18 / 230
18『相席』
RE・かの世界この世界
018『相席』
B駅へ向かうために下りのホームへ。
B駅は下りの先頭方向に改札があるので、ホームの前の方、一両目の印があるところに立つ。
電車がやって来る上り方向を覗うと、三十年前のお母さんとお祖母ちゃんが現れた。
同じ電車に乗るんだ。
嬉しくなって少しだけ寄ってみる。
―― あの娘さんのお蔭ね ――
―― そうね、クーポン券、今日が期限。気が付かなきゃ、そのまま帰ってた ――
お母さんがヒラヒラさせているのは令和でもB駅近くにあるBCDマートだ。昭和六十三年だったら新規開店で間もないころかな。素敵な靴が手ごろな値段で手に入るので有名。三十何年後のお母さんもちょくちょく利用しているご贔屓の量販店だ。
ウキウキしているお母さんが新鮮で、わたしは、やってきた下り電車の一両隣の車両に乗った。
連結部分のガラス窓を通して―― お母さん可愛い ――くすぐったく見ているうちにB駅に着いてしまった。
改札の位置が違う。
三十年前のB駅は改装前で、改札に続く跨道橋は中央寄りにあった。
わたしは、お母さんとお祖母ちゃんの後姿を愛でながら改札を出た。
―― あ、クレープ屋さん! ――
お母さんがロータリー端っこに停まっているキッチンカーに気づいた。
女子高生らしい勢いで突進すると。十人ほどの列の最後尾について、お祖母ちゃんにオイデオイデをしている。
なんだか可愛い。あんな無邪気なお母さんは初めてだ。
おっと、ミカドを探さなきゃ。
首を半分回したところで発見。ロータリーに繋がる商店街の角に、これまた新規開店のミカドが見えた。
三十年後はたこ焼きのお店があるはずの場所だ。
先輩に言われた時間まで一分あるかないかで窓際のシートに座る。
わたしの後ろから入って来た学生風のお兄さんが―― おっと ――という感じで窓際の席を諦めて、奥の四人掛けに収まった。
ミカドは流行っているようで、カウンター以外の席は埋まってしまっている。
むろん窓際は四人掛けなので、その気になれば相席できる。満席に近いのに四人掛けを占拠していることに収まりの悪さを感じる。
オーダーした紅茶を待っているうちに営業見習いって感じの女性が入って来た。
「すみません、ここ、いいですか?」
わたしの四人掛けの向かいを指して笑顔を向けてきた。
「あ、ええ、どうぞ」
斜め前に座った見習女史は、ぶっといシステム手帳とA4の書類や紙袋やメモの束を出して仕事を始めた。
これなら四人掛けでなきゃならないはずだと納得。営業の仕事なんて分からないけど、令和だったら、スマホかタブレット一つで済むんだろうね。何の仕事だろう……紙袋から覗いているのは原稿用紙の束、色鉛筆で直しが入ってる……作家の原稿? 気が付いて「おっと」と呟いて紙袋の口を閉めた。置かれた手帳にはわたしでも知ってる作家の名前やら日程、時程が書き込まれて……出版社の編集見習い?
わたしも冴子も作家とかに憧れはあるけど、じっさいは出版社の編集とかに成れたら御の字とか思ってる。だけど、リアルの編集さんを目の前にすると、いや、これも大変な仕事だ……複数の作家の担当やって、やっと原稿もらって、社に帰るまでに、原稿のチェックやら仕事の段取りをつけてるんだ。
紅茶を飲み終えたころ、見習い女史は席を立ってカウンターのピンク電話に向かった。
ピンク電話の傍が、さっきの学生さん。
学生さんは、チラリと女史を見る。微妙に笑顔になった。
女子は電話が終わると「お邪魔してごめんなさい」。にこやかな笑みをコーヒー代といっしょに残して出て行った。
さあ、約束の三十分が過ぎた。わたしもお勘定を済ませてミカドを出る。
キキキーーーーグワッシャーーーーン!!
ロータリーの方でクラッシュ音。
セダンが歩道に乗り上げて、ベンチや花壇やらをなぎ倒し、バス停に激突して停まっている。
交通事故!?
愕然とした。
セダンの前方に、捻じれたように転がっているのはお母さん! お祖母ちゃんがへたり込んで呆然としている。
おい! 警察! 救急車! すごい血! だめかもな! 早く救急車!
