くノ一その一今のうち

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
81 / 97

80『B国潜入』

しおりを挟む
くノ一その一今のうち

80『B国潜入』そのいち 




 何度かたとえてきたが、高原の国のポジションは日暮里から西の山手線の内側に似ている。


 北方の埼玉県が、すでに軍門に下っている足立・葛飾両区を前に立て、まだ旗色を明らかにしていない台東区・荒川区を嚇し日暮里・鶯谷の崖を駆け上がって山手線の内側に攻め入ろうとしている。

 位置的にA国は荒川区、B国は台東区にあたる。

 A国はほぼ草原の国に取り込まれそうになっているが、B国は踏みとどまっている。

 高原の国の王妃はB国王室の出身で、B国皇太子はアデリヤ王女の従兄弟に当る。



 その血の繋がりに掛けて、王女とわたしは日暮里の崖を下ってB国を目指している。



 A国との国境には国境警備司令のドーカンが王女のコスを着た女性兵士を載せ、ジープで牽制に向かっている。司令部の監視哨には帝キネのポスターから抜け出てきたえいちゃん(長瀬映子)が二次元の身でありながら王女に扮装してA・B両国の目を惑わしてくれている。

 わたしと本物のアデリヤ姫は遊牧民のコスでラクダに跨ってB国の草原に紛れ入っている。

 早朝の爆発騒動は、そのA・Bどちらか、あるいは別の勢力によるものか明らかにならないまま収まって、遊牧民たちは逃げ散った羊やラクダを集めにかかっている。その中に紛れているのだ。



「よし、ここらでいいだろう」



 ラクダを下りると鞍や装具を外して放してやる。

 尻をペシペシ叩いてやると、ラクダは振り向きつつも北に向かって歩きはじめる。

「ラクダで足がつかないのですか?」

「だいじょうぶ、元々A国の草原から迷い込んできたラクダだから。じゃあ、行くわよ」

「はい」

 装具のリュックを背負って街道に向かう。



 三十分ほど歩いたところの臨時の検問所で誰何される。



「待て、おまえたちは何処へ行く」

「トゥテシ村から逃げてきたの、また、あんな爆発騒ぎがあったらかなわないから。男たちは残ってるけど、女子供はね……」

 他にも国境付近から逃げてきた者がチラホラ、見た目にも十代の少女の二人連れなので難なく通してもらえた。

「ありがとう、兵隊さん」

 リュックを揺すり上げた手には日焼け色の迷彩ドーランを塗った上に砂をまぶしてある、パッと見には分からない。

「あら」

 検問所の裏に王室のトラックが停まっている。荷台には『救護移送』の横断幕がかけられている。

「これで、避難キャンプに行けるみたいですね」

「時間が稼げる」

 荷台には、少し余裕があったけど、避難者十数名を載せてトラックはエンジンをかけた。

 荷台のスピーカが、諸注意をする。

『走行中は立ち上がらないこと、緊急の時はドライバーの指示に従ってくれ。緊急事態の時は、スピーカー横のインタホンで伝えること、行先は王室牧場、到着までは三時間だが状況しだいでは変更がある。それから、この緊急措置は皇太子殿下の発意であるから感謝すること。では、出発する』

 ブロロン……

 十分も走ると、朝から歩き詰めだった者も多く、大方の者が荷物を抱いて居眠りし始めた。

 わたしたちも、眠った風を装って二人でもたれ合う。

「王室牧場は、ちょっと王宮とは離れすぎてませんか?」

 闇語りに近い小声だけども、王女には伝わるようだ。下を向いたまま小さく応えた。

「サマルは気が小さい、おそらくはキャンプに来ている」

「それはラッキーです」

 なぜ、気が小さいとキャンプに来ているのかは分からないが、わたしの質問は姫の精神状態と健康状態を探るためのもの。しっかりした返答をしてもらったことで十分だ。

 もう一言聞いてみようかと思ったら、姫は、ほんとうに眠ってしまっていた。




☆彡 主な登場人物

風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
ミッヒ(ミヒャエル)   ドイツのランツクネヒト(傭兵)
アデリヤ         高原の国第一王女

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...