かの世界この世界

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
63 / 230

63『ペギーとの再会』

しおりを挟む
RE・かの世界この世界

63『ペギーとの再会』テル  

 


 ケイトの石化を解いてやると金の針が無くなってしまった。

 
「面倒だが、車外に出る時は必ずゴーグル着用だ。車内でも覗視孔から外を見る時はゴーグルだ。石化しても直しようがないからな」

「メデューサなんて聖戦以来だな」

 タングリスの注意に応えながら、タングニョーストはアクセルを踏む。

 ブルンと身震いして四号は再び走り始めた。

「来るときは、強敵だったがシリンダーと融合体に出会っただけだった。プレパラートとかメスシリンダーだとか、クリーチャーが多すぎないか」

「主神オーディンの力が弱っているのかもしれない、心して進まなければな」

「下手をすれば、また戦争が始まるかもしれない……」

「あれ、真っ赤に錆びついてるよ……」

 ペリスコープから先ほどの戦車を見てケイトが呟く。わたしも意外だ。メデューサのとは言え、戦車兵のナリで少女は転がり出てきたのだ。当然生きた戦車だと思う。

「メデューサは、廃墟や残骸を依り代にして現れるんだ。戦車そのものは先の聖戦で撃破されたスクラップさ。ムヘン川沿いは激戦地だったから、あちこちに残骸がある」

「あ……変なオバサンが居た」

 ペリスコープを覗いたままロキが呟く。

「オバサン?」

「メデューサか!?」

「違うと思う、ニコニコしていたし、大きな荷物を担いでいた」

「どこにいた?」

「草が少し禿げたとこ」

「タングニョースト、戻ってみてくれ」

「了解」

 グィーーーーーーーン

 四号が遊園地のコーヒーカップのように回れ右をした。超進地旋回というやつだろう、ちょっと目が回る。

 戻ると、そのオバサンは道の真ん中に出てきて陽気に手を振っているではないか。

「あ、ペギーだ! 出ていい? いいよね!」

 ろくに返事も聞かないでケイトが飛び出して、わたしたちも続く。



 オバサンは、始りの荒野で店を開いていたペギーだ。



「ペギ―、夜逃げでもするのか?」「重そうだな」

 知り合いらしく、タングリスもハッチを開けた途端に声をかけている。

「行商に出た方が儲かりそうな気がしてね」

「まあ、ちょうどよかった、少しばかり金の針が欲しい」

「おや、あれ以来だけど、あんたらもたくましくなったね。その子は?」

「ああ、わけあって預かってるんだ」

「そうかい、まあ、旅は賑やかな方がいいさね。で、金の針は使いきっちまったのかい?」

「ああ、一本も無い。ついさっきメデューサに出くわして、その坊主が間近で目を見ちまったんでな」

「メデューサ……やっぱ、復活したんだ(⌒∇⌒)」

「嬉しそうに言うなよ」

「少しは女らしい喋り方をした方がいいよ、ちゃんとしたナリをしたらいい女なのにさ」

「軍人に性別はない」

「ああ、トール元帥の副官なんかをしてちゃなあ」

「ポーションも少し欲しいんだ、1000ギルで買えるだけくれ」

「1000ギル? しみったれてるねえ」

「あれから稼いでないんでな」

「ウィンド開いてごらんよ、もっと貯まってるはずだよ」

「あ、そんなものがあったね……」

 
 日々のことに追われて、しばらくご無沙汰のウィンドを開いた。

 HP 2500  MP 1200  所持金 8500ギル

 
「すごい、いつの間に?」

「ステータスはこまめにチェックしなきゃ。これだけあるなら石化防止の指輪も買っときな、一個1000ギルに負けといてやるよ。おや、四号に六人も乗ってるんだ、リクライニングシートにして、エキストラシートも付ければ快適になるよ」

「とても、そこまでのギルはないよ」

「消耗品以外はリポ払いにすればいいさ」

「リポ払いってなに?」

 ケイトが身を乗り出す。

「リボ払いみたいなもんじゃないか?」

 前世の知識が蘇る。

「冒険者の予測経験値で組めるローンみたいなもんさ。あんたたちは前途有望だから……10万ギルまでいけるよ」

「え、すごいじゃん!」

「うんうん」

 ロキが目を輝かせ、ケイトがウキウキしてペギーのペースになっていく。

 ロキを除く五人のリポ払いで80000ギルも使わされてしまった。

「あんたらには武器も売りつけたかったけど、トール元帥の技物を持っていたんじゃねえ。お、坊主、珍しいもの持ってるじゃないか!」

 ペギーに目を付けられ、ロキは後ずさりする。

「シリンダーの幼体が人に懐くとは珍しい! 売りなよ、20000ギルで引き取るよ!」

「やだ、ポチは売り物じゃねえ!」

「残念、売りたくなったら、いつでも言っとくれ。必要な時、必要な所には現れるからさ。ところで……」

 
 それから一時間以上喋って、ペギーと別れた。タングリスたちとペギーの話は半分も分からなかったが、互いに情報を交換できて有意義だった。



 明日にはノルデン鉄橋に着けそうだ。




☆ ステータス(買い物を終えて)

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ        無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス          トール元帥の副官 ブリュンヒルデの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスの相棒 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

   二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...