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327『皇居勤労奉仕』
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銀河太平記
327『皇居勤労奉仕』 越萌マイ(児玉元帥)
何を置いても陛下にお会いしなければならない。
政府の発表では救急機で搬送の途中で意識を取り戻され、病院の検査でも異常なしということで、ご公務も日々のことごともセーブしながらも日常に戻られているという。
しかし、政府の発表があてにならないのは昔からのこと。大本営発表をうのみには出来ない。この目で陛下のご無事を確認しなければならない。
そこで、メイ(コスモス)に連絡して皇居勤労奉仕の中に加えてもらうことにした。
シマイルカンパニーは創業の年から皇居の勤労奉仕に参加している。
皇居勤労奉仕というのは、過ぐる昭和の時代から続いている美風で、宮内庁を窓口にして募集した一般国民が皇居内の清掃や草むしりをする奉仕活動。
昭和20年、空襲で焼け落ちた宮殿残骸の跡片付けを宮城県の青年団が申し入れて行われた。その折、昭和天皇が直々に参加者を労われたことが始まりで。24世紀の今日でも、可能な限り陛下御自身がお出ましになって参加者にお声をかけられる。昭和以来、希望者が多く抽選になっているが、シマイルカンパニーは社員有志の団体名で常時申し込み、抽選の上40%の確率で参加している。
これならば、陛下のお姿を間近で見られ、そのご健康ぶりを窺い知ることができる。
「いいこと、宮城の中ではむやみに声を出してはいけません。陛下がお出ましになっても声をかけたり奇声を発してはいけません。陛下はもちろんのこと、人をガン見してはいけません。もし、人から声をかけられたら小さな声で必要なことだけ応えるようにしましょう。そして、けして走ってはいけません」
「お、おう、神社で巫女やってる時の感じでやればいいんだな(;'∀')」
「そうね……シゲジイが祝詞上げてる時は畏まってるじゃない、あの時の感じかなあ」
「ああ……って、あれは鳥居の内側で、巫女服とか着てるし、短時間だしよ。皇居ってのは、そんなにガチガチなもんなのかあ?」
「そういうものなの。社長からも言われてるでしょ、ハナは社会勉強のために付いて来てるんだからね」
「おう、島の未来を担う若者の代表だからな!」
ちょっとビビらせるくらいに注意をして、他の社員20名と共に皇居前で記念撮影。
パシャ!
こんなに緊張したハナを見るのは初めてで、写真を撮られながらも笑いそうになる。
ハナとサブは、本人の自覚はともかく、社長や島の代表者たちは次世代のリーダーだと考えている。そのために、今度の同行を認めたのだけれど、実は大いに助けられてもいる。
わたしの思考と行動には島と日本の将来がかかっている。長年軍人として修羅場を潜ってきたが、今の日本と日本を取り巻く環境は大変厳しく失敗が許されない。その緊張を自覚無しに癒してくれる。
「では、これから点呼を取りますのでご集合ください」
宮内庁職員の声で楠公像の前に集まって点呼。むろん、マリやハナという名前ではないのだけども。
「……はい、それでは、これより宮城の中に入ります。まずは、四日間にわたるご奉仕の説明と諸施設の確認を致します。確認と申しましても、見学と思っていただいて構いません。日ごろは一般に公開していないところばかりですので、しっかりお目に留めていただければと存じます」
職員に引率されて桔梗門から宮城内へ。元帥であった頃は坂下門から入っていたので新鮮ではある。
まずは、宮城内の諸施設の見学、ここでのハナの反応も興味深いのだけれど、話が進まないので先に行く。見学の後、今度は日程の説明になった。
「……以上が四日間にわたる勤労奉仕と、それに関わる諸施設の説明でした。ええ……三十分後に陛下のみなさんへの御会釈があります。それでは、その御会釈の説明とご注意していただく点についての説明をさせていただきます……」
同行の社員たちは、入社式の説明を受ける時以上に真剣に。ハナは、西之島戦争の時のブリーフィングのように頬を染めて聞き入った。あの時は頬を染めながら見敵必殺の凄みを見せたハナだが、小学生が運動会の団体競技のために入場門に集合した時のような高揚感。やっぱり面白い。
「陛下、お発ちになられました!」
入り口の職員が声を上げる。
自室か執務室か、そこをお発ちになったところから連絡が入ることに驚きながらも高揚感に包まれる一同。
「陛下、お着きになられます」
もう一度声が上がって陛下が入って来られた。
あ、やっぱりご無事…………?
