明神男坂のぼりたい

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
20 / 109

20〔明日香の道草〕

しおりを挟む
明神男坂のぼりたい

20〔明日香の道草〕  


        

 放課後、直ぐに帰れるのは嬉しい!

 今までは部活で時間とられて、冬至前後の今日この頃、学校出るのは日が落ちてからだった。


 それが、明るいうちに出られる!

 なんという開放感!


 混みまくりの昇降口も、登校時はあんなにウットウシイのに、帰りは嬉しい!

 嬉しいついでに外堀通りも超えてしまって水道橋駅。

 電車組の子は、ここから電車に乗る。

 だから、その流れに乗って、そのまま電車に乗ってしまう。

 これはスイカのせいだよ。

 スイカがなければ、わざわざ切符を買わなきゃいけなくって、その時の気分は券売機で切符買ってまでではない。

 もし、切符を買わなきゃならないんだったら、お財布を開けた時点で断念してる。

 バイトもやってない女子高生のお財布は野口君が二人の他は、コインが入ってるだけ。

 改札にスイカを掲げると残額は3600円。

 こないだ石神井に行くときにチャージした残り。石神井に行くって言ったら、お父さん樋口一葉をくれたからね。

 まあ、片道1800円のトリップはできるわけさ。

 ラッキー!

 乗った車両は急行仕立てで、二人がけの前向きシート。進行方向に向かって座ると、ちょっとした旅行気分。

 もちろん御茶ノ水で降りるわけもなく、そのまま東へ電車は進む。


 空で飛行機が止まってる……ように見える。動いてるものから、動いてるもの見ると止まってるように見える。物理で習ったナンチャラいう現象で、田舎の見通しのいい田んぼの中の交差点で交通事故が起こるのは、このせいらしい。しかし、ジェット機が空中で止まってるのは、なんともシュール。

 アキバで、ドカドカと人が乗ってくる。

 オケツの大きいオバチャンが「ごめん」も言わずに横に座ってきた。

 ウットウシイ。

 オバチャンの温もりを肌で感じる。まあ、オッサンが座るよりはいいけど……「ごめん」の一言があったら、お互い様と思えて、温もりも、こんなにキショイとは思わないんけどなあ。このオバチャンはきっと大阪出身にちがいない……とっさに感じたのは箱根から西に行ったのは修学旅行だけというわたしの偏見。大阪の人、ごめんなさい。

 浅草橋で、また人が乗ってくる。乗車率120%くらい? ちょっと暑苦しい。

 ガタンゴトン ガタンゴトン

 電車は両国橋を渡る。

 両国橋って、武蔵と下総を跨ってるから両国橋……シャクジイ(石神井のお祖父ちゃん)が言ってた。

 なんか国境を超えた感じ。

 国技館とかも見えてきて、ちょっとトリップからトラベルの気分。

 トラベルはトラブルに通じる。

 この先乗っていても、あまり目新しいものは無い。

 それで、両国駅で下りて上りに乗り換え。

 アキバでお散歩するにはお財布が寂しいのでお茶の水で下りて……家に帰るのも癪なので、反対方向の南へ。

 
 そうだ、図書館があった!


 区の図書館の分館で『神田まちかど図書館』があるのを思い出す。

 子どものころ、お父さんと散歩というと、このコースだった。

 見かけはでっかいビルディングなんで、初めての時はビックリしたけど千代田小学校・千代田幼稚園・教育研究所とかの複合施設の一階部分の、そのまた半分くらい。

 一階の新刊書コーナー…………なんかないかなあ。

 え、うそ、あった!

「まどか 乃木坂学院高校演劇部物語」

 この本は、中味はいいらしいんだけど、表紙が今イチ。それにラノベとしては高すぎる1200円プラス税。一回ジュンク堂で見たけど、以上の二つの理由でやめた。他にも二冊借りよう思ったけど、読まずに返す確率高いから、これだけにしとく。

 失いかけてた図書館ルートの散歩道が復活。
 
 図書館を出て、道草もここまで。真っ直ぐ我が家を目指す。

 湯島の聖堂の角を曲がって見てはいけない後姿を発見! 

――  関根先輩!  ――

 なんで関根先輩……それも、美保先輩と仲良しそうに。


 気がついたら、制服のまま自分のベッドでひっくり返っていた。涙が一筋横に流れていく。

 しょうもない道草になってしまった。

 あれ?

 明神さまに挨拶した記憶が無い。

 明日、二日分しとこう……。




※ 主な登場人物

 鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
 東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
 香里奈          部活の仲間
 お父さん
 お母さん
 関根先輩         中学の先輩
 美保先輩         田辺美保
 馬場先輩         イケメンの美術部
 佐渡くん         不登校ぎみの同級生
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...