ナバホ村・1』 加藤 恵
男の座りション強制してないんですね。
ニッパチの動きが遅いというか、ゆっくりとしか走れない周回道路の間を持たせたくて、さっきのトイレ掃除の話をする。
「座りションだと? んなの男の沽券に関わらあ」
シゲさんが息巻く。
「いろんな人がいるからねえ、そういうことはファジーにしてあるんだ」
社長は、のんびりと応える。
『昔は、トイレそのものが無かった』
ニッパチがすごいことを言う。
「野性的な者が多かったからね、それでも、用を足すところは、おのずと決まっていてね」
『犬や猫でも、排泄する場所は自然に決まってくるもんです』
「俺たちゃ、犬猫並みかぁ?」
『とんでもない、シゲさんは、毎日好きなところでやってましたからね』
「え、そうなの(;'∀')?」
「そりゃ、気分のいいとこでいたしたいだろ、照る日曇る日、潮の満ち引き、お天道様の具合とかで、最適な場所は、日によって違うからな」
「あ、そう……」
「小便器を設置してからは、おおむね、そっちを使ってくれてるんだけどね。坑道から上がってきた時とか冬場とかには集中するからね、個室も使うんだ。ま、好きなようにやってくれということなんだけど、トイレ掃除は、ちょっと面倒かけるね」
「そんな俺でも、おタキ婆さんが男の小用でやってるのに出くわした時はタマゲタぜ」
「え、女子が男子用を!?」
「おう、ケツまくってな、尻の方を便器に向けていたすんだ。それで、食堂のマナーが悪いとかションベンと説教たれるんだから、まあ、逆らえねえや(^Д^)」
おタキさんは、食堂のおばちゃんだ。タキというのは実名では無くて、まかないご飯を炊く係りなので、いつのまにか『おタキさん』という呼び方が定着したらしい。
「あいつの真名はお岩ってんだけどな、あいつの飯は美味いからおタキ。まあ、近ごろは真名の方で呼ぶ奴が多いな」
どうやら、シゲさんとおタキ……お岩さんは古い付き合いのようだ。
「まあ、そんなこんなで、トイレ掃除は大変だろうけど、よろしく頼むね」
ほんの世間話なんだけど、社長の配慮は行き届いている。
『ちょっと、ジャンプします』
話に夢中になっていると、ニッパチが停止した。
「また崩れてる」
ただでもガタボコの周回道路に教室一個分くらいの陥没が出来ている。
「若い火山島だからね、ちょっとしたことで地形が変わってしまう。ニッパチ、メグミは慣れてないから優しくな」
『ラジャー(''◇'')ゞ』
ウィーン……ギッコン!
二段階の動作音がして、タイヤを格納して、脚が出た。
『セイ!』
ウワ!
巨大なバッタがジャンプしたみたいな感じで陥没を乗り越える。
グァッシャン!
けっこうな衝撃でお尻が痛い。
「将来は、よその組とも相談して整備しようと思うんだけどね、まあ、当分は君の方から慣れておくれ」
「は、はい(^_^;)」
岩場を周ると、鞍部の向こうに木彫りの鷲が見えて……いや、鞍部を乗り越えてくると、鷲の下にはダルマ落としのように様々な動物らしい木彫りが連なっている。これは……トーテムポールだ。
トーテムポールに見惚れていると、広場のようなところが開けてきて、氷室カンパニー同様の怪しげな者たちが、珍し気に、でも親しみのこもった目を向けて出迎えてくれた。
「おお、社長みずから来てくれたか」
「こちらこそ、忙しいところをすまない」
いかにもインディアンというオッサンが白い歯を見せて、社長と三国志の英雄同士のような挨拶を交わした。
横っちょの看板を見ると『ナバホ村(東)』と書いてあった。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
072『ナバホ村・1』 加藤 恵
男の座りション強制してないんですね。
ニッパチの動きが遅いというか、ゆっくりとしか走れない周回道路の間を持たせたくて、さっきのトイレ掃除の話をする。
「座りションだと? んなの男の沽券に関わらあ」
シゲさんが息巻く。
「いろんな人がいるからねえ、そういうことはファジーにしてあるんだ」
社長は、のんびりと応える。
『昔は、トイレそのものが無かった』
ニッパチがすごいことを言う。
「野性的な者が多かったからね、それでも、用を足すところは、おのずと決まっていてね」
『犬や猫でも、排泄する場所は自然に決まってくるもんです』
「俺たちゃ、犬猫並みかぁ?」
『とんでもない、シゲさんは、毎日好きなところでやってましたからね』
「え、そうなの(;'∀')?」
「そりゃ、気分のいいとこでいたしたいだろ、照る日曇る日、潮の満ち引き、お天道様の具合とかで、最適な場所は、日によって違うからな」
「あ、そう……」
「小便器を設置してからは、おおむね、そっちを使ってくれてるんだけどね。坑道から上がってきた時とか冬場とかには集中するからね、個室も使うんだ。ま、好きなようにやってくれということなんだけど、トイレ掃除は、ちょっと面倒かけるね」
「そんな俺でも、おタキ婆さんが男の小用でやってるのに出くわした時はタマゲタぜ」
「え、女子が男子用を!?」
「おう、ケツまくってな、尻の方を便器に向けていたすんだ。それで、食堂のマナーが悪いとかションベンと説教たれるんだから、まあ、逆らえねえや(^Д^)」
おタキさんは、食堂のおばちゃんだ。タキというのは実名では無くて、まかないご飯を炊く係りなので、いつのまにか『おタキさん』という呼び方が定着したらしい。
「あいつの真名はお岩ってんだけどな、あいつの飯は美味いからおタキ。まあ、近ごろは真名の方で呼ぶ奴が多いな」
どうやら、シゲさんとおタキ……お岩さんは古い付き合いのようだ。
「まあ、そんなこんなで、トイレ掃除は大変だろうけど、よろしく頼むね」
ほんの世間話なんだけど、社長の配慮は行き届いている。
『ちょっと、ジャンプします』
話に夢中になっていると、ニッパチが停止した。
「また崩れてる」
ただでもガタボコの周回道路に教室一個分くらいの陥没が出来ている。
「若い火山島だからね、ちょっとしたことで地形が変わってしまう。ニッパチ、メグミは慣れてないから優しくな」
『ラジャー(''◇'')ゞ』
ウィーン……ギッコン!
二段階の動作音がして、タイヤを格納して、脚が出た。
『セイ!』
ウワ!
巨大なバッタがジャンプしたみたいな感じで陥没を乗り越える。
グァッシャン!
けっこうな衝撃でお尻が痛い。
「将来は、よその組とも相談して整備しようと思うんだけどね、まあ、当分は君の方から慣れておくれ」
「は、はい(^_^;)」
岩場を周ると、鞍部の向こうに木彫りの鷲が見えて……いや、鞍部を乗り越えてくると、鷲の下にはダルマ落としのように様々な動物らしい木彫りが連なっている。これは……トーテムポールだ。
トーテムポールに見惚れていると、広場のようなところが開けてきて、氷室カンパニー同様の怪しげな者たちが、珍し気に、でも親しみのこもった目を向けて出迎えてくれた。
「おお、社長みずから来てくれたか」
「こちらこそ、忙しいところをすまない」
いかにもインディアンというオッサンが白い歯を見せて、社長と三国志の英雄同士のような挨拶を交わした。
横っちょの看板を見ると『ナバホ村(東)』と書いてあった。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
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