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57『ホームズのメモ』
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くノ一その一今のうち
57『ホームズのメモ』
スタジオに入ると、幾つもあるセットの中、ホームズの探偵事務所だけに明かりが灯っていた。
雑然としたところは相変わらず。でも、二回目なのか、メインのテーブルは直ぐに分かった。
板ガラスと緑のフェルトの間には、様々なメモやら地図やら領収書やらが挟まれていて、大方は黄ばんでしまった中に、まだ白さを保ったメモが目に留まった。
――お宝は大阪城内にある模様だが、大阪城のどこであるかは不明――
なんだ、そのことは、とっくに知っている。
「下に、もう一枚あります」
えいちゃんが見つけたそれは、黄ばんだメモの中に紛れていて、一見しただけでは分からない。横着なのか、探偵らしく擬装したのかは判断しにくい。
――空堀の坂道で木下の連中が目撃されている――
空堀の坂道!?
これは有力な情報だ!
「えいちゃん、大阪城に行くよ!」
「はい!」
足元に注意しながらセットを出る。ホームズの事務所も散らかってるけど、スタジオのフロアは照明のケーブルや道具やらが散らばっている。隣のセットにも明かりがともったので、比較的楽にスタジオの扉にたどり着けた。
大阪の地理には不案内だけど、大雑把には調べた。地理情報の収集は忍者の基本。
大阪は東京に比べて300平方キロメートルも狭く、山手線と環状線の内側で比べると大阪は東京の半分も無い。
下手にタクシーを待つよりは公共交通機関を使った方が早い。
「あ、ここから先は……」
撮影所の門を出たところでえいちゃんが立ち止まる。
「どうした?」
「わたし二次元だから、このままリアルには出られません」
「え、あ、そうか」
えいちゃんはポスターから抜け出したばかりで、まだ奥行きが無い。わたしには、横向きであろうと後ろ向きであろうと、平面の側を見せてくれるので、二次元だと言うことは忘れていた。
「よし、じゃあ、こうしよう!」
「え、あ、ちょ……」
四の五の言わせず、えいちゃんをクルクル巻いてカバンに突っ込む。学校帰りにアキバでポスターをゲットしたJKの感じだ。
撮影所の前の橋を渡ると長瀬川沿いの二車線の道路、右を向くと緩くカーブした先に長瀬駅が見える。
とっとと歩く、ちょうど下校時間と重なって、駅に向かう高校生や大学生に紛れる。
『地味に目立ちますね』
丸めたままのえいちゃんが心配する。わたしは東京の制服のまま、地元のK付属高校の制服とは、ちょっと違う。
「大丈夫よ、これでどう?」
制服は変えられないけど、少しだけ背中を丸めて緊張感を抜き、歩く速さを高校生たちに合わせる。
『あ、溶け込みましたね!』
骨柄はまあやにソックリだけど、顔のパーツは地味子そのもの。周囲の人たちは犬が歩いているほどにも気を停めない。
面倒だけど切符を買う。ICカードだと履歴が残るからね。
長瀬駅は先頭車両が地獄のように混む。
スタスタ歩いてホームの後ろの方へ、ちょうどやってきた上六行きの普通に乗る。
電車は長瀬駅を過ぎて高架になる。途中JR東線を跨ぐので、けっこう高く、進行方向左側の窓からは大阪の街が一望に見渡せる。
ああ、あれがあべのハルカス……ビルとしては日本で一番高い。
他に高いビルが無いので格好のランドマーク、少し北に目を向けると通天閣、ちょっと低くて地上に降りたら目印にはなりにくい。大阪城はもう少し北……これは見えない。
ざっと見渡して環状線の内側なら、自分の脚で走っても40分もあればどこにでも行ける。
この任務、あたりを付けるところまでなら比較的簡単に済むかもしれない。
少し冷静になったところで、景色が回る、布施駅が近づいて電車は大きく西に首を振った。
鶴橋に向かって環状線に乗り換えれば、三つ目が大阪城公園。
しかし、大阪城の中心に至るには手前の森ノ宮駅で降りた方が早い。
ざっと下調べしただけだが、もう半分済んだような気になった。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん 照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
57『ホームズのメモ』
スタジオに入ると、幾つもあるセットの中、ホームズの探偵事務所だけに明かりが灯っていた。
雑然としたところは相変わらず。でも、二回目なのか、メインのテーブルは直ぐに分かった。
板ガラスと緑のフェルトの間には、様々なメモやら地図やら領収書やらが挟まれていて、大方は黄ばんでしまった中に、まだ白さを保ったメモが目に留まった。
――お宝は大阪城内にある模様だが、大阪城のどこであるかは不明――
なんだ、そのことは、とっくに知っている。
「下に、もう一枚あります」
えいちゃんが見つけたそれは、黄ばんだメモの中に紛れていて、一見しただけでは分からない。横着なのか、探偵らしく擬装したのかは判断しにくい。
――空堀の坂道で木下の連中が目撃されている――
空堀の坂道!?
