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176『虎ノ門前派出所』
銀河太平記
176『虎ノ門前派出所』須磨宮心子内親王
扶桑の首都は扶桑府です。
首都だから『都』と書かなきゃおかしんだけれど、扶桑の首都は『府』になっている。
初代将軍の一仁さまが、建国にあたって『扶桑府』とされた。
宗主国の日本に遠慮されたからだと言われているわ。
日本の感覚だと『府』は『都』の格下という感覚でしょ。『都』は東京都が一つだけだけど『府』は大阪府と京都府の二つがある。法的には『都』『府』『県』は同等だけど、東京都民は潜在的に二つの『府』よりも偉いと思ってる。高等部の時、親友のチエが「お上りさんのふりしてタクシーに乗ってみよう(^▽^)/」言いだして、チエはお母さんの出身地である大阪弁で通すと運転手さんは得々と東京の自慢をして、可笑しかった。
初代将軍の一仁さまも、正確な読み方は『もとひと』。
皇族男子の名前は『〇仁』と書くのが普通で、読み方は訓読み。だから征夷大将軍にお成りになるにあたって重箱読みの『かずひと』に変えられた。つまり、もう皇族ではないというお気持ちがこめられている。
扶桑府の整備に当っては、中央に『御城』を置いて、その周囲の地名は江戸の街に倣った。
道隆さまに寮生活仲間を紹介されたのは、東京と同じく御城の北にある飛鳥山公園だったし(127『火星の春もたけなわ』)、お休みの日に遊びに行ったのは渋谷、原宿、秋葉原に浅草。浅草には本家の浅草ではとっくに無くなった奥山という歓楽街さえありました。ちなみに歌舞伎町は無いんです。本家の歌舞伎町は大東亜戦争後に生まれたものだから。
つまり、扶桑府のモデルは、どちらかというと江戸なんですね。
扶桑の人たちも、日ごろは扶桑府とは呼ばずにエドと呼ぶ人たちが多い。
一つには、国名と首都名がいっしょなので扶桑ではややこしい。扶桑府と呼ぶと「府」一字が微妙に長いし。
でしょ、東京の人は、日ごろ「東京都」とは呼ばないでしょ、「東京」で済ましてる。
大阪も京都も同じよね。
エドって言うのは、独立前の都市記号が「ED」だったことからきているって言われているわ。
Eは、五番目に作られた街だから。Dは防衛機能に特化した街で、ディフェンスの頭文字からきているんだそうです。
これほど江戸の街にあやかっているのに、一つだけ意識的に外された地名がある。
虎ノ門
御城そのものが桜田門が外縁で、その外側になる虎ノ門が存在していなくて、神谷町まで霞が関の地名が続いている。
東京では三丁目までしかない霞が関は五丁目まで設定されていて「エドは東京の半分の規模だから」という言い訳と矛盾する。
「初代一仁さんが『虎ノ門』というのを忌避されたんです」
道隆さまに聞くと、そうおっしゃった。
「あ……ひょっとして、虎の門事件ですか?」
お聞きすると苦笑いされた。
虎の門事件というのは、大正時代に、当時摂政宮とおっしゃった昭和天皇が狙撃された事件。
幸い、摂政宮にお怪我はなかったけど、皇太子時代とはいえ天皇が襲撃されたのは、これが初めて。
それを憚って『虎ノ門』という地名は使われなかった。
それが、昨年、霞が関の官庁街を護るためにゲートが作られて『虎ノ門』と名前が付けられ、四丁目五丁目も虎ノ門の地名に変更された。
「まあ、虎の門事件では摂政宮殿下はご無事だったし、犯人を捕まえたのは、その場に居た市民の人たちだったし……まあ、いいでしょう(^_^;)」
道隆さまは、いっそうの苦笑いで締めくくられた。
わたしは、その虎ノ門前にできた虎ノ門前派出所に居ります。
「ココさん、巡回に行きますよ」
わたしと同じ同心(日本の巡査)で、寮仲間でもあった穴山彦くん。
彼も言わないし、わたしも聞かないけど、ヒコくんが交番勤務になったのは、わたしのガード役というか守り役。
隠密課という書院番(将軍補佐官)としては異色なんだけど、それだけ、将来を期待された人。
「混住が始まって三か月、いろいろ出てくる時期だから、よく見ておいて。そして深入りしないようにね」
「「了解」」
ボスの胡蝶さんに敬礼して、地域パトロールに出るココでした。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