安堵するとともに、微妙な違和感を感じるわたしだった。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平) 島守を称す(270から)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
ピタゴラス 月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
奥の院 扶桑城啓林の奥にある祖廟
327『皇居勤労奉仕』 越萌マイ(児玉元帥)
何を置いても陛下にお会いしなければならない。
政府の発表では救急機で搬送の途中で意識を取り戻され、病院の検査でも異常なしということで、ご公務も日々のことごともセーブしながらも日常に戻られているという。
しかし、政府の発表があてにならないのは昔からのこと。大本営発表をうのみには出来ない。この目で陛下のご無事を確認しなければならない。
そこで、メイ(コスモス)に連絡して皇居勤労奉仕の中に加えてもらうことにした。
シマイルカンパニーは創業の年から皇居の勤労奉仕に参加している。
皇居勤労奉仕というのは、過ぐる昭和の時代から続いている美風で、宮内庁を窓口にして募集した一般国民が皇居内の清掃や草むしりをする奉仕活動。
昭和20年、空襲で焼け落ちた宮殿残骸の跡片付けを宮城県の青年団が申し入れて行われた。その折、昭和天皇が直々に参加者を労われたことが始まりで。24世紀の今日でも、可能な限り陛下御自身がお出ましになって参加者にお声をかけられる。昭和以来、希望者が多く抽選になっているが、シマイルカンパニーは社員有志の団体名で常時申し込み、抽選の上40%の確率で参加している。
これならば、陛下のお姿を間近で見られ、そのご健康ぶりを窺い知ることができる。
「いいこと、宮城の中ではむやみに声を出してはいけません。陛下がお出ましになっても声をかけたり奇声を発してはいけません。陛下はもちろんのこと、人をガン見してはいけません。もし、人から声をかけられたら小さな声で必要なことだけ応えるようにしましょう。そして、けして走ってはいけません」
「お、おう、神社で巫女やってる時の感じでやればいいんだな(;'∀')」
「そうね……シゲジイが祝詞上げてる時は畏まってるじゃない、あの時の感じかなあ」
「ああ……って、あれは鳥居の内側で、巫女服とか着てるし、短時間だしよ。皇居ってのは、そんなにガチガチなもんなのかあ?」
「そういうものなの。社長からも言われてるでしょ、ハナは社会勉強のために付いて来てるんだからね」
「おう、島の未来を担う若者の代表だからな!」
ちょっとビビらせるくらいに注意をして、他の社員20名と共に皇居前で記念撮影。
パシャ!
こんなに緊張したハナを見るのは初めてで、写真を撮られながらも笑いそうになる。
ハナとサブは、本人の自覚はともかく、社長や島の代表者たちは次世代のリーダーだと考えている。そのために、今度の同行を認めたのだけれど、実は大いに助けられてもいる。
わたしの思考と行動には島と日本の将来がかかっている。長年軍人として修羅場を潜ってきたが、今の日本と日本を取り巻く環境は大変厳しく失敗が許されない。その緊張を自覚無しに癒してくれる。
「では、これから点呼を取りますのでご集合ください」
宮内庁職員の声で楠公像の前に集まって点呼。むろん、マリやハナという名前ではないのだけども。
「……はい、それでは、これより宮城の中に入ります。まずは、四日間にわたるご奉仕の説明と諸施設の確認を致します。確認と申しましても、見学と思っていただいて構いません。日ごろは一般に公開していないところばかりですので、しっかりお目に留めていただければと存じます」
職員に引率されて桔梗門から宮城内へ。元帥であった頃は坂下門から入っていたので新鮮ではある。
まずは、宮城内の諸施設の見学、ここでのハナの反応も興味深いのだけれど、話が進まないので先に行く。見学の後、今度は日程の説明になった。
「……以上が四日間にわたる勤労奉仕と、それに関わる諸施設の説明でした。ええ……三十分後に陛下のみなさんへの御会釈があります。それでは、その御会釈の説明とご注意していただく点についての説明をさせていただきます……」
同行の社員たちは、入社式の説明を受ける時以上に真剣に。ハナは、西之島戦争の時のブリーフィングのように頬を染めて聞き入った。あの時は頬を染めながら見敵必殺の凄みを見せたハナだが、小学生が運動会の団体競技のために入場門に集合した時のような高揚感。やっぱり面白い。
「陛下、お発ちになられました!」
入り口の職員が声を上げる。
自室か執務室か、そこをお発ちになったところから連絡が入ることに驚きながらも高揚感に包まれる一同。
「陛下、お着きになられます」
もう一度声が上がって陛下が入って来られた。
あ、やっぱりご無事…………?
安堵するとともに、微妙な違和感を感じるわたしだった。
☆彡主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑科学研究所博士
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 東鈴(妻) 悟遼(息子)
テムジン モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
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アルルカン(メアリ・アン・アルルカン) 銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
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村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
胡 盛媛 中尉 胡盛徳大佐の養女
栗 尊宅(りつそんたく) 輸送船の船長 大統領府参与
朱 元尚 少将 ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
※ 重要事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西之島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
御山 西之島の火山
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
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