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035:道のギルドはメンテナンス中
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待ての勇者と急ぎの姫騎士
035:道のギルドはメンテナンス中
あちゃーーー
爺むさい声が出てしまい、エマが笑って、ヒルデは舌打ちした。道のギルドに戻ると『メンテナンス中 終了予定PM3:00』と出ているのだ。
「三時までですから、少し休憩いたしましょう」
そう言うと、ストレージからゆるキャン△みたいな休憩セットを出して設えるエマ。
ギギ
「まあ、こんなこともあるさ(^^;)」
歯ぎしりしてイラ立つヒルデをなだめ、俺は、お茶の用意にかかる。
「グ……サモワールで湯を沸かすところからか(-_-;)」
「雰囲気でございます。こういうメンテナンスは往々にして伸びることもございますから」
三時までには、二時間以上もある。エマは野外用のオーブンまで出してケーキを作り始めた。
「ハ、致し方ないか」
ドサッと座り込むヒルデ。
——そちらをお願いします——とエマが目配せして、ビーフジャーキーと缶ビールを出してくれる。
そちらとは、むつかしい顔で道の先を見ている戦乙女のことだ。
「厳しい戦いだったんだ、ちょっとしたインターバルがあってもいいじゃないか」
「まあな……」
缶ビールを一気飲みして座りこむヒルデ。右脚を伸ばし左脚を三角に立てる。両肘を地面に預けて、ちょっとフテッたような姿勢がなんとも男前。
「ガイストターレンがなにか言ってたけどさ……」
「…………」
「あいつ『同じ川の水でシャンプーした仲なのに』とか言ってたじゃないか。あれって……」
「そうだったかぁ……」
「とぼけるなよ、あの一言で、ヒルデぶち切れたんだから。そうだろ?」
ギュッと表情が歪んで、例の舌打ちが返ってくるかと思ったら、静かに語り始めた。
「あいつは偽者だ」
「偽者?」
「スグル、おまえも昔のことを思い出していたんじゃないのか?」
「あ、ああ……」
そうだ、営業の先輩のことや、お袋の田舎のことを思い出していたんだ。先輩のこともそうだけど、田舎のことをあんなに鮮明に思い出したことは無かった。
「奴が思い出させたんだ、あの谷の化け物がな」
「ガイストターレンがか?」
「ああ、あいつは、人にあれこれ思い出させ、それを糧にしているんだ。あのまま思い出にふけっていたら取り込まれてガイストにされていたぞ」
「そうだったのか!?」
「自分はガードが堅いからな、あいつ、姿を現して実力行使してきたんだ。余裕ぶっていたが、焦っていたんだろうな」
「くそ…………それで、シャンプーした仲っていうのは?」
「フフ、つまらんことだ」
「そうなのか……ヒルデのキレ方は普通じゃなかったぞ」
普通じゃないキレ方のおかげで、ヒルデは全力をふるった。ヒルデの全力が無ければ負けていたかもしれない。
「……ある日、川でシャンプーしたんだ。本物のグズルーンとな。あいつ、わたしより川上でシャンプーするもんだから、やつの汚れがみんなこっちにやってくるんだ。それで、ちょっとな……」
「ハハ、そんなことか」
「フフ、そんなことだ……」
「…………」
「…………」
そんなことな訳がない、あの沸騰するようなキレ方はもっと別の深いところに根差している。
でも、きっと触れちゃいけないことなんだろう。人の深い事情には踏み込むべきじゃない、興味本位で人の面倒に首を突っ込むとロクなことにならないしな。
「自分には……人には、もっと大事なことがある……」
「?……」
しばらく二人で空を見上げている……いつのまにかお茶の用意が整って「お茶の用意ができました」とエマの声。
そして、予告より五分遅れてメンテナンスが終わり、受付さんに魔石をギルに交換してもらう。前回同様、エマのストレージに送金してもらって、いつもの「がんばってください(^▽^)」にはならなかった。
「実は、みなさんにお願いしたいことがあるんですが……」
「クエスト……?」
「え、まあ、実は……」
微妙に眉間に力の入った顔を近づけて、受付さんは切り出した……。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・秀の友人たち アキ 田中
・魔物たち ガイストターレン
035:道のギルドはメンテナンス中
