4 / 109
04〔明日香の初詣〕
しおりを挟む
明神男坂のぼりたい
04〔明日香の初詣〕
男坂を登れば、すぐ神田明神なんだけど、初詣は元日を外して二日にしている。
理由はね、元日は混むから。
なんといっても東京で一番の神社、江戸の総鎮守っていうくらいだから、大晦日から元日にかけての混みようはハンパじゃない。
本当はね、ひと様と一緒に元日に初詣したいよ。
でもね、あたしは、子どものころから体が弱かった。
四つのとき、いろいろの都合で男坂の家に越してきた。
元々、鈴木の家はここなんだ。
でも、去年亡くなったお祖母ちゃんが「もう、この足腰じゃ男坂は心細くって」と言うので、一家をあげて越してきた。大きくなってからは、単に坂の上り下りのことじゃないって分かるんだけどね、その時は、そう思ってた。
神田明神なら、男坂でなくっても、ちょっと遠回りになるけど、正面の大鳥居から入ればいいんだけどね。
生まれてこのかた、男坂から上っていくのが鈴木家の流儀だった。
越してきて、子ども心に思った。
男坂のぼりたい!
越して間もないころに奇跡を見たんだ。
表に出たら、ちょうど、男坂の向こうに夕陽が落ちていくところ。
いっしゅん夕陽が目に飛び込んで目をつぶる。
宇宙戦艦ヤマトが波動砲を撃った瞬間! そんな感じ!
波動砲撃つ時って、砲手の古代くんが言うじゃん。
「対ショック、対閃光防御!」
そんな掛け声で、乗組員全員がゴーグルかけんの。
そんで、ドバーーー! いや、ビシャーーー! いや、ドッカーーーン!?
そんな感じでぶっ放した時の、画面のエフェクトみたいな。
『君の名は』で、流星がドビビシャーーーン!! 落ちて来たみたいな。
そんな、おっかなくも、荘厳なインパクト!
サードインパクトだったら人類補完計画を発令しなくちゃいけないような?
そんな、ハルマゲドン? 神の啓示?
そんな、メガトン級プラマイインパクト!
で、ちょっと落ち着いて考えたら、坂の上はお馴染みの神田明神。
神田明神は、それこそ、お宮参りから、七五三、神田祭に初詣、幼心にも『うちの神さま』『あたしの守り神』的な!
それが、なにかの神託みたく、光となって四つのあたしを包み込んだ!
ちょっと大きくなって『風の谷のナウシカ』見た時に、ラスト、ナウシカがさ、オウムたちの触角が伸びて金色の野に降り立ったみたいな!?
ああ、あたしは神の子、神に選ばれし奇跡の子!
そんなふうに思ったわけさ(^_^;)
でね。
一人で、男坂をヨチヨチ上がっていった。
よいしょ よいしょ よいしょ
でも、たった四つで、人よりも弱い子でさ。
もう、途中でゼーゼー。
男坂って、途中五か所の踊り場があるんだ。
その踊り場は、すぐ目の上に見えるわけだから、とりあえず、そこまで上がってみようって思う。
それでね、三つ目の踊り場まで上って、クラってきた。
そして、光に包まれたまま天地がひっくり返って、空中に放り出された。
光がね、神田明神のトレードマークのナメクジ巴みたくグルグル回って迫って来る。
その時、見えたんだよ。
明神さまが。
ナメクジ巴の真ん中から、顔が現れて、あたしに言うんだ。
―― ようこそ あすか ――
ナメクジ巴が、もっとグルグルして、あすかは、ポンポンポンて弾んでいくんだ。
するとね、神田明神のご家来みたいな人の手がフワって受け止めてくれて。
気が付くと、それはダンゴ屋のおばちゃんの手だった。
「だいじょうぶかい!?」
「え? え?」
「だめだよ、ひとりで男坂上がったりしちゃあ……あたま打ってないかい? 手は? 足は? どこも打ってないかい? イタイイタイはないかい?」
おばちゃんは真剣に聞いてくれて、その真剣さが、なんだか怖くって、明日香は声をあげて大泣きしちゃって。
すると、ご近所の人や、お参りの人たちが寄ってきて。
そのうちに、お母さんもお祖母ちゃんも、坂の上からは巫女さんまで下りてきて、救急車までやってきた。
男坂の真ん中から転げ落ちたというのに、タンコブ一つできなかった。
これは、明神様のおかげだよ!
お祖母ちゃんは大感激して、お母さんは、ちょっと困った顔になって、お父さんは一歩下がって収まった。
お祖母ちゃんの強い意思で、御神酒もってお参りして、幣(ぬさ)ってハタキの親分みたいなのでバサバサってやってもらって、神主さんがゴニョゴニョ、そして、お札をもらってうちの神棚に上げた。
それからね、神田明神は明日香の神さま。
「大晦日から元日は混みますからね、二日とか三日でもいいですよ、なあに、ご利益は変わりません」
そう言ってくださったので、明日香の初詣は二日の朝。
先祖代々元日にお参りしていたお祖母ちゃんも、二日に合わせてくれて。鈴木家のやり方に収まった。
というわけで、今年もめでたく初詣しましたって、報告でした(^_^;)。
04〔明日香の初詣〕
男坂を登れば、すぐ神田明神なんだけど、初詣は元日を外して二日にしている。
理由はね、元日は混むから。
なんといっても東京で一番の神社、江戸の総鎮守っていうくらいだから、大晦日から元日にかけての混みようはハンパじゃない。
本当はね、ひと様と一緒に元日に初詣したいよ。
でもね、あたしは、子どものころから体が弱かった。
四つのとき、いろいろの都合で男坂の家に越してきた。
元々、鈴木の家はここなんだ。
でも、去年亡くなったお祖母ちゃんが「もう、この足腰じゃ男坂は心細くって」と言うので、一家をあげて越してきた。大きくなってからは、単に坂の上り下りのことじゃないって分かるんだけどね、その時は、そう思ってた。
神田明神なら、男坂でなくっても、ちょっと遠回りになるけど、正面の大鳥居から入ればいいんだけどね。
生まれてこのかた、男坂から上っていくのが鈴木家の流儀だった。
越してきて、子ども心に思った。
男坂のぼりたい!
越して間もないころに奇跡を見たんだ。
表に出たら、ちょうど、男坂の向こうに夕陽が落ちていくところ。
いっしゅん夕陽が目に飛び込んで目をつぶる。
宇宙戦艦ヤマトが波動砲を撃った瞬間! そんな感じ!
波動砲撃つ時って、砲手の古代くんが言うじゃん。
「対ショック、対閃光防御!」
そんな掛け声で、乗組員全員がゴーグルかけんの。
そんで、ドバーーー! いや、ビシャーーー! いや、ドッカーーーン!?
そんな感じでぶっ放した時の、画面のエフェクトみたいな。
『君の名は』で、流星がドビビシャーーーン!! 落ちて来たみたいな。
そんな、おっかなくも、荘厳なインパクト!
サードインパクトだったら人類補完計画を発令しなくちゃいけないような?
そんな、ハルマゲドン? 神の啓示?
そんな、メガトン級プラマイインパクト!
で、ちょっと落ち着いて考えたら、坂の上はお馴染みの神田明神。
神田明神は、それこそ、お宮参りから、七五三、神田祭に初詣、幼心にも『うちの神さま』『あたしの守り神』的な!
それが、なにかの神託みたく、光となって四つのあたしを包み込んだ!
ちょっと大きくなって『風の谷のナウシカ』見た時に、ラスト、ナウシカがさ、オウムたちの触角が伸びて金色の野に降り立ったみたいな!?
ああ、あたしは神の子、神に選ばれし奇跡の子!
そんなふうに思ったわけさ(^_^;)
でね。
一人で、男坂をヨチヨチ上がっていった。
よいしょ よいしょ よいしょ
でも、たった四つで、人よりも弱い子でさ。
もう、途中でゼーゼー。
男坂って、途中五か所の踊り場があるんだ。
その踊り場は、すぐ目の上に見えるわけだから、とりあえず、そこまで上がってみようって思う。
それでね、三つ目の踊り場まで上って、クラってきた。
そして、光に包まれたまま天地がひっくり返って、空中に放り出された。
光がね、神田明神のトレードマークのナメクジ巴みたくグルグル回って迫って来る。
その時、見えたんだよ。
明神さまが。
ナメクジ巴の真ん中から、顔が現れて、あたしに言うんだ。
―― ようこそ あすか ――
ナメクジ巴が、もっとグルグルして、あすかは、ポンポンポンて弾んでいくんだ。
するとね、神田明神のご家来みたいな人の手がフワって受け止めてくれて。
気が付くと、それはダンゴ屋のおばちゃんの手だった。
「だいじょうぶかい!?」
「え? え?」
「だめだよ、ひとりで男坂上がったりしちゃあ……あたま打ってないかい? 手は? 足は? どこも打ってないかい? イタイイタイはないかい?」
おばちゃんは真剣に聞いてくれて、その真剣さが、なんだか怖くって、明日香は声をあげて大泣きしちゃって。
すると、ご近所の人や、お参りの人たちが寄ってきて。
そのうちに、お母さんもお祖母ちゃんも、坂の上からは巫女さんまで下りてきて、救急車までやってきた。
男坂の真ん中から転げ落ちたというのに、タンコブ一つできなかった。
これは、明神様のおかげだよ!
お祖母ちゃんは大感激して、お母さんは、ちょっと困った顔になって、お父さんは一歩下がって収まった。
お祖母ちゃんの強い意思で、御神酒もってお参りして、幣(ぬさ)ってハタキの親分みたいなのでバサバサってやってもらって、神主さんがゴニョゴニョ、そして、お札をもらってうちの神棚に上げた。
それからね、神田明神は明日香の神さま。
「大晦日から元日は混みますからね、二日とか三日でもいいですよ、なあに、ご利益は変わりません」
そう言ってくださったので、明日香の初詣は二日の朝。
先祖代々元日にお参りしていたお祖母ちゃんも、二日に合わせてくれて。鈴木家のやり方に収まった。
というわけで、今年もめでたく初詣しましたって、報告でした(^_^;)。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる