漆黒のブリュンヒルデ

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
9 / 84

009『お弁当にしなくてよかった』

しおりを挟む

漆黒のブリュンヒルデ

009『お弁当にしなくてよかった』 

 

 
 踏切を渡ると道路は混んでくる。すぐ脇の駅から出てきた生徒たちが合流するからだ。

 
 ピークには間があるので混雑と言うほどではないけど、同じ制服の群れが同じ方向に歩いているのは、なかなかの圧だ。

「おはようございます」

 駅前には通学指導の先生が立っているので挨拶。無言で通ると感じが悪いので、される前に声をかける。

「おはよう」

 定年前の原田先生は鷹揚に返してくれる。

「おはようございますぅ」

 小さな声が続いた。先生の陰に隠れるように生徒会の腕章付けた二年生がいる。芳子といっしょに当選した子だ。

 どうやら、朝の立ち番に生徒会も加わったようだ。

『顔の見える生徒会』というのが新会長・小栗結衣の方針だ。さっそく実行ということなんだ。

 勇み足という感じがする。生徒指導の前面に生徒が出るというのは感心しないが、まあ、好きにやればいい。なにごともやってみなければ分からないことってあるしね。

 流れの中に違う制服が混じっている。近所で最寄りの駅が共通のO学園だ。

 うちもO学園も小田急線の経堂を利用する者が多い。宮坂駅よりも遠いが混雑しないし便利だからだ。宮坂駅を利用するのは東急を利用した方が便利な世田谷から来る子たち。

 
 正門には五人も先生が立っている。生徒会も三人、会長の小栗と芳子、それに一年の男子。

 
「おはようございます、先輩!」

 芳子に先を越される。

「ああ、おはよう」

 芳子だから鷹揚に返す。小栗さんには目礼だけ、先生たちへの挨拶は怒声でかき消された。

「ちゃんとしてんだろーが! さわんなっ!」

 男子が呼び止められて、キレている。第一ボタンが外れて、髪の色があやしい。ああ……男子の生徒会。

「ボタンは閉めるとこだったし、髪の毛は天然だ!」

 こういうのは先生が対応すべきなのに、スカートの長さを指導していて出遅れてる。

「ちょっと、きみ」

 小栗さんが出た。

「んだよ! 関係ねーやつ出てくんな!」

「わたし会長、正門で怒鳴ったりしないで」

「そっちが怒らせっからだろーがあ!」

 なんとカバンをぶん回しだした。

「いかげんにして!」

 小栗さんは男子の手首をねじり上げた。彼女は空手道場の娘だ、軽いもんだろう。

「こっちの台詞だあ!」

 言うと同時に、男子は腕を逆に捩じった。

 小栗さんが一回転して吹っ飛んだ!

 あそこまで捻りこまれて逆回転させるのは人間業じゃない。

 小栗さんは、なんとか受け身で凌いだが、これは危ない。男子は腰を捻って蹴りの姿勢に入っている。

「待て!」

 声をかけてしまった。

 放っておいては怪我人が出る!

「なんだ!……てめえは!?」

 振り向いた男子はギョッとした。こいつ、声をかけただけで、わたしが尋常の者でないと悟った?

「こっち、こいよ」

「ち」

 舌打ちすると猛然と突進してきた! 力の差を機先を制することで挽回しようとしている!

「フン!」

 半身にかわして、腕をとって校門の外へ駆ける。

 人目があるところは避けたい。

「てめえ……何者だ!?」

 動物的な目で睨みつける男子……こいつ、獣の臭いがする!?

「自分から名乗らない奴に言う名前はない!」

 グオーー!

 吠えた口には人と思えない牙が生えて、生臭い息を吐きだした。

「消えろおおお!!」

 ドゲシ!

 渾身の蹴りを喰らわす!

 キャイーーーーーーン!

 男子は、尻尾が二股に分かれた大きな犬になって逃げ去った。

 犬の妖か……毛をむしっておいたので、いずれ後を追うこともできるだろう。

 
 大暴れしたので、カバンの中がグチャグチャ。

 お弁当にしなくてよかった(^_^;)。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...