目の前の風景が急速に色彩を失い、次に輪郭が無くなり、わたしは白い闇に投げ出されてしまった。
☆ 主な登場人物
寺井光子 二年生
二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長
018『相席』
B駅へ向かうために下りのホームへ。
B駅は下りの先頭方向に改札があるので、ホームの前の方、一両目の印があるところに立つ。
電車がやって来る上り方向を覗うと、三十年前のお母さんとお祖母ちゃんが現れた。
同じ電車に乗るんだ。
嬉しくなって少しだけ寄ってみる。
―― あの娘さんのお蔭ね ――
―― そうね、クーポン券、今日が期限。気が付かなきゃ、そのまま帰ってた ――
お母さんがヒラヒラさせているのは令和でもB駅近くにあるBCDマートだ。昭和六十三年だったら新規開店で間もないころかな。素敵な靴が手ごろな値段で手に入るので有名。三十何年後のお母さんもちょくちょく利用しているご贔屓の量販店だ。
ウキウキしているお母さんが新鮮で、わたしは、やってきた下り電車の一両隣の車両に乗った。
連結部分のガラス窓を通して―― お母さん可愛い ――くすぐったく見ているうちにB駅に着いてしまった。
改札の位置が違う。
三十年前のB駅は改装前で、改札に続く跨道橋は中央寄りにあった。
わたしは、お母さんとお祖母ちゃんの後姿を愛でながら改札を出た。
―― あ、クレープ屋さん! ――
お母さんがロータリー端っこに停まっているキッチンカーに気づいた。
女子高生らしい勢いで突進すると。十人ほどの列の最後尾について、お祖母ちゃんにオイデオイデをしている。
なんだか可愛い。あんな無邪気なお母さんは初めてだ。
おっと、ミカドを探さなきゃ。
首を半分回したところで発見。ロータリーに繋がる商店街の角に、これまた新規開店のミカドが見えた。
三十年後はたこ焼きのお店があるはずの場所だ。
先輩に言われた時間まで一分あるかないかで窓際のシートに座る。
わたしの後ろから入って来た学生風のお兄さんが―― おっと ――という感じで窓際の席を諦めて、奥の四人掛けに収まった。
ミカドは流行っているようで、カウンター以外の席は埋まってしまっている。
むろん窓際は四人掛けなので、その気になれば相席できる。満席に近いのに四人掛けを占拠していることに収まりの悪さを感じる。
オーダーした紅茶を待っているうちに営業見習いって感じの女性が入って来た。
「すみません、ここ、いいですか?」
わたしの四人掛けの向かいを指して笑顔を向けてきた。
「あ、ええ、どうぞ」
斜め前に座った見習女史は、ぶっといシステム手帳とA4の書類や紙袋やメモの束を出して仕事を始めた。
これなら四人掛けでなきゃならないはずだと納得。営業の仕事なんて分からないけど、令和だったら、スマホかタブレット一つで済むんだろうね。何の仕事だろう……紙袋から覗いているのは原稿用紙の束、色鉛筆で直しが入ってる……作家の原稿? 気が付いて「おっと」と呟いて紙袋の口を閉めた。置かれた手帳にはわたしでも知ってる作家の名前やら日程、時程が書き込まれて……出版社の編集見習い?
わたしも冴子も作家とかに憧れはあるけど、じっさいは出版社の編集とかに成れたら御の字とか思ってる。だけど、リアルの編集さんを目の前にすると、いや、これも大変な仕事だ……複数の作家の担当やって、やっと原稿もらって、社に帰るまでに、原稿のチェックやら仕事の段取りをつけてるんだ。
紅茶を飲み終えたころ、見習い女史は席を立ってカウンターのピンク電話に向かった。
ピンク電話の傍が、さっきの学生さん。
学生さんは、チラリと女史を見る。微妙に笑顔になった。
女子は電話が終わると「お邪魔してごめんなさい」。にこやかな笑みをコーヒー代といっしょに残して出て行った。
さあ、約束の三十分が過ぎた。わたしもお勘定を済ませてミカドを出る。
キキキーーーーグワッシャーーーーン!!
ロータリーの方でクラッシュ音。
セダンが歩道に乗り上げて、ベンチや花壇やらをなぎ倒し、バス停に激突して停まっている。
交通事故!?
愕然とした。
セダンの前方に、捻じれたように転がっているのはお母さん! お祖母ちゃんがへたり込んで呆然としている。
おい! 警察! 救急車! すごい血! だめかもな! 早く救急車!
目の前の風景が急速に色彩を失い、次に輪郭が無くなり、わたしは白い闇に投げ出されてしまった。
☆ 主な登場人物
寺井光子 二年生
二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています