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78『ただいまーと檜のお風呂』
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やくもあやかし物語
78『ただいまーと檜のお風呂』
あら?
框を上がって靴を揃え『ただいまー』を言うのを忘れていたのを思い出し、あらためて『ただいまー』を言おうとしたら、リビングからお婆ちゃんが顔を出して「あら?」っと言ったところ。
「いま、帰ってきたの?」
「う、うん。考え事してて『ただいま』が遅れちゃった(n*´ω`*n)」
この家に越してきて『ただいま』を言う習慣が身についた。
越してくる前はお母さんと二人暮らしで、お母さんの帰りも遅かったので『ただいま』を言う習慣が無かった。
「おかえり」も言ってもらえないのに「ただいま」って言うのは間が抜けてるし、寂しいもんね。
今の家は無駄に広いので『ただいま』を言わないと、帰ってきたことに気付いてもらえないことがある。
黙って帰って、のっそり廊下を歩いていたりすると、リビングのあたりで孫の存在に気付いてビックリされる。一度など、おトイレから出て来たばかりのお爺ちゃんとトイレドアの前で出くわして、お爺ちゃんが腰を抜かしたこともある。
それ以来、帰宅したら『ただいまー』と声をかける。
「ただいま」じゃないよ『ただいまー』だよ。
ちょっと大きめの声で語尾を伸ばす。
そうしないと、ふつうの「ただいま」だと聞こえないことがあるから。
「うちは無駄に広いからねえ」とお婆ちゃんは言う。
だけど、聞こえないことがあるのは、家が無駄に広いせいばかりではないんだけど、そのことは言わない。
そのわたしが『ただいまー』を忘れてしまったのは考え事をしていたから。
考え事は、ほら、例の二丁目断層。
もう、少々のあやかしには驚かないんだけど、二丁目断層は驚きだよ。
教頭先生の話によると、断層という地学的な現象がお化けになったものだし。なんだか、このあたりでも別格のあやかしみたいだし。
なにより、わたしと同じ姿で出てくるし。
そういうことを考え考えしていて、つい『ただいまー』を忘れてしまった。
「ああ、ごめんごめん。つい考え事をしていて(^_^;)」
「ふふ、やくもも、そういうお年頃なんだ(^▽^)」
誤解されてるけど「アハハ」と笑って、自分の部屋に入って三十秒でジャージに着替えるとお風呂に直行。
日課のお風呂掃除。
あら?
今度は、わたしがビックリする番だ。
なんと、お風呂掃除は終わっているのだ。
それも、念入りのピカピカになっている。
わたしが越してくるまではお爺ちゃんがやっていた。
何十年もやっているためと、年を取って膝とかいためてるので『一応やりました』というレベルだった。
うちは、今どき珍しい檜のお風呂で、きちんとお掃除しないと、すぐにヌルヌルになったりカビが生えたり。
「うちの風呂は一寸五分の檜だから、いざとなったら削ってもらったら新品になるぞ」
お爺ちゃんは自慢げに言うけど、素人がサンドペーパ掛けるようなわけにはいかない。専門の風呂桶職人さんに頼んでやってもらわなければならないので、ちょっと大事なので、ずっと先延ばしになってる。
その檜ぶろが新品みたいになって、いつもの三倍くらい濃厚な檜の香りをさせている。
風呂桶は、同じく檜のが四つあるんだけど、一つだけがピカピカ。
むろん、他の所も普通には掃除が済んでいて、あとはお湯を張ったらおしまいというくらいになっている。
あやかしの仕業だなあ……。
膝まで上げたジャージの裾を戻して部屋に戻る。
「よ、お帰り(^▽^)/」
そいつが居た。
ほら、わたしにソックリな二丁目断層。
わたしと同じジャージで、ベッドの上で胡座をかいている。
「やっぱり、あんた……てか、いつから居たの!?」
さっき着替えた時は居なかったよ。
「お風呂に驚いてからの方がいいと思ってな、隠れてた(^▽^)/」
こいつ、着替えるとこ見てたのか(;'∀')。
「いいじゃないか、同じ姿かたちなんだし。いやな、ちょっと友情の印に掃除しといてやろうかと思ったら、嬉しいことに檜ぶろじゃないか。つい力が入っちまった。ぜんぶやっとこうかと思ったんだけど、家の者がビックリしたら困るだろうって、風呂桶一個きれいにしたところで気が付いてなあ、あ、お礼とかはいいからな」
「……どうも、ありがとう」
下手に苦情を言ったらこじれそうな気がして、取りあえずお礼を言っておく。
「まあ、座ってくれよ」
まるで、自分の部屋みたいにベッドの横をホタホタ叩く。
「実は、一人の女の子を紹介したくってなあ」
「女の子?」
「うん」
短く返答すると、二丁目断層の頬がポッと赤くなった……。
☆ 主な登場人物
やくも 一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生 図書部の先生
杉野君 図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん 図書委員仲間
あやかしたち 交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層
78『ただいまーと檜のお風呂』
あら?
