やくもあやかし物語

武者走走九郎or大橋むつお

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39『アノマロカリスのお腹』

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やくもあやかし物語

39『アノマロカリスのお腹』     

 

 

 シャコの縁側を大きくして二本の大きな牙を付けたみたい。

 それがアノマロカリス。

 で、そのぬいぐるみ。 

 海老みたく目玉が飛び出している。真っ黒な目玉なんで怖くはないけど気味が悪い。ひっくり返すと、信じられないけどまん丸い口。井戸を掘るドリルのようだ……といって井戸掘りドリルなんて見たことないんだけど、こんなのだと思う。

 これが、スーパーとかで売ってる有頭海老くらいの大きさだったら、変なやつってくらいでほっぽらかしておいてもいいんだけども、デカい! とにかくデカい!

 全長一メートルほどもある。

 もし、こいつを背負って出かけたとする。半径二メートル以内には人が寄り付かないだろうね(^_^;)。でもって「ちょっといいですか」とか言って人に話しかけたとする。十中八九逃げられるね。ひょっとしたら通報されるかもよ。

 いきなり垣内かりなの顔が浮かんだ。

 ほら『妹が憎たらしいのには訳がある』に出てくる幸子の親友。幸子といっしょに読モとかやってるんだけど、お堅い子で、主人公の太一に、すぐ「通報しますよ!」と言っては張り倒しているテリブルな女。

 あ……そか、通報→通報しますよ!→かりな。

 お腹のヒダからなにか出てる?

 ピンク……内臓? んなわけないよね……引っ張り出すと『小悪魔マユ』が出てきた。 
 アノマロカリス自体が段ボール箱の中でヘシャゲていたので、マユも捻じれてる。

 そうか、アノマロカリスのヒダはポケットになっているんだ。

 数億年の時の流れでアノマロカリスはメルルに進化したんだ! メルルの圧倒的な強さは何億年か前に圧倒的な強さを発揮したアノマロカリスの強さなんだ!

 ……これは、お父さんが仕掛けたんだ。

 普通にマユのぬいぐるみをもらうよりも、アノマロカリスから出てきた方が面白い!

 だけどね、それ発見する前に物置に放り込んだんだよ、わたし。

 

 お父さんも忙しい人だったから、そんで、人より気の長い人だったから。そのうち、わたしが気づくと思ってほったらかして、お父さん自身忘れてしまったんだ。

 なにごとも無理押ししないで待つのはいいけど、待ちすぎて取り返しがつかなくなることもあるんだけどね……。

 いろいろ思い出したんだけど、図書当番代わってもらってゴミ袋あさるほどのことだったのかなあ。

 せっかく命拾いしたアノマロカリスなんで、無下に捨てることもはばかられて、無駄に広い部屋の隅に立てかけて置く。

 あ、お風呂掃除!

 わたしはアノマノカリスの非日常からお風呂掃除の日常に戻った。

 

 
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