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79〔麻友の機嫌が悪い……〕
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明神男坂のぼりたい
79〔麻友の機嫌が悪い……〕
おはようというとスマホが飛んできた!
とっさに「なにをもったいない!」と、真剣スマホどり。
「どうしたの?」
反射的に声をかける。教室の空気が割れかけのガラスみたいになってる。
新垣麻友が泣き崩れて、副委員長の南ラファがなだめ、他の者は凍り付いている。
――なかなかの呼吸だ――と、だんご屋定休日のさつきが合いの手を入れる。
「スマホにあたってもラチあかないよ。南さんの?」
「ううん、麻友の。スマホの画面見て」
友だちの麻友とは言え、人のスマホ――いいの?――という気持ちで麻友に目線を送る。泣いてるけど否定しないということは承諾のサイン。画面にはウィキペディアの「渋谷カーニバル」の項目が出てた。5秒で読んで意味が分かった。
―― 毎年10月に、渋谷で開かれていた『渋谷フェスティバル』のイベント。今年度は中止の方向 ――
「ああ、そうなんだ……」
関係機関の財政難と道路工事の関係やら諸般の事情で今年度の開催は見送られたと書いてある。
思い出した、渋谷フェスティバルは、前の都知事のころに廃止になっていた。今はパレードのカーニバルだけが残っていた。あたしも小さいころに保育所の仲間と観に行ったことがある。もっともマナブくん(関根先輩)のことが気になって、パレードそのものは、よく見てない。
お祭りというと神田明神が頭にあるから。廃止になったことも、よく覚えてなかった。
そして、もう一つ思い出した。一昨日のプールの更衣室で「今年の渋谷カーニバルには出るから、観に来てよ!」言ってたことを。
麻友は、パッと見では清楚な女子高生だけど、中身はバリバリのラテン系。一昨日のプールでは、いかんなく、そのラテンぶりを発揮していた。
「そうだ、こういうイベントって、あちこちでやってるから問い合わせてみたら?」
登校してきた美枝が気を利かして提案した。
「ありがとう、みんな。あたしの発作的なカーニバル熱に付き合ってくれて」
朝礼が始まるころには、さすがに麻友は落ち着いた。だけど納得したわけじゃない。クラスのみんなの友情的な対応が麻友を落ち着かせたんだ。
麻友応援活動は、一時間目後の休憩時間に検索したり問い合わせたりするとこから始まった。
結論はすぐに出た。
「東京近辺は見当たらないねえ」美枝が冷静な声で言った。こういう手配と、行動力は美枝が、やっぱり一番。ラブホのときもそうだったしね。
麻友は、表面張力ギリギリのとこで、自分を保ってた。なんとかしてあげなきゃ!
「そうだ、人がしてくれないんだったら、あたしたちでやればいいんだ!」
美枝が飛躍した……。
うまい具合に二時間目の先生が来るのが5分遅れたので、南ラファと中尾美枝の二人が教壇に立って決めてしまった。
「文化祭でリオのカーニバルやろ!」
勢いというのは恐ろしいもので、その場の熱気で決まってしまった。あたしたちの2年3組は全校で一番早く文化祭の取り組みが決まってしまった。まだ、文化祭の公示も始まってないのに!
家に帰ってから、小さな疑問が湧いた。
麻友のサンバ好きはよく分かる。なんといってもブラジルの子だしね。そのわりにはサッカーに興味が無い。こないだから始まってるワールドカップも、あの子の口からサッカーの話題が出たことがないよ……。
79〔麻友の機嫌が悪い……〕
おはようというとスマホが飛んできた!
とっさに「なにをもったいない!」と、真剣スマホどり。
「どうしたの?」
反射的に声をかける。教室の空気が割れかけのガラスみたいになってる。
新垣麻友が泣き崩れて、副委員長の南ラファがなだめ、他の者は凍り付いている。
――なかなかの呼吸だ――と、だんご屋定休日のさつきが合いの手を入れる。
「スマホにあたってもラチあかないよ。南さんの?」
「ううん、麻友の。スマホの画面見て」
友だちの麻友とは言え、人のスマホ――いいの?――という気持ちで麻友に目線を送る。泣いてるけど否定しないということは承諾のサイン。画面にはウィキペディアの「渋谷カーニバル」の項目が出てた。5秒で読んで意味が分かった。
―― 毎年10月に、渋谷で開かれていた『渋谷フェスティバル』のイベント。今年度は中止の方向 ――
「ああ、そうなんだ……」
関係機関の財政難と道路工事の関係やら諸般の事情で今年度の開催は見送られたと書いてある。
思い出した、渋谷フェスティバルは、前の都知事のころに廃止になっていた。今はパレードのカーニバルだけが残っていた。あたしも小さいころに保育所の仲間と観に行ったことがある。もっともマナブくん(関根先輩)のことが気になって、パレードそのものは、よく見てない。
お祭りというと神田明神が頭にあるから。廃止になったことも、よく覚えてなかった。
そして、もう一つ思い出した。一昨日のプールの更衣室で「今年の渋谷カーニバルには出るから、観に来てよ!」言ってたことを。
麻友は、パッと見では清楚な女子高生だけど、中身はバリバリのラテン系。一昨日のプールでは、いかんなく、そのラテンぶりを発揮していた。
「そうだ、こういうイベントって、あちこちでやってるから問い合わせてみたら?」
登校してきた美枝が気を利かして提案した。
「ありがとう、みんな。あたしの発作的なカーニバル熱に付き合ってくれて」
朝礼が始まるころには、さすがに麻友は落ち着いた。だけど納得したわけじゃない。クラスのみんなの友情的な対応が麻友を落ち着かせたんだ。
麻友応援活動は、一時間目後の休憩時間に検索したり問い合わせたりするとこから始まった。
結論はすぐに出た。
「東京近辺は見当たらないねえ」美枝が冷静な声で言った。こういう手配と、行動力は美枝が、やっぱり一番。ラブホのときもそうだったしね。
麻友は、表面張力ギリギリのとこで、自分を保ってた。なんとかしてあげなきゃ!
「そうだ、人がしてくれないんだったら、あたしたちでやればいいんだ!」
美枝が飛躍した……。
うまい具合に二時間目の先生が来るのが5分遅れたので、南ラファと中尾美枝の二人が教壇に立って決めてしまった。
「文化祭でリオのカーニバルやろ!」
勢いというのは恐ろしいもので、その場の熱気で決まってしまった。あたしたちの2年3組は全校で一番早く文化祭の取り組みが決まってしまった。まだ、文化祭の公示も始まってないのに!
家に帰ってから、小さな疑問が湧いた。
麻友のサンバ好きはよく分かる。なんといってもブラジルの子だしね。そのわりにはサッカーに興味が無い。こないだから始まってるワールドカップも、あの子の口からサッカーの話題が出たことがないよ……。
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