やくもあやかし物語

武者走走九郎or大橋むつお

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86『シラミ地蔵』

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やくもあやかし物語

86『シラミ地蔵』    




 俊徳丸さん?


 ちょっと驚いた。

 俊徳丸っていうのは……いつごろだろう?

 ネットで調べても、室町時代には一般的に知られている。

 太平記でも『弱法師(よろぼうし)』の謡曲で出てくるから、鎌倉? もっと前の平安? 奈良? もっと前?

 とにかく大昔だから、名前も分からない大昔の和服だと思っていた。

 それが、目の前に立っているのは、今風の、どこかの有名私学の男子生徒って感じの制服姿。


「アハハ、昔のまんまだったら、みんな目を回すか、通報されてしまうからね」


「あ……ああ、そうですよね(^_^;)」

 ということは、この俊徳丸さんは、人から見えているんだ。

「うん、姿を消すこともできるんだけどね、普通に溶け込んで道を歩くのには見えていた方がいいんだよ」

「そうなんですか?」

「姿を消していても、霊感の強い人には見えることもあるんだ。ビックリさせたり、事故の原因になったりするからね。普通に見えるようにしている」

「そうなんだ……あ、わたし小泉やくもです。初めまして。あ、イコカありがとうございました」

「どういたしまして、僕の方からお願いしたことだから。ま、とりあえず自己紹介を兼ねて会っておこうということで、よろしく」

「あ……」

 握手の手を伸ばしてきたので、ちょっとたじろぐ。

「あ、そうだ。コ□ナだったよね(^_^;)」

 菅さんとジョンソン首相みたく、肘をくっつけ合って挨拶する。

「ハハハ、これって、やっぱ、笑っちゃいますね」

「だね。ぼくはコ□ナなんて関係ないんだけどね。まあ、なにごとも世間の例に倣って間違いはないよ」

「えと……これが、シラミ地蔵さんなんですよね?」

 カギ型の角の祠を指さす。

「うん、そうだよ」

「意外にきれい……あ、ごめんなさい」

「地元の人たちがきれいにしてくれてるからね……ひょっとして、虱の地蔵だと思った?」

「え、あ、いえ……」

「アハハ、そうか((´∀`))。もしかしたら、虫刺されの薬とかもってきた?」

「え、いや、そんなあ( ´艸`)」

 言いながらポシェットを背中に隠すんだから意味がない。

「『シラミ』っていうのはね、ぼくが四天王寺で乞食をしていたころね。ぼくは、四天王寺には泊まらないで、歩いて高安まで帰っていたんだ」

「通いの乞食さんだったんですか?」

「うん。四天王寺さんは優しいお寺でね。僕たちみたいな乞食が泊まり込んでも、追い出されたりはしないんだけどね。やっぱり、ぼくは高安の人間だし、たとえ住む家を失っても夜になったら帰らなくっちゃって思ってね」

「乙姫さんが、いたからですか?」

「アハハ、それもあるかなあ」

 笑うとかわいい。きっと、乙姫さんだけではなく、ファンが多かったんだろうね。

「それで、夜に四天王寺をたつと、ちょうど明け方に、このあたりに着くんだよ。すると、高安山の向こうから日が昇ってきて、このあたりがほのかに白み始めてね……」

「え?」

「だから、このあたりで白み始めて。それが、とても素敵だから。ね……」

「それで『シラミ地蔵』?」

「うん」

 アハ アハハハハハハ……

 悪いけど笑っちゃう。

 アハハハハハハハハハ……

 すると俊徳丸さんもいっしょになって笑ってしまって。

 いつのまにか、ご近所のお年寄りも集まってきて、いっしょにワハハと笑ってしまう。

「いやあ、俊くん。今日は彼女といっしょなんか(^▽^)/」

「アハハ、まあ、そんなとこです」

「あんた、イケメンやさかいなあ」

「まあ、アメチャンでも食べえなあ」

 アメチャンを二個ずつもらった。

「どうも、いつもありがとう。でも、ちょっと、彼女連れていきたいとこがあるんで、失礼します。ごめんね」

「ああ、そうかいな」

「ええなあ、若いもんは」

「あは、どうも」

「どうも」

 って、どこに行くんだろう?




☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
教頭先生
小出先生      図書部の先生
杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん       図書委員仲間
あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸

 
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