框を上がって靴を揃え『ただいまー』を言うのを忘れていたのを思い出し、あらためて『ただいまー』を言おうとしたら、リビングからお婆ちゃんが顔を出して「あら?」っと言ったところ。
「いま、帰ってきたの?」
「う、うん。考え事してて『ただいま』が遅れちゃった(n*´ω`*n)」
この家に越してきて『ただいま』を言う習慣が身についた。
越してくる前はお母さんと二人暮らしで、お母さんの帰りも遅かったので『ただいま』を言う習慣が無かった。
「おかえり」も言ってもらえないのに「ただいま」って言うのは間が抜けてるし、寂しいもんね。
今の家は無駄に広いので『ただいま』を言わないと、帰ってきたことに気付いてもらえないことがある。
黙って帰って、のっそり廊下を歩いていたりすると、リビングのあたりで孫の存在に気付いてビックリされる。一度など、おトイレから出て来たばかりのお爺ちゃんとトイレドアの前で出くわして、お爺ちゃんが腰を抜かしたこともある。
それ以来、帰宅したら『ただいまー』と声をかける。
「ただいま」じゃないよ『ただいまー』だよ。
ちょっと大きめの声で語尾を伸ばす。
そうしないと、ふつうの「ただいま」だと聞こえないことがあるから。
「うちは無駄に広いからねえ」とお婆ちゃんは言う。
だけど、聞こえないことがあるのは、家が無駄に広いせいばかりではないんだけど、そのことは言わない。
そのわたしが『ただいまー』を忘れてしまったのは考え事をしていたから。
考え事は、ほら、例の二丁目断層。
もう、少々のあやかしには驚かないんだけど、二丁目断層は驚きだよ。
教頭先生の話によると、断層という地学的な現象がお化けになったものだし。なんだか、このあたりでも別格のあやかしみたいだし。
なにより、わたしと同じ姿で出てくるし。
そういうことを考え考えしていて、つい『ただいまー』を忘れてしまった。
「ああ、ごめんごめん。つい考え事をしていて(^_^;)」
「ふふ、やくもも、そういうお年頃なんだ(^▽^)」
誤解されてるけど「アハハ」と笑って、自分の部屋に入って三十秒でジャージに着替えるとお風呂に直行。
日課のお風呂掃除。
あら?
今度は、わたしがビックリする番だ。
なんと、お風呂掃除は終わっているのだ。
それも、念入りのピカピカになっている。
わたしが越してくるまではお爺ちゃんがやっていた。
何十年もやっているためと、年を取って膝とかいためてるので『一応やりました』というレベルだった。
うちは、今どき珍しい檜のお風呂で、きちんとお掃除しないと、すぐにヌルヌルになったりカビが生えたり。
「うちの風呂は一寸五分の檜だから、いざとなったら削ってもらったら新品になるぞ」
お爺ちゃんは自慢げに言うけど、素人がサンドペーパ掛けるようなわけにはいかない。専門の風呂桶職人さんに頼んでやってもらわなければならないので、ちょっと大事なので、ずっと先延ばしになってる。
その檜ぶろが新品みたいになって、いつもの三倍くらい濃厚な檜の香りをさせている。
風呂桶は、同じく檜のが四つあるんだけど、一つだけがピカピカ。
むろん、他の所も普通には掃除が済んでいて、あとはお湯を張ったらおしまいというくらいになっている。
あやかしの仕業だなあ……。
膝まで上げたジャージの裾を戻して部屋に戻る。
「よ、お帰り(^▽^)/」
そいつが居た。
ほら、わたしにソックリな二丁目断層。
わたしと同じジャージで、ベッドの上で胡座をかいている。
「やっぱり、あんた……てか、いつから居たの!?」
さっき着替えた時は居なかったよ。
「お風呂に驚いてからの方がいいと思ってな、隠れてた(^▽^)/」
こいつ、着替えるとこ見てたのか(;'∀')。
「いいじゃないか、同じ姿かたちなんだし。いやな、ちょっと友情の印に掃除しといてやろうかと思ったら、嬉しいことに檜ぶろじゃないか。つい力が入っちまった。ぜんぶやっとこうかと思ったんだけど、家の者がビックリしたら困るだろうって、風呂桶一個きれいにしたところで気が付いてなあ、あ、お礼とかはいいからな」
「……どうも、ありがとう」
下手に苦情を言ったらこじれそうな気がして、取りあえずお礼を言っておく。
「まあ、座ってくれよ」
まるで、自分の部屋みたいにベッドの横をホタホタ叩く。
「実は、一人の女の子を紹介したくってなあ」
「女の子?」
「うん」
短く返答すると、二丁目断層の頬がポッと赤くなった……。
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教頭先生
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