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007: ズィッヒャーブルグを目指して
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
007: ズィッヒャーブルグを目指して
Sicher Burg……ズィッヒャーブルグと読むのに30秒ほどかかった。
大学の第二外語はドイツ語だったけど、ろくに勉強していないし、乏しい知識も錆びついている。
「安全都市か……」
「え、ヒルデは分かるのか!?」
「ああ、いろんなところを相手に戦ってきたからな。たいていの言語は分かるぞ……スグルは苦手なのか?」
「日本語専門だからなぁ……下に書いてあるのは、そのズィッヒャーブルグまで10キロという意味じゃないか?」
「ああ、そうだ。少し急いだほうがいいな」
女神と分かれて一時間、ようやく道しるべを見つけて数量的に自分たちの位置を知った。
ゲームやラノベの世界は、中世から近世初頭のヨーロッパがモデルになっている。乏しい知識でもブルクというのが城塞都市を現すことを思いだした。
「城塞都市には門限があるぞ」
と、ヒルデに言われるまでもなく承知している。勇者と女戦士の二人連れで速足になる。
時速10キロというところか、日ごろなら10分と持たない速さ。そう無理もせず歩けているのはランクEとはいえ冒険者のスキルのお蔭だろう。
「ヒルデの使命ってなんなんだ?」
「言えん」
「これから、いっしょの旅になる。ギルドに登録していっしょに稼ぐことにもなるだろう、お互いのことは知っておいた方がいいと思うんだが」
「……それはそうだが、まだ、そこまでスグルのことを知ってるわけじゃないしな」
「そうか……じゃあ、別のことを聞くぞ」
「答えられることならな」
「コスハクで見かけたのは、ヒルデ、おまえなんだろ?」
「ああ」
「でも、ヒルデは令和の日本に住んでる……どころか、存在してる人間じゃないんだろ」
「あ……ああ」
「じゃあ、なんで?」
「敵に追われて、見つかりそうになったら逃げてくるんだ。避難場所だ」
「令和の日本が避難場所になるのか?」
「ああ、コスプレの中に紛れると敵は見つけるのが困難になる」
「ああ……考えたなあ!」
「レイヤーたちはリアルに戦うわけではないが、気持ちの上では目標のキャラに成りきっている。あの成りきる情熱はこの戦乙女の情熱にも似ていて、少しの間なら、紛れて身を隠すには十分だ」
「そうなのかぁ……」
「もっとも、敵の目も肥えてきて、さっきは一時間ももたなかったがな」
「ああ、オレも、もう一度見に行こうと思ったもんなあ、見られていると分かれば、いっそう力が入ってしまうし、完成度が高くなって、敵も注目するか……」
「スグル、おまえ、あのトイレは置いて来てしまったがいいのか?」
「あ、忘れてた!」
インタフェイスを開いてみるが、ちょっと距離があり過ぎて今のスキルでは回収できない。
「ようし……」
インタフェイスをチョチョイといじる。
「なにをしたんだ?」
ロックしてステルス魔法をかける。
「切羽詰まった者には使わせてやればいいのに」
「あのトイレは掃除とメンテナンスが大変なんだぞ……まあ……こうしておくか」
「なにをしたんだ?」
「切羽詰まった者には開くようにした」
「それはいい……だが、その切羽詰まった基準はなんなんだ?」
「ヒルデが一度使っただろ、その状況を記憶しているから、ヒルデが基準だ」
「えぇ、普通の人間なら漏らしてしまうぞ」
「え、そうなの、そんな風には見えなかったけど、めっちゃ早かったし?」
「戦乙女のたしなみだ(#-_-#)」
「そうなのか……ああ、もう操作できないところまで来てしまったぞ」
「あ、城門が見えて来たぞ」
「おお、間に合ったか!」
差し渡し2キロはあるだろう城壁の中央に城門があって、長い行列ができていた。
閉門の6時までは10分足らず。
なんとか間に合ったかと思うと、レベルEのスタミナは切れかかってきた。
「ここからは勢いだ!」
「え、あ、ちょ……チョーー(>0<)!!?」
ヒルデはオレの腕を掴んでダッシュしはじめた!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・秀の友人たち アキ 田中
