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041『煙の柱』
しおりを挟む漆黒のブリュンヒルデ
041『煙の柱』
ヒルデが居ながら世田谷は東京で一番の感染者数だ……まったく……たまらん……忌々しい……
そんな呟きが聞こえる。
呟いているのは地元の妖どもだ。
わたしは、この異世界では武笠ひるでという一介の女子高生だ。
だが、この異世界に来てから、多くの妖たちを浄化してやった。
浄化されて喜ぶ者ばかりではない。中には恨みに思う者も居るし、妖が浄化されたところは霊的には一種の真空地帯になってしまって、逆に呼び込んでしまうことがあるのかも知れない。
「しばらく豪徳寺を離れた方が良いかもしれませぬなあ」
焼き芋を焼きながらスクネ老人が言う。
「これを御覧なされ」
老人は懐から小さな瓢箪を出し、栓を抜くと、焚火の上に振りかけた。
パチパチパチ
振りかけた粉は小さく爆ぜて一筋の煙となって空に伸びていく。まるで煙の柱だ。
「もう少しござる」
煙は拡散することなく相当の高さに至ると変異が起こった。
「これは……!?」
スカイツリーほどの高さに至ると、上空に網目というか鉄道の路線図のような雲が現れ、煙を溶け込ませた。
「八幡の空の道でござるよ。全国の八幡を繋ぐ、云わば八幡神のネットワークでござるな。この空の道に乗れば、四万四千ある八幡社のどこにでも参れます。一たび使えば八幡の眷属としていつでも使えます」
「そうか……」
「ヒルデ殿は生真面目でござるから、雲の流れに身を任せて漂ってみられるのがよろしかろう。時の流れを遡るように念ずれば、昔にも参れます。連休が終わるまでは学校も休み、しばらく息を抜かれよ」
スクネ老人が、瓢箪をもう一振りすると、焚火の煙がわたしを包んだ。
フワリと体が浮くと、みるみるうちに、豪徳寺の空に舞い上がった。
フニャーー! 一人で行くのはずるいニャー!
足元を見ると、ねね子が煙の柱に爪を立てて駆け上がってくるのが見えた。
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