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31『無辺街道の眠り姫・2』
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RE・かの世界この世界
031『無辺街道の眠り姫・2』
寝た子を起こすな……。
言った時は遅かった。
ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。
プギャーーー!
アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。
「な、なにやちゅ!? 気配を消して機嫌よく昼寝をしておりゅところを!」
「と、飛んだ!」
羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。
「我は主神オーディンの娘(むしゅめ)にして無辺街道を統(しゅ)べるブリュンヒリュデなりゅじょ! 狼藉は許さぬじょ!」
「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」
「あ、ご、ごめん」
自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。
「わたしは剣士のテル、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャクチャ可愛いお人形が横になっていたんで、ついケイトがツンツンしたんだよ。なにせ田舎剣士のことなんで、キチンとした礼も知らないんだ。キミが可愛すぎたからなんだ。ごめん、この通りだ」
ケイトの頭を押さえて、いっしょに詫びる。
「しょ、しょうか。我の稚けなき可愛さのあまりであったか。しょれならば無下に責(しぇ)めるのも無体というものじゃ……」
ツインテールは、わずかに機嫌を直して地上に下りてきた。
「む、頭(じゅ)が高い……蹲踞しぇよ」
「そんきょ?」
「畏まって、頭を下げろってこと!」
異世界ものアニメでやっているように、片膝ついて畏まる……が、それでも、こちらが少し高い。
「むむ……」
ツインテールはキョロキョロすると、傍らの人の頭ほどの石を見つけて、その上に立った。
「近う寄れ」
四五歳の子どもがツッパラかっているのはなんともおかしいんだけど、こじらせたくないのと、ここまでの無辺街道が退屈だったので、合わせてみることにする。
「して、しょなたたちは、何ゆえ物々しく武装して我が無辺街道を通るのじゃ?」
「話せば長いことになりますが、我らは並行世界からの旅人でございます。魔物を討伐して、この世界と共に我らの世界の安寧をはかろうと旅をしております」
「そか、しょなたたちも崇高なる使命を帯びておる勇者なのだな。ここで出会うたのも主神オーディンの賜物であろう。もう日も傾きはじめる。ここらで一夜のキャンプにするが良いじょ」
「はあ、しかし、歩き始めて、まだ五時間ほど。今少し距離を稼ぎとうございますので……」
すると、ツインテールが空を指さす。つられて見上げると、俄かに空は夕闇の茜色に染まった。
「あ、いつの間に?」
「慣りぇぬ旅に、時間の感覚も狂ったのであろう。ゆりゅりと休むがよいじょ」
ケイトは素直に茜の空を信じたが、わたしは「御免」とことわって立ち上がる。すると、茜の空は、ここを中心とする半径百メートルほどで、その先は、まだまだ昼下がりの日差しだ。
「こ、ここの夕暮れはまばらにやってくりゅのだ!」
「ならば、日差しを拾いながら進んでまいります。行くぞ、ケイト」
「う、うん」
よっこら立ち上がって回れ右して歩き出すと、ブーーンと音をさせてツインテールが回り込んできた。
「な、ならば、わたちも連れてまいりぇ!」
「いや、二人で行きます」
「この異世界(いしぇかい)、ブリュンヒリュデを供とすれば無敵であるじょ! 奥つ城まで顔パス同然じゃぞ!」
「まっとうに行きます」
「つれないことを申しゅな(;゚Д゚)」
「けっこうです」
「しょこをなんとか」
「いささかウザったい」
「ウザったいくらいが旅の無聊の慰めにもなろうというものじゃ、なあ、どうじゃ、どうじゃ、どうじゃあ(^_^;)」
「あのね……」
「プギャーー! なにをいたしゅ!?」
ツインテールを掴むと、傍らの灌木の枝にチョウチョ結びにしてやった。こいつは地上にいる限りは大したことは無いと見きったからだ。
「さ、行くぞ」
「いいの、ほっといて?」
「いいわけないだりょ! ほどけ! 連れてけ! 連れてまいりぇ!」
「テル、ちょっと可哀そう」
「仏心を出すな」
「連りぇてけ! 連りぇてってえ! 誰かに連れて行ってもらわなきゃ、オーディンの戒めで無辺街道の外には出れにゃいのー!」
「なんだか、訳ありっぽいよ」
「かまうな」
「プギャー! かまえ! かまえよ!」
かまってらんないので、ケイトの手を引いてズンズン進んで半ば駆けるようにして街道まで戻った。
プギャー! プギャー! プギャアアアアアアアアアアア!!
数百メートル離れてもツインテールの叫び声が付いてくる。戒めが解けるわけもなく、どうやら、街道に居る限りは耳から離れないようだ。
「これは、たまらん!」
もう、ガンガンと耳鳴りのようになってきて、たまらず戒めの灌木まで戻った。
涎と涙でグチャグチャになった姿は、まるで、こちらが幼児虐待をしたような気分にさせる。
しかたなく解いてやる。
「きっと戻ってきてくりぇると思ったじょ! じゃ、よりょしくな!」
「よろしくするかどうかは、お前次第だ」
「まあ、役に立つから、な!」
「行くぞ」
「合点! しょれから、わたちのことはブリュンヒルデって呼べ、ブリュンヒルデ!」
「ブリュンヒルデ……びみょうに長いかも」
ケイトが困った顔をする。
「大きくなったら呼んでやる。それまではブリだ」
「ブ、ブリ……(;'∀')」
「行くぞ、ブリ!」
三人の旅になって、無辺街道は、まだ道半ばであった……。
☆ ステータス
HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1
☆ 主な登場人物
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界のテルの幼なじみ 峠の万屋ペギーにケイトと変えられる
ブリ ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
ペギー 峠の万屋
二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長
031『無辺街道の眠り姫・2』
寝た子を起こすな……。
言った時は遅かった。
ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。
プギャーーー!
アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。
「な、なにやちゅ!? 気配を消して機嫌よく昼寝をしておりゅところを!」
「と、飛んだ!」
羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。
「我は主神オーディンの娘(むしゅめ)にして無辺街道を統(しゅ)べるブリュンヒリュデなりゅじょ! 狼藉は許さぬじょ!」
「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」
「あ、ご、ごめん」
自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。
「わたしは剣士のテル、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャクチャ可愛いお人形が横になっていたんで、ついケイトがツンツンしたんだよ。なにせ田舎剣士のことなんで、キチンとした礼も知らないんだ。キミが可愛すぎたからなんだ。ごめん、この通りだ」
ケイトの頭を押さえて、いっしょに詫びる。
「しょ、しょうか。我の稚けなき可愛さのあまりであったか。しょれならば無下に責(しぇ)めるのも無体というものじゃ……」
ツインテールは、わずかに機嫌を直して地上に下りてきた。
「む、頭(じゅ)が高い……蹲踞しぇよ」
「そんきょ?」
「畏まって、頭を下げろってこと!」
異世界ものアニメでやっているように、片膝ついて畏まる……が、それでも、こちらが少し高い。
「むむ……」
ツインテールはキョロキョロすると、傍らの人の頭ほどの石を見つけて、その上に立った。
「近う寄れ」
四五歳の子どもがツッパラかっているのはなんともおかしいんだけど、こじらせたくないのと、ここまでの無辺街道が退屈だったので、合わせてみることにする。
「して、しょなたたちは、何ゆえ物々しく武装して我が無辺街道を通るのじゃ?」
「話せば長いことになりますが、我らは並行世界からの旅人でございます。魔物を討伐して、この世界と共に我らの世界の安寧をはかろうと旅をしております」
「そか、しょなたたちも崇高なる使命を帯びておる勇者なのだな。ここで出会うたのも主神オーディンの賜物であろう。もう日も傾きはじめる。ここらで一夜のキャンプにするが良いじょ」
「はあ、しかし、歩き始めて、まだ五時間ほど。今少し距離を稼ぎとうございますので……」
すると、ツインテールが空を指さす。つられて見上げると、俄かに空は夕闇の茜色に染まった。
「あ、いつの間に?」
「慣りぇぬ旅に、時間の感覚も狂ったのであろう。ゆりゅりと休むがよいじょ」
ケイトは素直に茜の空を信じたが、わたしは「御免」とことわって立ち上がる。すると、茜の空は、ここを中心とする半径百メートルほどで、その先は、まだまだ昼下がりの日差しだ。
「こ、ここの夕暮れはまばらにやってくりゅのだ!」
「ならば、日差しを拾いながら進んでまいります。行くぞ、ケイト」
「う、うん」
よっこら立ち上がって回れ右して歩き出すと、ブーーンと音をさせてツインテールが回り込んできた。
「な、ならば、わたちも連れてまいりぇ!」
「いや、二人で行きます」
「この異世界(いしぇかい)、ブリュンヒリュデを供とすれば無敵であるじょ! 奥つ城まで顔パス同然じゃぞ!」
「まっとうに行きます」
「つれないことを申しゅな(;゚Д゚)」
「けっこうです」
「しょこをなんとか」
「いささかウザったい」
「ウザったいくらいが旅の無聊の慰めにもなろうというものじゃ、なあ、どうじゃ、どうじゃ、どうじゃあ(^_^;)」
「あのね……」
「プギャーー! なにをいたしゅ!?」
ツインテールを掴むと、傍らの灌木の枝にチョウチョ結びにしてやった。こいつは地上にいる限りは大したことは無いと見きったからだ。
「さ、行くぞ」
「いいの、ほっといて?」
「いいわけないだりょ! ほどけ! 連れてけ! 連れてまいりぇ!」
「テル、ちょっと可哀そう」
「仏心を出すな」
「連りぇてけ! 連りぇてってえ! 誰かに連れて行ってもらわなきゃ、オーディンの戒めで無辺街道の外には出れにゃいのー!」
「なんだか、訳ありっぽいよ」
「かまうな」
「プギャー! かまえ! かまえよ!」
かまってらんないので、ケイトの手を引いてズンズン進んで半ば駆けるようにして街道まで戻った。
プギャー! プギャー! プギャアアアアアアアアアアア!!
数百メートル離れてもツインテールの叫び声が付いてくる。戒めが解けるわけもなく、どうやら、街道に居る限りは耳から離れないようだ。
「これは、たまらん!」
もう、ガンガンと耳鳴りのようになってきて、たまらず戒めの灌木まで戻った。
涎と涙でグチャグチャになった姿は、まるで、こちらが幼児虐待をしたような気分にさせる。
しかたなく解いてやる。
「きっと戻ってきてくりぇると思ったじょ! じゃ、よりょしくな!」
「よろしくするかどうかは、お前次第だ」
「まあ、役に立つから、な!」
「行くぞ」
「合点! しょれから、わたちのことはブリュンヒルデって呼べ、ブリュンヒルデ!」
「ブリュンヒルデ……びみょうに長いかも」
ケイトが困った顔をする。
「大きくなったら呼んでやる。それまではブリだ」
「ブ、ブリ……(;'∀')」
「行くぞ、ブリ!」
三人の旅になって、無辺街道は、まだ道半ばであった……。
☆ ステータス
HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1
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ケイト(小山内健人) 今度の世界のテルの幼なじみ 峠の万屋ペギーにケイトと変えられる
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