176『虎ノ門前派出所』須磨宮心子内親王
扶桑の首都は扶桑府です。
首都だから『都』と書かなきゃおかしんだけれど、扶桑の首都は『府』になっている。
初代将軍の一仁さまが、建国にあたって『扶桑府』とされた。
宗主国の日本に遠慮されたからだと言われているわ。
日本の感覚だと『府』は『都』の格下という感覚でしょ。『都』は東京都が一つだけだけど『府』は大阪府と京都府の二つがある。法的には『都』『府』『県』は同等だけど、東京都民は潜在的に二つの『府』よりも偉いと思ってる。高等部の時、親友のチエが「お上りさんのふりしてタクシーに乗ってみよう(^▽^)/」言いだして、チエはお母さんの出身地である大阪弁で通すと運転手さんは得々と東京の自慢をして、可笑しかった。
初代将軍の一仁さまも、正確な読み方は『もとひと』。
皇族男子の名前は『〇仁』と書くのが普通で、読み方は訓読み。だから征夷大将軍にお成りになるにあたって重箱読みの『かずひと』に変えられた。つまり、もう皇族ではないというお気持ちがこめられている。
扶桑府の整備に当っては、中央に『御城』を置いて、その周囲の地名は江戸の街に倣った。
道隆さまに寮生活仲間を紹介されたのは、東京と同じく御城の北にある飛鳥山公園だったし(127『火星の春もたけなわ』)、お休みの日に遊びに行ったのは渋谷、原宿、秋葉原に浅草。浅草には本家の浅草ではとっくに無くなった奥山という歓楽街さえありました。ちなみに歌舞伎町は無いんです。本家の歌舞伎町は大東亜戦争後に生まれたものだから。
つまり、扶桑府のモデルは、どちらかというと江戸なんですね。
扶桑の人たちも、日ごろは扶桑府とは呼ばずにエドと呼ぶ人たちが多い。
一つには、国名と首都名がいっしょなので扶桑ではややこしい。扶桑府と呼ぶと「府」一字が微妙に長いし。
でしょ、東京の人は、日ごろ「東京都」とは呼ばないでしょ、「東京」で済ましてる。
大阪も京都も同じよね。
エドって言うのは、独立前の都市記号が「ED」だったことからきているって言われているわ。
Eは、五番目に作られた街だから。Dは防衛機能に特化した街で、ディフェンスの頭文字からきているんだそうです。
これほど江戸の街にあやかっているのに、一つだけ意識的に外された地名がある。
虎ノ門
御城そのものが桜田門が外縁で、その外側になる虎ノ門が存在していなくて、神谷町まで霞が関の地名が続いている。
東京では三丁目までしかない霞が関は五丁目まで設定されていて「エドは東京の半分の規模だから」という言い訳と矛盾する。
「初代一仁さんが『虎ノ門』というのを忌避されたんです」
道隆さまに聞くと、そうおっしゃった。
「あ……ひょっとして、虎の門事件ですか?」
お聞きすると苦笑いされた。
虎の門事件というのは、大正時代に、当時摂政宮とおっしゃった昭和天皇が狙撃された事件。
幸い、摂政宮にお怪我はなかったけど、皇太子時代とはいえ天皇が襲撃されたのは、これが初めて。
それを憚って『虎ノ門』という地名は使われなかった。
それが、昨年、霞が関の官庁街を護るためにゲートが作られて『虎ノ門』と名前が付けられ、四丁目五丁目も虎ノ門の地名に変更された。
「まあ、虎の門事件では摂政宮殿下はご無事だったし、犯人を捕まえたのは、その場に居た市民の人たちだったし……まあ、いいでしょう(^_^;)」
道隆さまは、いっそうの苦笑いで締めくくられた。
わたしは、その虎ノ門前にできた虎ノ門前派出所に居ります。
「ココさん、巡回に行きますよ」
わたしと同じ同心(日本の巡査)で、寮仲間でもあった穴山彦くん。
彼も言わないし、わたしも聞かないけど、ヒコくんが交番勤務になったのは、わたしのガード役というか守り役。
隠密課という書院番(将軍補佐官)としては異色なんだけど、それだけ、将来を期待された人。
「混住が始まって三か月、いろいろ出てくる時期だから、よく見ておいて。そして深入りしないようにね」
「「了解」」
ボスの胡蝶さんに敬礼して、地域パトロールに出るココでした。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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