あちゃーーー
爺むさい声が出てしまい、エマが笑って、ヒルデは舌打ちした。道のギルドに戻ると『メンテナンス中 終了予定PM3:00』と出ているのだ。
「三時までですから、少し休憩いたしましょう」
そう言うと、ストレージからゆるキャン△みたいな休憩セットを出して設えるエマ。
ギギ
「まあ、こんなこともあるさ(^^;)」
歯ぎしりしてイラ立つヒルデをなだめ、俺は、お茶の用意にかかる。
「グ……サモワールで湯を沸かすところからか(-_-;)」
「雰囲気でございます。こういうメンテナンスは往々にして伸びることもございますから」
三時までには、二時間以上もある。エマは野外用のオーブンまで出してケーキを作り始めた。
「ハ、致し方ないか」
ドサッと座り込むヒルデ。
——そちらをお願いします——とエマが目配せして、ビーフジャーキーと缶ビールを出してくれる。
そちらとは、むつかしい顔で道の先を見ている戦乙女のことだ。
「厳しい戦いだったんだ、ちょっとしたインターバルがあってもいいじゃないか」
「まあな……」
缶ビールを一気飲みして座りこむヒルデ。右脚を伸ばし左脚を三角に立てる。両肘を地面に預けて、ちょっとフテッたような姿勢がなんとも男前。
「ガイストターレンがなにか言ってたけどさ……」
「…………」
「あいつ『同じ川の水でシャンプーした仲なのに』とか言ってたじゃないか。あれって……」
「そうだったかぁ……」
「とぼけるなよ、あの一言で、ヒルデぶち切れたんだから。そうだろ?」
ギュッと表情が歪んで、例の舌打ちが返ってくるかと思ったら、静かに語り始めた。
「あいつは偽者だ」
「偽者?」
「スグル、おまえも昔のことを思い出していたんじゃないのか?」
「あ、ああ……」
そうだ、営業の先輩のことや、お袋の田舎のことを思い出していたんだ。先輩のこともそうだけど、田舎のことをあんなに鮮明に思い出したことは無かった。
「奴が思い出させたんだ、あの谷の化け物がな」
「ガイストターレンがか?」
「ああ、あいつは、人にあれこれ思い出させ、それを糧にしているんだ。あのまま思い出にふけっていたら取り込まれてガイストにされていたぞ」
「そうだったのか!?」
「自分はガードが堅いからな、あいつ、姿を現して実力行使してきたんだ。余裕ぶっていたが、焦っていたんだろうな」
「くそ…………それで、シャンプーした仲っていうのは?」
「フフ、つまらんことだ」
「そうなのか……ヒルデのキレ方は普通じゃなかったぞ」
普通じゃないキレ方のおかげで、ヒルデは全力をふるった。ヒルデの全力が無ければ負けていたかもしれない。
「……ある日、川でシャンプーしたんだ。本物のグズルーンとな。あいつ、わたしより川上でシャンプーするもんだから、やつの汚れがみんなこっちにやってくるんだ。それで、ちょっとな……」
「ハハ、そんなことか」
「フフ、そんなことだ……」
「…………」
「…………」
そんなことな訳がない、あの沸騰するようなキレ方はもっと別の深いところに根差している。
でも、きっと触れちゃいけないことなんだろう。人の深い事情には踏み込むべきじゃない、興味本位で人の面倒に首を突っ込むとロクなことにならないしな。
「自分には……人には、もっと大事なことがある……」
「?……」
しばらく二人で空を見上げている……いつのまにかお茶の用意が整って「お茶の用意ができました」とエマの声。
そして、予告より五分遅れてメンテナンスが終わり、受付さんに魔石をギルに交換してもらう。前回同様、エマのストレージに送金してもらって、いつもの「がんばってください(^▽^)」にはならなかった。
「実は、みなさんにお願いしたいことがあるんですが……」
「クエスト……?」
「え、まあ、実は……」
微妙に眉間に力の入った顔を近づけて、受付さんは切り出した……。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀(すずきすぐる) 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神 異世界転生の境に立つ正体不明の女神
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
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