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027『お祖父ちゃんの激辛ラーメン・1』
しおりを挟む漆黒のブリュンヒルデ・027
『お祖父ちゃんの激辛ラーメン・1』
あなたーー賞味期限迫ってますよー!
キッチンでお祖母ちゃんが叫ぶ。
「あ、ああ………(;'∀')」
隠していた0点の答案が見つけられた中学生みたいな生返事をしてノッソリとお祖父ちゃんがキッチンに足を向ける。
なんだか面白そうなので、わたしも行ってみる。
シンクの下を覗きながらため息をつく祖父母は、少々子どもじみていてほのぼのする。
しかし、シンクの下はほのぼのではない。
「どうしたの、激辛ラーメンで一杯じゃないの(*o*)」
「ちょっと辛すぎるんで、ついついな……」
お祖父ちゃんはインスタントラーメンが好きだ。
お祖母ちゃんは、あまりいい顔をしないのだが、亭主の道楽の一種だと放置している。
「気が良すぎるんですよ、あなたは」
お祖母ちゃんの話によると、こうだ……。
去年の春に日韓関係が最悪になってきたころ、お祖父ちゃんの仲間が『韓国物産祭り』というのを開いた。意気に感じたお祖父ちゃんは、そこで韓国ラーメンを箱買いしてきたのだ。
家に持ち帰って、作ってみたが、その辛さはお祖父ちゃんの辛さの概念を超えていた。
そのために、一つ食べたっきり残ってしまったのだった。
「もう、処分するしかないわね」
お祖母ちゃんは無慈悲だ。
「しかし、賞味期限だろ……消費期限じゃないしなあ……」
お祖父ちゃんは煮え切らない。
「これ、ゴミ袋に入れたら目立っちゃうよ」
老婆心ながら言ってみる。うちで一番若いわたしが老人相手に老婆心、ちょっと笑ってしまう。
「ほら、ひるでだって笑ってますよ」
「あ、お祖父ちゃんのこと笑ったんじゃ……」
遅かった、世田谷自然左翼のお祖父ちゃんは傷つきやすい。なんかフォローしなくっちゃ(;^_^A。
「任せて、なんかレシピ考えてみるよ!」
「なんとかなるかなあ?」
縋りつくようなお祖父ちゃんの期待に応えないわけにはいかない。
この異世界に来てから妖の相手ばかりしているので、こういう人間的な問題は、なんだか新鮮だ。
そうだ!
最初に思いついたのはコロンブスの卵というか、コロンブスの激辛ラーメンだ。
「お祖父ちゃん、激辛とラーメンを分ければいいんだよ」
「え?」
麺だけを茹でて、スープは冷蔵庫の中華出汁で作ってみた。
「普通に美味しいよ!」
お祖父ちゃんの元気が戻った。
「あら、意外と麺はいけるじゃないの」
お祖母ちゃんも一口食べて納得した。
「スープがもったいないなあ」
「あなたは完璧すぎるんですよ、捨てちゃえばいいじゃない」
「けど、なんだか裏切ってるみたいで……」
仲間に会った時、お祖父ちゃんは心から「美味しかったよ!」と言いたいのだ。麺だけ食べて褒めるのは、真面目なお祖父ちゃんには心苦しいのだ。
「わかった、一晩考えさせて!」
ドンと胸を叩いた二月最初の日曜日だった。
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