007: ズィッヒャーブルグを目指して
Sicher Burg……ズィッヒャーブルグと読むのに30秒ほどかかった。
大学の第二外語はドイツ語だったけど、ろくに勉強していないし、乏しい知識も錆びついている。
「安全都市か……」
「え、ヒルデは分かるのか!?」
「ああ、いろんなところを相手に戦ってきたからな。たいていの言語は分かるぞ……スグルは苦手なのか?」
「日本語専門だからなぁ……下に書いてあるのは、そのズィッヒャーブルグまで10キロという意味じゃないか?」
「ああ、そうだ。少し急いだほうがいいな」
女神と分かれて一時間、ようやく道しるべを見つけて数量的に自分たちの位置を知った。
ゲームやラノベの世界は、中世から近世初頭のヨーロッパがモデルになっている。乏しい知識でもブルクというのが城塞都市を現すことを思いだした。
「城塞都市には門限があるぞ」
と、ヒルデに言われるまでもなく承知している。勇者と女戦士の二人連れで速足になる。
時速10キロというところか、日ごろなら10分と持たない速さ。そう無理もせず歩けているのはランクEとはいえ冒険者のスキルのお蔭だろう。
「ヒルデの使命ってなんなんだ?」
「言えん」
「これから、いっしょの旅になる。ギルドに登録していっしょに稼ぐことにもなるだろう、お互いのことは知っておいた方がいいと思うんだが」
「……それはそうだが、まだ、そこまでスグルのことを知ってるわけじゃないしな」
「そうか……じゃあ、別のことを聞くぞ」
「答えられることならな」
「コスハクで見かけたのは、ヒルデ、おまえなんだろ?」
「ああ」
「でも、ヒルデは令和の日本に住んでる……どころか、存在してる人間じゃないんだろ」
「あ……ああ」
「じゃあ、なんで?」
「敵に追われて、見つかりそうになったら逃げてくるんだ。避難場所だ」
「令和の日本が避難場所になるのか?」
「ああ、コスプレの中に紛れると敵は見つけるのが困難になる」
「ああ……考えたなあ!」
「レイヤーたちはリアルに戦うわけではないが、気持ちの上では目標のキャラに成りきっている。あの成りきる情熱はこの戦乙女の情熱にも似ていて、少しの間なら、紛れて身を隠すには十分だ」
「そうなのかぁ……」
「もっとも、敵の目も肥えてきて、さっきは一時間ももたなかったがな」
「ああ、オレも、もう一度見に行こうと思ったもんなあ、見られていると分かれば、いっそう力が入ってしまうし、完成度が高くなって、敵も注目するか……」
「スグル、おまえ、あのトイレは置いて来てしまったがいいのか?」
「あ、忘れてた!」
インタフェイスを開いてみるが、ちょっと距離があり過ぎて今のスキルでは回収できない。
「ようし……」
インタフェイスをチョチョイといじる。
「なにをしたんだ?」
ロックしてステルス魔法をかける。
「切羽詰まった者には使わせてやればいいのに」
「あのトイレは掃除とメンテナンスが大変なんだぞ……まあ……こうしておくか」
「なにをしたんだ?」
「切羽詰まった者には開くようにした」
「それはいい……だが、その切羽詰まった基準はなんなんだ?」
「ヒルデが一度使っただろ、その状況を記憶しているから、ヒルデが基準だ」
「えぇ、普通の人間なら漏らしてしまうぞ」
「え、そうなの、そんな風には見えなかったけど、めっちゃ早かったし?」
「戦乙女のたしなみだ(#-_-#)」
「そうなのか……ああ、もう操作できないところまで来てしまったぞ」
「あ、城門が見えて来たぞ」
「おお、間に合ったか!」
差し渡し2キロはあるだろう城壁の中央に城門があって、長い行列ができていた。
閉門の6時までは10分足らず。
なんとか間に合ったかと思うと、レベルEのスタミナは切れかかってきた。
「ここからは勢いだ!」
「え、あ、ちょ……チョーー(>0<)!!?」
ヒルデはオレの腕を掴んでダッシュしはじめた!
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
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