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19『服部課長代理』
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くノ一その一今のうち
19『服部課長代理』
東京駅中央口で地上に上がって二回角を曲がると徳川物産の本社ビル。わたしのバイト先。
地上に出ると、信号が赤になったところで、変わったばかりの赤信号が服部課長代理のネクタイピンの飾りに見える。
見えたから、思い出してしまう。
「豊臣家の係累は二つある。一つは、君も知っている鈴木まあやだ」
「え、まあやが?」
「そうだ。秀頼から数えて五代目で別れた家柄でな、代々江戸の薩摩藩邸で饗応を受け持っていた」
「キョウオウ?」
「ああ、接待係だな。大名の付き合いというのは格式に縛られている。たとえば、徳川と云っても、宗家以外に御三家、御三卿、分家があってな。三つ葉葵の紋所だけで28種類もある。都の貴族や寺社とのつきあいもあるしな。相手に寄って、対応を変えなければならない。豊臣家は秀吉の代から朝廷との関りも深くて、そういう格式に明るい。そこをかわれて、いわば接待指南係という扱いだった」
まあやが指南役……ちょっとイメージが違う。
「話は途中だ」
み、見透かされてる(;'∀')
「江戸も元禄を迎えるころになると、付き合いの半分は江戸や大坂の大商人たちだ。こういう道にも豊臣家は長けていた。曾呂利新左衛門や道頓、堺の会合衆との絆があったし、商人たちの中には、鈴木家が豊臣の末であることに薄々気が付いていた節がある」
「そ、そうなんですか」
まあやの人懐っこさと、可愛らしさが、とんでもないものに思えてきた。
「もう一つの豊臣家は、秀吉の旧姓の木下を名乗って幕末を迎え、現在に至っている」
「そうか、それで、鈴木の豊臣家を援助してるんですね」
「先走るな」
「はい」
「徳川物産は、鈴木、木下、両方に関りを持っている」
「両方?」
「今は、鈴木まあやにだけ関わっていればいい。ただ、そういう背景があるということを理解していればいい」
「はい」
「何度も言っているが、お前は、早とちりの傾向がある。さっき、警官姿で近づいた時のリアクションは、完全に失敗だ」
「あ、はい……」
「いきなり信号機の上になんかジャンプしおって、三人写真を撮っていたぞ」
「え、三秒も無かったと思うんですけど!」
「三秒あれば、十分に撮影できる。ブロガーやユーチューバを甘く見るな」
「すみませんでした」
「分かればいい、写真はスマホごとクラッシュさせてある」
ああ……自己嫌悪で天井を仰いで、視線を戻した時には、もう課長代理の姿は無くって、例のロボットが、いろいろ説明してくれた。
で、ロボットの説明によると、今日は総務二課の模様替えをやるらしい。
作業着も新品を支給してくれるらしい。百地芸能に不満は無いんだけど、あのヨレヨレの石鹸臭いジャージはごめんだからありがたい。
昨日のあれこれを思い浮かべて、二つ目の角を曲がる。
え!?
本社ビルの前には、百地芸能のトラックが大荷物を積んで停車していた。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母
百地三太夫 百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
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「え、まあやが?」
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「キョウオウ?」
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「そ、そうなんですか」
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「そうか、それで、鈴木の豊臣家を援助してるんですね」
「先走るな」
「はい」
「徳川物産は、鈴木、木下、両方に関りを持っている」
「両方?」
「今は、鈴木まあやにだけ関わっていればいい。ただ、そういう背景があるということを理解していればいい」
「はい」
「何度も言っているが、お前は、早とちりの傾向がある。さっき、警官姿で近づいた時のリアクションは、完全に失敗だ」
「あ、はい……」
「いきなり信号機の上になんかジャンプしおって、三人写真を撮っていたぞ」
「え、三秒も無かったと思うんですけど!」
「三秒あれば、十分に撮影できる。ブロガーやユーチューバを甘く見るな」
「すみませんでした」
「分かればいい、写真はスマホごとクラッシュさせてある」
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え!?
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