これは有力な情報だ!
「えいちゃん、大阪城に行くよ!」
「はい!」
足元に注意しながらセットを出る。ホームズの事務所も散らかってるけど、スタジオのフロアは照明のケーブルや道具やらが散らばっている。隣のセットにも明かりがともったので、比較的楽にスタジオの扉にたどり着けた。
大阪の地理には不案内だけど、大雑把には調べた。地理情報の収集は忍者の基本。
大阪は東京に比べて300平方キロメートルも狭く、山手線と環状線の内側で比べると大阪は東京の半分も無い。
下手にタクシーを待つよりは公共交通機関を使った方が早い。
「あ、ここから先は……」
撮影所の門を出たところでえいちゃんが立ち止まる。
「どうした?」
「わたし二次元だから、このままリアルには出られません」
「え、あ、そうか」
えいちゃんはポスターから抜け出したばかりで、まだ奥行きが無い。わたしには、横向きであろうと後ろ向きであろうと、平面の側を見せてくれるので、二次元だと言うことは忘れていた。
「よし、じゃあ、こうしよう!」
「え、あ、ちょ……」
四の五の言わせず、えいちゃんをクルクル巻いてカバンに突っ込む。学校帰りにアキバでポスターをゲットしたJKの感じだ。
撮影所の前の橋を渡ると長瀬川沿いの二車線の道路、右を向くと緩くカーブした先に長瀬駅が見える。
とっとと歩く、ちょうど下校時間と重なって、駅に向かう高校生や大学生に紛れる。
『地味に目立ちますね』
丸めたままのえいちゃんが心配する。わたしは東京の制服のまま、地元のK付属高校の制服とは、ちょっと違う。
「大丈夫よ、これでどう?」
制服は変えられないけど、少しだけ背中を丸めて緊張感を抜き、歩く速さを高校生たちに合わせる。
『あ、溶け込みましたね!』
骨柄はまあやにソックリだけど、顔のパーツは地味子そのもの。周囲の人たちは犬が歩いているほどにも気を停めない。
面倒だけど切符を買う。ICカードだと履歴が残るからね。
長瀬駅は先頭車両が地獄のように混む。
スタスタ歩いてホームの後ろの方へ、ちょうどやってきた上六行きの普通に乗る。
電車は長瀬駅を過ぎて高架になる。途中JR東線を跨ぐので、けっこう高く、進行方向左側の窓からは大阪の街が一望に見渡せる。
ああ、あれがあべのハルカス……ビルとしては日本で一番高い。
他に高いビルが無いので格好のランドマーク、少し北に目を向けると通天閣、ちょっと低くて地上に降りたら目印にはなりにくい。大阪城はもう少し北……これは見えない。
ざっと見渡して環状線の内側なら、自分の脚で走っても40分もあればどこにでも行ける。
この任務、あたりを付けるところまでなら比較的簡単に済むかもしれない。
少し冷静になったところで、景色が回る、布施駅が近づいて電車は大きく西に首を振った。
鶴橋に向かって環状線に乗り換えれば、三つ目が大阪城公園。
しかし、大阪城の中心に至るには手前の森ノ宮駅で降りた方が早い。
ざっと下調べしただけだが、もう半分済んだような気になった。
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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杵間さん 帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん 長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
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