銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお

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158『47人救えた』

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銀河太平記

158『47人救えた』メグミ 




 47人救えた。


 西海岸で集めた半導体で使えるものは半分に満たない。

 予想に反して上陸用舟艇も作業機械も旧式のものは少なく、中には見かけだけ旧式で中身は最新というものもあった。

 フェイクなのか間に合わせなのかは分からないけど、漢明の装備は見かけほどにポンコツではない。

 せっかくマイさん(児玉元帥)が時間を稼いでくれたのに申し訳ない。

「なあに、こっちも色々分かったし、橋頭保としては使い物にならないくらい破壊できたし、問題ないわよ」

 明るく答えるマイさんだけど、手足の包帯が痛々しい。

「手足にパルス砲を仕込んでたんですね」

「あ、ナイショね。これ使う時って凄い格好になるから(^_^;)」

「すみません、大きなことを言っておきながら半分しか救えませんでした」

「ううん、47人救えた。忠臣蔵と同じ数で縁起がいいわよ」

 

「ちょっといいかな」



「あ、市長」

 目の下にクマを作った市長が、さっき提出した報告書を手に割り込んできた。

「蘇生完了のロボット数なんだけどね」

「すみません、全員救えなくて」

「あ、いやいや、47人も救ってもらって感謝してます」

「なにか不具合が?」

「人(にん)という表記が困るんです」

「え?」

 西之島では人もロボットも区別しない。数え方は人(にん)だ。

 市長は元々は島に派遣された国交省の役人、ちょっと杓子定規。マイさんも白けた顔をしている。

「いや、戦いが終わったら日本政府に経費やら損害賠償を請求しようと思ってるんです。日本政府の書式ではロボットは『〇台』あるいは『〇機』と表現するんです」

「あ、ああ(^▽^)!」

「ロボット平等法とかありますけど、手続きや書式は旧態依然でしてね。まあ、二重線で消して『人』に直して訂正印押しとけばいいことですから」

「はい、分かりました」

 チャッチャと訂正、でも、市長は、まだ屈託あり気な顔のまま。

「実は、これが本題なんでありますが……」

 う、言葉が丁寧になってきた。こういう丁寧モードに入ると市長は無理なことや困ったことを言う。

「なんでしょうか?」

 こっちもつられて丁寧になる。

「こちらの被害もけっこうな量になりまして、ニッパチを本土に送ってやる機材がないんです」

「東のブンカ―に予備のボートがあったはずです」

 救急の連絡を受けて、直前に確認した。

「たった今、敵の襲撃を受けて、撃退はしたのですが、ボートは二隻とも……」

「修理は出来ないんですか?」

「ちょっと難しいようです」

「実は……」

 マイさんが口を開いた。

「南の空港で王春華という凄腕と渡り合ってきました、大統領府直属の戦闘ヒュ-マノイドです。敵勢力は粗かた駆逐しましたが、王春華は健康なままです」

「そのヒューマノイドが?」

「こちらの手の内を知っているわけでなありませんが、一矢報いるために手近な東のブンカ―を襲ったのでしょう」

 ガチャガチャガチャ

 直してやったばかりのロボットたちが、いびつな音をたてながら集まってきた。

「ちょ、あんたたち、駆動系とかはリペアしきれてないんだから!」

 ガチャ

 代表めいたのが、一歩前に出てきた。

「ワタシタチ モ イッシムクイマショウ!」

「アハハ、気持ちは嬉しいけど、まだ駄目だって(^_^;)」

「労基法にも抵触するから、おさえておさえて(^o^;)」

「いいわ、ニッパチの輸送は任せて」

「元帥、いや、マイさん!?」

「ヨイチ准尉!」



「はい、御用でありましょうか、閣下?」



「至急、パルス車を出してくれ」

「お戻りになるんですか?」

「後送の任務だ、要人一名を軍の技研まで送ってくれ。敵の囲みは厳しいが、貴様の技量なら大丈夫だろ」

「はい、多少の欺瞞進路をとりますので、通常の倍は掛かるかと思います」

「かまわん、確実なことが大事な任務だ。後送するのはニッパチ、西之島技研の要員でもあり、西之島銀行の頭取でもある。安全第一でいけ」

「帰りが明後日以降になるおそれがあります」

「戻って来んでいい。任務が終わったら江ノ島で待機していてくれ」

「それでは、戦闘に加われません」

「戦闘は、これが最後ではない」

「しかし」

「大丈夫、この戦争には勝つ。以上だ」

「……了解しました。ヨイチ准尉ニッパチ殿を本土技研まで後送いたします」

「よし、かかれ!」

 ビシッと敬礼を決めると准尉は行ってしまった。

「なにかな?」

「完全に元帥に戻ってますけど」

「あ……あははは、今のは見なかったということでぇ……さ、そろそろ作戦会議の時間ですので、これで失礼しますね」

 それでも軍人丸出しの回れ右をきめて、作戦室のラッタルを上がるマイさんだった。



 ☆彡この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶                小姓頭
児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ               児玉元帥の副官
マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン             太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平             西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王

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